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Patent Searching and Data


Title:
POLY(ARYLENE SULFIDE) RESIN COMPOSITION, PROCESS FOR PRODUCTION THEREOF, AND SURFACE MOUNT ELECTRONIC COMPONENT
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/096400
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a poly(arylene sulfide) resin composition comprising the following components (A) and (B) as the essential components: (A) a poly(arylene sulfide) which has a peak molecular weight falling within the range from 25,000 to 30,000 as measured by gel permeation chromatography, has a ratio of the weight average molecular weight (Mw) to the number average molecular weight (Mn) (i.e., an Mw/Mn ratio) falling within the range from 5 to 10, and has a non-Newton index falling within the range from 0.9 to 1.3; and (B) a polyamide. Also disclosed is a process for producing the poly(arylene sulfide) resin composition. Further disclosed is a surface mount electronic component. The poly(arylene sulfide) resin composition can keep the chlorine atom content therein at a level of as low as 900 ppm or less, and has heat resistance and mechanical strength.

Inventors:
YOSHINO YASUYUKI (JP)
NAKASE HIROKIYO (JP)
NEGISHI HIROAKI (JP)
YAMAGUCHI YOHEI (JP)
SHIMAYA TAKU (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/051305
Publication Date:
August 06, 2009
Filing Date:
January 28, 2009
Export Citation:
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Assignee:
DAINIPPON INK & CHEMICALS (JP)
YOSHINO YASUYUKI (JP)
NAKASE HIROKIYO (JP)
NEGISHI HIROAKI (JP)
YAMAGUCHI YOHEI (JP)
SHIMAYA TAKU (JP)
International Classes:
C08L81/02; B29B7/88; B29C48/92; C08G69/26; C08K3/26; C08K5/5435; C08K7/02; C08L77/06; H01L23/29; H01L23/31
Foreign References:
JP2008007742A2008-01-17
JP2004099707A2004-04-02
Attorney, Agent or Firm:
KONO, Michihiro (7-20 Nihonbashi 3-chome,Chuo-ku, Tokyo 33, JP)
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Claims:
 ゲル浸透クロマトグラフィーを用いた測定において25,000~30,000の範囲にピーク分子量を有しており、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比率(Mw/Mn)が5~10の範囲にあり、かつ非ニュートン指数が0.9~1.3の範囲にあるポリアリーレンスルフィド(A)及びポリアミド(B)を必須の成分とすることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
 前記ポリアリーレンスルフィド(A)が塩素原子含有量1,500~2,000ppmの範囲のものである請求項1記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
 前記ポリアミド(B)が、テレフタル酸アミドを必須の構造単位とする芳香族ポリアミドである請求項1記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
 前記ポリアミド(B)が、下記構造式aで表されるテレフタル酸アミド構造(a)、下記構造式bで表されるイソフタル酸アミド構造(b)及び下記構造式cで表される脂肪族炭化水素構造(c)を有するものである請求項3記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
(式中、R 1 は炭素原子数2~12のアルキレン基を表す。)
(式中、R 1 は炭素原子数2~12のアルキレン基を表す。)
(式中、R 1 は炭素原子数2~12のアルキレン基を表し、R 2 は炭素原子数4~10の脂肪族炭化水素基を表す。)
 前記ポリアミド(B)が、前記構造式aで表されるテレフタル酸アミド構造(a)を65~75モル%、前記構造式bで表されるイソフタル酸アミド構造(b)を20~25モル%、前記構造式cで表される脂肪族炭化水素構造(c)を10~15モル%となる割合で含有するものである請求項4記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
 前記ポリアミド(B)が、ポリアミド9T又はポリアミド46である請求項1記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
 前記ポリアリーレンスルフィド(A)と、前記ポリアミド(B)との配合割合が、(A)/(B)の質量比で70/30~85/15となる割合である請求項1~6のいずれか1項記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
 前記ポリアリーレンスルフィド(A)と、前記ポリアミド(B)に加え、さらに、エポキシ系シランカップリング剤(C)、ハイドロタルサイト類化合物(D)及び繊維状強化材(E-1)又は無機質フィラー(E-2)を含有する請求項1~7のいずれか1項記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
 前記(A)~(D)及び(E-1)又は(E-2)の各成分に加え、さらに、酸化防止剤(F)を含有する請求項1~8のいずれか1項記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
 前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を示差走査熱量(DSC)測定した場合における前記ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の再結晶化ピーク温度が220℃以上であり、かつ前記ポリアミド(B)の再結晶化ピーク温度が265℃以下である請求項1~9のいずれか1項記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
 前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物中のポリアミド(B)の含有比率が8~20質量%であり、かつ前記ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物をヘキサフルオロイソプロパノールで70℃15分間抽出した際の抽出率が7質量%以下である請求項1~10のいずれか1項記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
 請求項1~11のいずれか1項記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を二軸混練押出機に投入し、樹脂成分の吐出量(kg/hr)とスクリュー回転数(rpm)との比率(吐出量/スクリュー回転数)が0.02~0.2(kg/hr・rpm)なる条件下に溶融混練し、次いで取り出すことを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の製造方法。
 請求項1~11のいずれか1項記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の成形物と金属端子とを必須の構成要素とすることを特徴とする表面実装用電子部品。
Description:
ポリアリーレンスルフィド樹脂 成物、その製造方法及び表面実装用電子部

 本発明はポリアリーレンスルフィドとポ アミドとを含有するポリアリーレンスルフ ド樹脂組成物、その製造方法及び表面実装 電子部品に関する。

 ポリフェニレンスルフィドに代表される リアリーレンスルフィドは高い融点と、優 た難燃性、耐薬品性を有し、成形時の流動 も良好であるため、主に射出成形用エンジ アリングプラスチックとして各種電子部品 機械部品、自動車部品に広く使われている

 近年、電気・電子工業の分野では、製品 小型化や生産性の向上に伴い、樹脂系電子 品のプリント基板上への実装方式が所謂サ フェスマウント方式(以下「SMT方式」と略記 する。)と呼ばれる表面実装方式に移行して る。このSMT方式により電子部品を基板上に 装する技術は、従来、錫-鉛共晶はんだ(融点 184℃)が一般的であったが、近年、環境汚染 問題から、その代替材料として錫をベース 数種類の金属を添加した所謂鉛フリーはん が利用されている。

 かかる鉛フリーはんだは、錫-鉛共晶はん だよりも融点が高く、例えば、錫-銀共晶は だの場合には融点220℃にも達する為、表面 装時には加熱炉(リフロー炉)の温度をさらに 上昇させなければならず、コネクター等の樹 脂系電子部品をはんだ付けする際、加熱炉( フロー炉)内において当該電子部品が融解又 変形を生じてしまうという問題があった。 って、表面実装用電子部品用の樹脂材料に 耐熱性の高いものが強く求められていた。

 一方、高耐熱性の樹脂材料としてポリア ーレンスルフィドと芳香族ポリアミドとを 融混練することによって得られる樹脂組成 が知られている(例えば、特許文献1及び特 文献2参照)。しかしながら、ポリアリーレン スルフィドと芳香族ポリアミドとは一般に相 溶性が低く、両者を均一混合することが困難 な為、芳香族ポリアミド自体の弱点である吸 湿性の低さが顕著に現われてしまい、加熱炉 (リフロー炉)を通過した電子部品の外観にブ スターが発生し易くなる他、リフロー炉を 過した後の曲げ強度などの機械的物性を低 させてしまうものであった。

 さらに近年、電気・電子工業の分野では、 境負荷低減の観点からハロゲンフリー材料 の切り替えが急ピッチで進んでおり、例え JPCA(ES-1-1999)、IEC(61249-2-21)、IPC(4101B)などの電 機・電子部品のガイドラインには、塩素原子 を微量分析した際の含有量を900ppm以下にする ことが強く求められている。しかしながら、 ポリアリーレンスルフィドは、パラジクロロ ベンゼンを原料とするために末端にクロル基 が残存してしまい、ハロゲンフリー材料とし て使用することが困難なものであった。この 点に関して、上記したポリアリーレンスルフ ィドと芳香族ポリアミドとを配合した材料は 、芳香族ポリアミドの配合によってポリアリ ーレンスルフィドが希釈されることから材料 中の塩素原子含有量を低減させる有効な手段 ではある。
 しかしながら、ポリアリーレンスルフィド 体、通常、数千ppm程度の塩素原子を含有す ことから、ポリアミドを配合して希釈化し も前記した材料中の塩素原子含有量900ppm以 という基準をクリアすることは困難であっ 。これを改善するには、ポリアリーレンス フィドを洗浄し、塩素原子量を低減させる 法もあるが、この場合、塩素原子量のみな ず、ポリアミド成分との反応性を有する官 基の量も同時に低減してしまうため、結局 前記したブリスター等の耐熱信頼性や機械 強度の低下を招くものであった。

特開平2-123159号公報

特開平5-5060号公報

 従って、本発明が解決しようとする課題 、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物中 塩素原子含有率を900ppm以下という従来にな 低い水準にコントロールすることができる 共に、耐熱性及び機械的強度を兼備したポ アリーレンスルフィド樹脂組成物、その製 方法、及び、表面実装用電子部品を提供す ことにある。

 本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検 した結果、所定の分子量、分子量分布を有 、かつ、リニアな分子構造を有するポリア ーレンスルフィドと、ポリアミドとを配合 ることにより、組成物中の塩素原子含有量 900ppm以下に低減できると共に、成形品に優 たリフロー耐熱性と機械的強度とを付与で ることを見出し、本発明を完成するに至っ 。

 すなわち、本発明は、ゲル浸透クロマト ラフィーを用いた測定において25,000~30,000の 範囲にピーク分子量を有しており、重量平均 分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比率(Mw/Mn)が 5~10の範囲にあり、かつ非ニュートン指数が0. 9~1.3の範囲にあるポリアリーレンスルフィド( A)及びポリアミド(B)を必須の成分とすること 特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂 成物に関する。

 また、本発明は、前記ポリアリーレンス フィド樹脂組成物を二軸混練押出機に投入 、樹脂成分の吐出量(kg/hr)とスクリュー回転 数(rpm)との比率(吐出量/スクリュー回転数)が0 .02~0.2(kg/hr・rpm)なる条件下に溶融混練するこ を特徴とするポリアリーレンスルフィド樹 組成物の製造方法に関する。

 さらに、本発明は、前記ポリアリーレン ルフィド樹脂組成物の成形物と、金属端子 を必須の構成要素とすることを特徴とする 面実装用電子部品に関する。

 本発明によれば、ポリアリーレンスルフ ド樹脂組成物中の塩素原子含有率を900ppm以 という従来になく低い水準にコントロール ることができると共に、耐熱性及び機械的 度を兼備したポリアリーレンスルフィド樹 組成物、その製造方法及び表面実装用電子 品を提供できる。

 したがって、本発明のポリアリーレンス フィド樹脂組成物は、高温域で優れた耐熱 を発現し、表面実装用の電子部品に用いら る場合、基体へのはんだ付けの際、高温下 曝されてもはんだ付け工程後に該電子部品 機械強度変化、及び外観変化が非常に小さ という特徴を有する。よって、本発明のポ アリーレンスルフィド樹脂組成物はSMT方式 おけるプリント基板上へのはんだ付けに供 れるコネクター、スイッチ、リレー、コイ ボビン、コンデンサー等に特に有用である

 本発明で用いるポリアリーレンスルフィ (A)は、前記した通り、ゲル浸透クロマトグ フィーを用いた測定において25,000~30,000の範 囲にピーク分子量を有しており、重量平均分 子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比率(Mw/Mn)が5~1 0の範囲にあり、かつ、非ニュートン指数が0. 9~1.3の範囲にあることを特徴としている。こ ように、分子量が比較的高く、かつ、非ニ ートン指数が0.9~1.3の範囲にある所謂リニア 構造を有することから、ポリアリーレンスル フィド(A)中の塩素原子量は低いものとなる。 さらに、分子量分布の指標となる(Mw/Mn)の値 5~10の範囲にあることから、ポリアミド(B)と 反応性も保持され、その結果、成形品の耐 性や機械的強度に優れた性能を発現させる とができる。かかる本発明の特長がより顕 なものとなる点から、ポリアリーレンスル ィド(A)は、ゲル浸透クロマトグラフィー測 において26,000~29,000の範囲にピーク分子量を 有し、Mw/Mnが6.5~8.5の範囲にあり、かつ、非ニ ュートン指数が1.0~1.2の範囲にあるものがと わけ好ましい。また、前記ポリアリーレン ルフィド(A)は、ポリアリーレンスルフィド 脂組成物中の塩素原子量の低減の観点から 素原子含有量1,500~2,000ppmのものであることが 好ましい。

 前記ポリアリーレンスルフィド(以下「PAS 」と略記する。)(A)の樹脂構造は、芳香族環 硫黄原子とが結合した構造を繰り返し単位 して有するものであり、具体的には、下記 造式(1)


(式中、R 5 及びR 6 は、それぞれ独立的に水素原子、炭素原子数 1~4のアルキル基、ニトロ基、アミノ基、フェ ニル基、メトキシ基、エトキシ基を表す。)
で表される構造部位を繰り返し単位とする樹 脂である。

 ここで、前記構造式(1)で表される構造部位 、特に該式中のR 5 及びR 6 は、前記PAS(A)の機械的強度の点から水素原子 であることが好ましく、その場合、下記構造 式(2)で表されるパラ位で結合するもの、及び 下記構造式(3)で表されるメタ位で結合するも のが挙げられる。

 これらの中でも、特に繰り返し単位中の 香族環に対する硫黄原子の結合は前記構造 (2)で表されるパラ位で結合した構造である とが前記PAS(A)の耐熱性や結晶性の面で好ま い。

 また、前記PAS(A)は、前記構造式(1)で表さ る構造部位のみならず、下記の構造式(4)~(7) で表される構造部位を、前記構造式(1)で表さ れる構造部位との合計の30モル%以下で含んで いてもよい。特に本発明では上記構造式(4)~(7 )で表される構造部位は10モル%以下であるこ が、PAS(A)の耐熱性、機械的強度の点から好 しい。前記PAS(A)中に、上記構造式(4)~(7)で表 れる構造部位を含む場合、それらの結合様 としては、ランダム共重合体、ブロック共 合体のいずれであってもよい。

 また、前記PAS(A)は、その分子構造中に、 記構造式(8)で表される3官能性の構造部位、 あるいは、ナフチルスルフィド結合などを有 していてもよいが、他の構造部位との合計モ ル数に対して、1モル%以下であること、特に 質的には含まれないことがPAS(A)中の塩素原 含有量低減の観点から好ましい。

 かかるPAS(A)は、例えば下記(1)~(4)によって製 造することができる。
(1)N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミ などのアミド系溶剤やスルホラン等のスル ン系溶媒中で硫化ナトリウムとp-ジクロル ンゼンを反応させる方法、
(2)p-ジクロルベンゼンを硫黄と炭酸ソーダの 在下で重合させる方法、
(3)極性溶媒中で硫化ナトリウムあるいは水硫 化ナトリウムと水酸化ナトリウム又は硫化水 素と水酸化ナトリウムの存在下で重合させる 方法、
(4)p-クロルチオフェノールの自己縮合による 法

 これらの中でも(1)のN-メチルピロリドン ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤 スルホラン等のスルホン系溶媒中で硫化ナ リウムとp-ジクロルベンゼンを反応させる方 法が反応の制御が容易であり、工業的生産性 に優れる点から好ましい。

 また、リニア構造でかつ高分子量のPAS(A) 工業的に効率よく製造できる点から前記方 (1)のなかでも、特に、固形のアルカリ金属 化物、ジクロルベンゼン、アルカリ金属水 化物、有機酸アルカリ金属塩を必須成分と る反応スラリーを調整し、これを加熱して 均一系で重合を行う方法が特に好ましい。 かる重合方法は具体的には、下記の工程1及 び工程2を必須の製造工程とする方法が生産 の点から好ましい。

工程1:
  含水アルカリ金属硫化物、又は、
  含水アルカリ金属水硫化物及びアルカリ 属水酸化物と、
  N-メチルピロリドンと、
  非加水分解性有機溶媒とを、
  脱水させながら反応させて、スラリー(I) 製造する工程
工程2:
  次いで、前記スラリー(I)中、
  ジクロルベンゼンと、
  前記アルカリ金属水硫化物と、
  前記N-メチルピロリドンの加水分解物のア ルカリ金属塩とを、
  反応させて重合を行う工程

 ここで用いる含水アルカリ金属硫化物は 例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫 カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム の化合物の液状又は固体状の含水物が挙げ れ、その固形分濃度は10~80質量%、特に35~65 量%であることが好ましい。

 また、前記含水アルカリ金属水硫化物と ては、例えば、水硫化リチウム、水硫化ナ リウム、水硫化カリウム、水硫化ルビジウ 及び水硫化セシウム等の化合物の液状又は 体状の含水物が挙げられ、その固形分濃度 10~80質量%であることが好ましい。これらの でも水硫化リチウムの含水物と水硫化ナト ウムの含水物が好ましく、特に水硫化ナト ウムの含水物が好ましい。

 さらに、前記アルカリ金属水酸化物とし は、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナト ウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム 水酸化セシウム、及びこれらの水溶液が挙 られる。なお、該水溶液を用いる場合には 濃度20質量%以上の水溶液であることが工程1 の脱水処理が容易である点から好ましい。こ れらの中でも特に水酸化リチウムと水酸化ナ トリウムおよび水酸化カリウムが好ましく、 特に水酸化ナトリウムが好ましい。

 また、前記PAS(A)のピーク分子量及び分子 分布(Mw/Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー を用いて、次の条件で、6種類の単分散ポリ チレンを校正に用いて、測定することがで る。

[ゲル浸透クロマトグラフィーによる測定条 ]
 装置:超高温ポリマー分子量分布測定装置( 式会社センシュー科学製「SSC-7000」)
 カラム:UT-805L(昭和電工株式会社製)
 カラム温度:210℃
 溶媒:1-クロロナフタレン
 測定方法:UV検出器(360nm)

 本発明で用いるPAS(A)は、25,000~30,000の範囲に ピーク分子量を有するものであるが、より好 ましくは26,000~29,000である。また、ポリアミ (B)との相溶性の点から、フローテスターに る溶融粘度が、40~60Pa・s、さらに好ましくは 45~55Pa・sの範囲にあるものが好ましい。なお 測定は高化式フローテスターを用いて、300 、剪断速度100sec -1 、ノズル孔径0.5mm、長さ1.0mmで測定した値で る。

 以上詳述したPAS(A)は、さらに、残存金属 オン量を低減して耐湿特性を改善するとと に、重合の際副生する低分子量不純物の残 量を低減できる点から、該PAS(A)を製造した に、酸で処理し、次いで、水で洗浄された のであることが好ましい。

 ここで使用し得る酸は、酢酸、塩酸、硫 、リン酸、珪酸、炭酸、プロピル酸がPAS(A) 分解することなく残存金属イオン量を効率 に低減できる点から好ましく、なかでも酢 、塩酸が好ましい。

 酸処理の方法は、酸または酸水溶液にPAS 浸漬する方法が挙げられる。この際、必要 応じさらに攪拌または加熱してもよい。

 ここで、前記酸処理の具体的方法は、酢 を用いる場合を例に挙げれば、まずpH4の酢 水溶液を80~90℃に加熱し、その中にPAS(A)を 漬し、20~40分間攪拌する方法が挙げられる。

 このようにして酸処理されたPAS(A)は、残 している酸または塩等を物理的に除去する め、次いで、水または温水で数回洗浄する このときに使用される水としては、蒸留水 たは脱イオン水であることが好ましい。

 また、前記酸処理に供せられるPAS(A)は、 粒体であることが好ましく、具体的には、 レットのような粒状体でも、重合した後の ラリー状態体にあるものでもよい。

 次に、本発明に使用するポリアミド(B)は ε-カプロラクタム重合体であるポリアミド6 、ウンデカンラクタム重合体であるポリアミ ド11、ラウリルラクタム重合体であるポリア ド12、テトラメチレンジアミン/アジピン酸 縮合体であるポリアミド46、ヘキサメチレ ジアミン/アジピン酸共縮合体であるポリア ド66、ヘキサメチレンジアミン/セバシン酸 縮合体であるポリアミド610などの脂肪族ポ アミド、あるいは芳香族ポリアミドが挙げ れるが、ポリアミド46または、以下に詳述 る芳香族ポリアミドであることがPAS(A)との 溶性が良好となり、成形品の耐熱性が良好 なる点、特に表面実装用電子部品用途にお るリフロー後の耐熱性が良好となる点から ましい。

 ここで用いられる芳香族ポリアミドは、 体的には、下記構造式a


で表されるテレフタル酸アミド構造を繰り返 し構造単位の一つとして有するものである。
前記構造式a中、Rは炭素原子数2~12アルキレン 基を表す。かかるテレフタル酸アミド構造は 、具体的には、テレフタル酸、又はテレフタ ル酸ジハライドと、炭素原子数2~12の脂肪族 アミンとの反応によって形成されるもので る。ここで用いる炭素原子数2~12の脂肪族ジ ミンは、具体的には、エチレンジアミン、 ロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,6- キサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8- オクタンジアミン、1,9-ノナンジアミン、1,10- デカンジアミン、1,11-ウンデカンジアミン、1 ,12-ドデカンジアミン等の直鎖状脂肪族アル レンジアミン;1-ブチル-1,2-エタンジアミン、 1,1-ジメチル-1,4-ブタンジアミン、1-エチル-1,4 -ブタンジアミン、1,2-ジメチル-1,4-ブタンジ ミン、1,3-ジメチル-1,4-ブタンジアミン、1,4- メチル-1,4-ブタンジアミン、2,3-ジメチル-1,4 -ブタンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジア ン、3-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2,5-ジ チル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4-ジメチル-1,6- ヘキサンジアミン、3,3-ジメチル-1,6-ヘキサン ジアミン、2,2-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン 、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4, 4-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2,4-ジエ ル-1,6-ヘキサンジアミン、2,2-ジメチル-1,7- プタンジアミン、2,3-ジメチル-1,7-ヘプタン アミン、2,4-ジメチル-1,7-ヘプタンジアミン 2,5-ジメチル-1,7-ヘプタンジアミン、2-メチル -1,8-オクタンジアミン、3-メチル-1,8-オクタン ジアミン、4-メチル-1,8-オクタンジアミン、1, 3-ジメチル-1,8-オクタンジアミン、1,4-ジメチ -1,8-オクタンジアミン、2,4-ジメチル-1,8-オ タンジアミン、3,4-ジメチル-1,8-オクタンジ ミン、4,5-ジメチル-1,8-オクタンジアミン、2, 2-ジメチル-1,8-オクタンジアミン、3,3-ジメチ -1,8-オクタンジアミン、4,4-ジメチル-1,8-オ タンジアミン、5-メチル-1,9-ノナンジアミン の分岐鎖状脂肪族アルキレンジアミン;シク ロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサン ジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナ ンジメチルアミン、トリシクロデカンジメチ ルアミン等の脂環族ジアミン類が挙げられる 。

 これらの中でも特に耐湿性と機械的強度 点から炭素原子数4~8の直鎖状脂肪族アルキ ンジアミン、炭素原子数5~10の分岐鎖状脂肪 族アルキレンジアミンが好ましい。また、好 ましい芳香族ポリアミドの例として、テレフ タル酸をジカルボン酸の主成分とし、1,6-ヘ サンジアミンをジアミンの主成分とした重 合反応により得られるポリアミド6T、テレフ タル酸を主成分とするジカルボン酸成分と、 1,6-ヘキサンジアミンを主成分とするジアミ 成分から得られるポリアミド6T、及び、テレ フタル酸を主成分とするジカルボン酸成分と 、1,9-ノナンジアミンおよび2-メチル-1,8-オク ンジアミンを主成分とするジアミン成分か 得られるポリアミド9Tが挙げられる。

 また、前記芳香族ポリアミドは、テレフ ル酸アミド構造の他に、下記構造式b

(式中、Rは構造式aのおけるRと同義である。)
で表されるイソフタル酸アミド構造を有する ことが、前記芳香族ポリアミド自体の融点を 下げてPAS(A)との相溶性を改善できる点から好 ましい。

 さらに、前記芳香族ポリアミドは、テレ タル酸アミド構造の他に、下記構造式c


(式中、Rは構造式aのおけるRと同義であり、R 2 は、炭素原子数4~10の脂肪族炭化水素基を表 。)で表される酸アミド構造を有していても い。

 ここで、上記構造式cで表される酸アミド 構造は、炭素原子数4~10の脂肪族ジカルボン 、その酸エステル化物、その酸無水物、又 その酸ハライドと、炭素原子数2~12の脂肪族 アミンとの反応によって形成されるもので る。ここで用いる炭素原子数4~10の脂肪族ジ カルボン酸は、具体的には、マロン酸、ジメ チルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジ ピン酸、2-メチルアジピン酸、トリメチルア ピン酸、ピメリン酸、2,2-ジメチルグルタル 酸、3,3-ジエチルコハク酸、アゼライン酸、 バシン酸、スベリン酸等の脂肪族ジカルボ 酸;1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シ ロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカル ン酸等の脂肪族ジカルボン酸類が挙げられ 。

 上記した炭素原子数4~10の脂肪族ジカルボ ン酸の酸エステル化物は、具体的には、メチ ルエステル体、エチルエステル体、t-ブチル ステル体等が挙げられ、また、前記脂肪族 カルボン酸の酸ハライドを構成するハロゲ 原子は臭素原子、塩素原子が挙げられる。

 前記芳香族ポリアミドは、上述したとおり 記構造式a、構造式b、構造式cで表されるア ド構造を構造部位として有するものが好ま いが、ジカルボン酸1分子と、ジアミン1分 とから構成される酸アミド構造を1単位とし 場合に、該芳香族ポリアミド(B)を構成する 酸アミド構造に対して前記テレフタル酸ア ド構造は65モル%以上、イソフタル酸アミド 造は20モル%以上、脂肪族炭化水素酸アミド 造は10モル%以上含まれていることが、耐熱 改善の効果が顕著になる点から好ましい。
さらに前記芳香族ポリアミドは、耐熱性と耐 湿性とのバランスから
 前記構造式aで表されるテレフタル酸アミド 構造を65~70モル%、
 前記構造式bで表されるイソフタル酸アミド 構造を20~25モル%、
 前記構造式cで表される酸アミド構造を10~15 ル%、
で構成されるポリアミドが好ましい。

 また、前記芳香族ポリアミドは、前記PAS( A)への分散性の点から融点290~330℃の範囲であ り、ガラス転移温度(Tg)が90~140℃の範囲であ ことが好ましい。さらに、本発明に用いる リアミド成分の分子量としては、ゲル浸透 ロマトグラフィーを用いた測定において30,00 0~70,000の範囲にピーク分子量を有することが ましく、特に、40,000~60,000の範囲にピーク分 子量を有することが好ましい。ポリアミド成 分の分子量が該範囲にある場合に、本発明の ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を射出 成形に用いる場合の離型性が特に良好となる 。尚、本発明におけるポリアミドの分子量測 定のためのゲル浸透クロマトグラフィーの条 件としては、5mMのトリフルオロ酢酸ナトリウ ムを含有するヘキサフルオロイソプロパノー ルを溶離液とし、分子量の判明しているポリ メチルメタクリレートにより分子量の検量線 を作成して、ポリメチルメタクリレート換算 分子量として求めることができる。

 本発明に使用する芳香族ポリアミド(B)は、 えば、以下の(1)~(3)の方法によって製造する ことができる。
(1)テレフタル酸を含むジカルボン酸成分の酸 ハライドと、炭素原子数2~12の脂肪族ジアミ を含むジアミン成分とを、お互いに相溶し い二種の溶媒に溶解した後、アルカリおよ 触媒量の第4級アンモニウム塩の存在下に2液 を混合、撹拌して重縮合反応を行う界面重合 法。
(2)テレフタル酸を含むジカルボン酸成分の酸 ハライドと、炭素原子数2~12の脂肪族ジアミ を含むジアミン成分とを第3級アミンなどの を受容するアルカリ性化合物の存在下、有 溶媒中で反応せしめる溶液重合法。
(3)テレフタル酸を含むジカルボン酸成分のジ エステル化物と、芳香族ジアミンを原料とし て溶融状態でアミド交換反応する溶融重合法 。

 本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂 成物は、PAS(A)とポリアミド(B)との質量比(A)/ (B)が70/30~85/15なる割合で含有するものが好ま い。また、本発明ではさらにエポキシアル シキシラン化合物(C)を併用することにより 前記芳香族ポリアミドの分散性が飛躍的に 上し、耐熱性及び難燃性の改善効果が一層 著なものとなる点から好ましい。

 前記エポキシアルコキシシラン化合物(C) 、1分子中にエポキシ基を1つ以上有し、ア コキシ基を2つ以上有するシラン化合物であ 。ここで、該アルコキシ基は炭素原子数1~6 アルコキシ基、あるいは、該アルコキシ基 繰り返し単位として2~6単位で構成されるポ アルキレンオキシ基が挙げられる。ここで 前記エポキシアルコキシシラン化合物(C)の 体例は、γ-グリシドキシプロピルトリメト シシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル) チルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシ ロピルトリエトキシシランなどが挙げられ 。

 前記エポキシアルコキシシラン化合物(C) 配合量は、前記PAS(A)と前記芳香族ポリアミ との合計量100質量部に対し、0.01~5質量部で ることが好ましく、特に0.1~2質量部である とが好ましい。

 また、本発明のポリアリーレンスルフィ 樹脂組成物は、PAS(A)、芳香族ポリアミド(B) さらに望ましくは前記エポキシアルコキシ ラン化合物(C)の各成分に加え、さらにハイ ロタルサイト類化合物(D)を併用することが 記PAS(A)と前記芳香族ポリアミドとの溶融混 時あるいは成形物のリフロー炉における熱 理時におけるポリマー成分の熱分解を抑制 て、優れた機械的強度や難燃性の一層の向 が図れる点、及び、熱処理後の成形物外観 改善効果が一層顕著なものとなる点から好 しい。

 ここで用いるハイドロタルサイト類化合物( D)は、2価の金属イオンと3価の金属イオンの 酸化物を層状結晶構造として有し、該層状 晶構造の層間に陰イオンを含む構造を有す 無機化合物、あるいは、その焼成物である かかるハイドロタルサイト類化合物(D)を構 する2価の金属イオンは、例えば、Mg 2+ 、Mn 2+ 、Fe 2+ 、Co 2+ 、Ni 2+ 、Cu 2+ 、及びZn 2+ が挙げられ、3価の金属イオンはAl 3+ 、Fe 3+ 、Cr 3+ 、Co 3+ 、及びIn 3+ が挙げられる。また、陰イオンは、OH - 、F - 、Cl - 、Br - 、NO 3 - 、CO 3 - 、SO 4 2- 、Fe(CN) 6 3- 及びCH 3 COO - 、モリブテン酸イオン、ポリモリブテン酸イ オン、バナジウム酸イオン、ポリバナジウム 酸イオンが挙げられる。

 これらの中でも、特に、ポリアリーレンス フィド(A)に起因する酸成分とのイオン交換 に優れ、ガス発生防止効果が顕著である点 ら、3価の金属イオンはAl 3+ であって、陰イオンはCO 3 - であることが好ましく、具体的には、例えば 下記式
M 2+ 1-x Al x (OH) 2 ・(CO 3 ) X/2 mH 2 O  式1
(式1中、M 2+ はMg,Ca及びZnよりなる群から選ばれた二価金 イオンを示し、x及びmは、0<x<0.5かつ0≦m ≦2を満足する数値である。)
で表される化合物であることが好ましい。

 前記式1を満足する化合物は、例えば、
Mg 2+ 6 Al 2 (OH) 16 ・(CO 3 )・4H 2 O
で表される天然ハイドロタルサイトの他、
Mg 0.7 Al 0.3 (OH) 2 (CO 3 ) 0.15 ・0.54H 2 O、
Mg 4.5 Al 2 (OH) 13 CO 3 ・3.5H 2 O、
Mg 4.3 Al 2 (OH) 12.6 CO 3 ・3.5H 2 O、
Mg 4.2 Al 2 (OH) 12.4 CO 3
Zn 6 Al 2 (OH) 16 CO 3 ・4H 2 O、
Ca 6 Al 2 (OH) 16 CO 3 ・4H 2 O等が挙げられる。
これらのなかでも特に本発明ではガス発生防 止の点から下記式2
Mg 2+ 1-x Al x (OH) 2 ・(CO 3 ) X/2 mH 2 O  式2
(式2中、x及びmは、0<x<0.5かつ0≦m≦2を満 する数値である。)
で表されるMg-Al系ハイドロタルサイト様化合 であることが特に好ましい。

 前記ハイドロタルサイト類化合物(D)の配 量は、ガス発生防止効果が顕著なものとな 点から本発明のポリアリーレンスルフィド 脂組成物中0.1~1.0質量%、あるいは、前記PAS(A )及び前記芳香族ポリアミドの合計質量100質 部に対して0.01~5質量部であることが好まし 、特に0.1~2質量部であることが好ましい。

 本発明では、上記各成分に加え、さらに 維状強化材(E-1)又は無機質フィラー(E-2)を配 合することが成形物の機械的強度の点から好 ましい。

 前記繊維状強化材(E-1)は、例えば、ガラ 繊維、PAN系又はピッチ系の炭素繊維、シリ 繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア 維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維、ホ 素繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、チタン カリウム繊維、さらにステンレス、アルミ ウム、チタン、銅、真ちゅう等の金属の繊 状物の無機質繊維状物質、及びアラミド繊 等の有機質繊維状物質等が挙げられる。

 また、無機質フィラー(E-2)は、例えば、 イカ、タルク、ワラステナイト、セリサイ 、カオリン、クレー、ベントナイト、アス スト、アルミナシリケート、ゼオライト、 イロフィライトなどの珪酸塩や炭酸カルシ ム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの 酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど 硫酸塩、アルミナ、酸化マグネシウム、シ カ、ジルコニア、チタニア、酸化鉄などの 属酸化物、ガラスビーズ、セラミックビー 、窒化ホウ素、炭化珪素、燐酸カルシウム どが挙げられる。これらの繊維状強化材(E-1) 、無機質フィラー(E-2)は、単独使用でも2種以 上を併用してもよい。

 本発明に使用する繊維状強化材(E-1)又は 機質フィラー(E-2)の配合量は、PAS(A)と芳香族 ポリアミド(B)との合計量100質量部に対し、1~2 00重量部の範囲であることが好ましい。また 維状強化材(E-1)又は無機質フィラー(E-2)は、 本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂成形 物品の性能を損なわない範囲で、シランカッ プリング剤あるいはチタンカップリング剤等 の表面処理剤で表面処理を施したものであっ てもよい。

 さらに、本発明のポリアリーレンスルフ ド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわ い範囲で、酸化防止剤又は安定剤(F)を併用 ることが前記PAS(A)と前記芳香族ポリアミド の溶融混練時あるいは成形物のリフロー炉 おける熱処理時におけるポリマー成分の熱 解を抑制して、優れた機械的強度や難燃性 一層の向上が図れる点、及び、熱処理後の 形物外観を改善効果が一層顕著なものとな 点から好ましい。酸化防止剤又は安定剤に 、例えば、フェノール系(ヒンダードフェノ ール類など)、アミン系(ヒンダードアミン類 ど)、リン系、イオウ系、ヒドロキノン系、 キノリン系酸化防止剤(又は安定剤)などが含 れる。

 長期間安定に耐熱性を維持するために酸 防止剤又は安定剤を含んでいてもよい。酸 防止剤又は安定剤には、例えば、フェノー 系(ヒンダードフェノール類など)、アミン (ヒンダードアミン類など)、リン系、イオウ 系、ヒドロキノン系、キノリン系酸化防止剤 (又は安定剤)などが含まれる。

 フェノール系酸化防止剤には、ヒンダー フェノール類、例えば、2,2’-メチレンビス (4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-メチ ンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブ リデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール) 2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、1,3,5-トリメチ ル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベ ンジル)ベンゼン、1,6-ヘキサンジオール-ビス [3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロ ピオネート]、ペンタエリスリトールテトラ ス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル) ロピオネート]、トリエチレングリコール-ビ ス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニ )プロピオネート]、n-オクタデシル-3-(4’,5 -ジ-t-ブチルフェノール)プロピオネート、n- クタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t- チルフェノール)プロピオネート、ステアリ -2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェノール) ロピオネート、ジステアリル-3,5-ジ-t-ブチ -4-ヒドロキシベンジルホスホネート、2-t-ブ ル-6-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベン ル)-4-メチルフェニルアクリレート、N,N’-ヘ キサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキ -ヒドロシンナマミド)、3,9-ビス{2-[3-(3-t-ブ ル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオ ルオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テト オキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’-チオビ (3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリ (2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェノール )ブタンなどが含まれる。

 ヒンダードフェノール類の中でも、例えば 1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル -4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]など C 2 ~C 10 アルキレンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-分岐C 3 ~C 6 アルキル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネ ト];トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチ ル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオ ート]などのジ又はトリオキシC 2 ~C 4 アルキレンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-分岐C 3 ~C 6 アルキル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネ ト];グリセリントリス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒ ロキシフェニル)プロピオネート]などのC 3 ~C 8 アルキレントリオール-ビス[3-(3,5-ジ-分岐C 3 ~C 6 アルキル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネ ト];ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5- -t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネ ート]などのC 4 ~C 8 アルキレンテトラオールテトラキス[3-(3,5-ジ- 分岐C 3 ~C 6 アルキル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネ ト]などが好ましい。

 アミン系酸化防止剤には、ヒンダードアミ 類、例えば、トリ又はテトラC 1 ~C 3 アルキルピペリジン又はその誘導体[例えば 4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、 4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペ ジン、4-フェノキシ-2,2,6,6-テトラメチルピ リジンなど]、ビス(トリ、テトラ又はペンタ C 1 ~C 3 アルキルピペリジン)C 2 ~C 20 アルキレンジカルボン酸エステル[例えば、 ス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)オギサ ート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジ )マロネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピ ペリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6-テトラメ ル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6- ンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス( 2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)テレフタレ ート]、1,2-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリ ルオキシ)エタン、フェニル-1-ナフチルアミ ン、フェニル-2-ナフチルアミン、N,N’-ジフ ニル-1,4-フェニレンジアミン、N-フェニル-N -シクロヘキシル-1,4-フェニレンジアミンな が含まれる。

 リン系安定剤(又は酸化防止剤)には、例え 、トリイソデシルホスファイト、トリスノ ルフェニルホスファイト、ジフェニルイソ シルホスファイト、フェニルジイソデシル スファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチ フェニル)オクチルホスファイト、4,4’-ブチ リデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル)ジト リデシルホスファイト、トリス(分岐C 3 ~C 6 アルキルフェニル)ホスファイト[例えば、ト ス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、 リス(2-t-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファ ト、トリス(2,4-ジ-t-アミルフェニル)ホスフ イト、トリス(2-t-ブチルフェニル)ホスファ ト、トリス[2-(1,1-ジメチルプロピル)-フェニ ル]ホスファイト、トリス[2,4-(1,1-ジメチルプ ピル)-フェニル]ホスファイトなど]、ビス(2- t-ブチルフェニル)フェニルホスファイト、ト リス(2-シクロヘキシルフェニル)ホスファイ 、トリス(2-t-ブチル-4-フェニルフェニル)ホ ファイト、ビス(C 3 ~C 9 アルキルアリール)ペンタエリスリトールジ スファイト[例えば、ビス(2,4-ジ-t-ブチル-4- チルフェニル)ペンタエリスリトールジホス ァイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェ ル)ペンタエリスリトールジホスファイト、 ス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトール ホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタ エリスリトールジホスファイトなど]、トリ ェニルホスフェート系安定剤(例えば、4-フ ノキシ-9-α-(4-ヒドロキシフェニル)-p-クメニ オキシ-3,5,8,10-テトラオキサ-4,9-ジホスファ ロ[5,5]ウンデカン、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフ ェニル)ホスフェートなど)、ジホスフォナイ 系安定剤(例えば、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチ )-4,4’-ビフェニレンジホスフォナイトなど) などが含まれる。リン系安定剤は、通常、分 岐C 3 ~C 6 アルキルフェニル基(特に、t-ブチルフェニル 基)を有している。

 ヒドロキノン系酸化防止剤には、例えば 2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノンなどが含まれ、 キノリン系酸化防止剤には、例えば、6-エト シ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンな が含まれ,イオウ系酸化防止剤には、例えば 、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステ アリルチオジプロピオネートなどが含まれる 。

 これらの酸化防止剤又は安定剤は単独で 又は二種以上使用できる。前記酸化防止剤 は安定剤(F)の配合量は、ガス発生防止効果 顕著なものとなる点から本発明のポリアリ レンスルフィド樹脂組成物中0.1~1.0質量%、 るいは、前記PAS(A)及び前記芳香族ポリアミ の合計質量100質量部に対して0.01~5質量部で ることが好ましく、特に0.1~2質量部であるこ とが好ましい。

 さらに、本発明のポリアリーレンスルフ ド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわ い範囲で、1)リン酸類、亜リン酸類および 亜リン酸類、2)リン酸金属塩類、亜リン酸金 属塩類および次亜リン酸金属塩類、および3) ン酸エステルおよび亜リン酸エステル類等 リン酸化合物、亜リン酸化合物、次亜リン 化合物から選ばれる1種以上のリン化合物(G) を併用することが、前記PAS(A)と前記芳香族ポ リアミドとの溶融混練時あるいは成形物のリ フロー炉における熱処理時におけるポリマー 成分の熱分解を抑制して、優れた機械的強度 や難燃性の一層の向上が図れる点、及び、熱 処理後の成形物外観を改善効果が一層顕著な ものとなる点から好ましい。

 前記1)のリン酸類、亜リン酸類および次亜 ン酸類とは、例えば、リン酸、亜リン酸、 亜リン酸、ピロ亜リン酸、二亜リン酸など 挙げることができる。
前記2)のリン酸金属塩類、亜リン酸金属塩類 よび次亜リン酸金属塩類とは、前記1)のリ 化合物と周期律表第1族及び第2族、マンガン 、亜鉛、アルミニウム、アンモニア、アルキ ルアミン、シクロアルキルアミン、ジアミン との塩を挙げることができる。
前記3)のリン酸エステルおよび亜リン酸エス ル類とは下記一般式で表される。
リン酸エステル;(OR) n PO(OH) 3-n
亜リン酸エステル;(OR) n P(OH) 3-n

 ここで、nは1、2あるいは3を表し、Rはア キル基、フェニル基、あるいはそれらの基 一部が炭化水素基などで置換されたアルキ 基を表す。nが2以上の場合、前記一般式内の 複数の(RO)基は同じでも異なっていてもよい 前記Rとしては、メチル基、エチル基、n-プ ピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシ 基、シクロヘキシル基、n-オクチル基、ノニ ル基、デシル基、ステアリル基、オレイル基 などの脂肪族基、フェニル基、ビフェニル基 などの芳香族基、あるいはヒドロキシル基、 メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシ 基、エトキシ基などの置換基を有する芳香族 基などをあげることができる。

 本発明の好ましいリン化合物は、リン酸 属塩類、亜リン酸金属塩類あるいは次亜リ 酸金属塩類から選ばれる1種以上である。中 でも、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸から選 ばれるリン化合物と、周期律表第1族及び第2 、マンガン、亜鉛、アルミニウムから選ば る金属との塩であることが好ましく、より ましくは次亜リン酸カルシウムである。

 前記リン化合物(G)の配合量は、ガス発生 止効果が顕著なものとなる点から本発明の リアリーレンスルフィド樹脂組成物中0.1~1.0 質量%、あるいは、前記PAS(A)及び前記芳香族 リアミドの合計質量100質量部に対して0.01~5 量部であることが好ましく、特に0.1~2質量部 であることが好ましい。

 また、本発明のポリアリーレンスルフィド 脂組成物は、塩素原子含有量規制の観点か 、耐熱樹脂組成物中に含まれる塩素原子含 量が900ppm以下になるように配合することが ましい。ここで耐熱樹脂組成物中に含まれ 塩素原子含有量とは、樹脂成分のみならず 全ての配合成分が含まれている状態での塩 原子含有量であり、塩素原子の定量は、試 を密閉石英管内で燃焼(900℃、Ar-O 2 雰囲気)処理し、発生したガスを純水に吸収 せた後、イオンクロマトグラフ法による塩 物イオンを測定することで行うことができ 。

 本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂 成物には、本発明の効果を損なわない範囲 、加工熱安定剤、可塑剤、離型剤、着色剤 滑剤、耐候性安定剤、発泡剤、防錆剤、ワ クス、結晶核剤等を適量添加してもよい。

 さらに、本発明のポリアリーレンスルフ ド樹脂組成物は、要求される特性に合わせ その他の樹脂成分を適宜配合してもよい。 こで使用し得る樹脂成分としては、エチレ 、ブチレン、ペンテン、ブタジエン、イソ レン、クロロプレン、スチレン、α-メチル チレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリ 酸エステル、メタクリル酸エステル、(メタ )アクリロニトリルなどの単量体の単独重合 または共重合体、ポリウレタン、ポリエス ル、ポリブチレンテレフタレート・ポリエ レンテレフタレート等のポリエステル、ポ アセタール、ポリカーボネート、ポリサル ン、ポリアリルサルホン、ポリエーテルサ ホン、ポリフェニレンエーテル、ポリエー ルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、 リイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテ イミド、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、 ェノキシ樹脂、液晶ポリマー、ポリアリー エーテルなどの単独重合体、ランダム共重 体またはブロック共重合体、グラフト共重 体等が挙げられる。

 本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂 成物を示差走査熱量(DSC)測定した場合にお るポリアリーレンスルフィド樹脂組成物中 PAS(A)の再結晶化ピーク温度は、220℃以上で ることが好ましく、220~240℃の範囲であるこ がより好ましく、222~235℃であることがさら に好ましい。ポリアリーレンスルフィド樹脂 組成物中のPAS(A)の再結晶化ピーク温度が、こ のような範囲であれば、ポリアミド(B)との相 溶性が良好となり耐ブリスター性が改善され る。

 一方、ポリアリーレンスルフィド樹脂組 物中のポリアミド(B)の再結晶化ピーク温度 、265℃以下であることが好ましく、240~265℃ であることがより好ましく、255~262℃である とがさらに好ましい。ポリアミド(B)の再結 化ピーク温度が、このような範囲であれば PAS(A)との相溶性が良好となり耐ブリスター が改善される。

 また、本発明のポリアリーレンスルフィ 樹脂組成物は、当該樹脂組成物中のポリア ド(B)の含有比率が8~20質量%であり、かつ当 樹脂組成物をヘキサフルオロイソプロパノ ルで70℃15分間抽出した際の抽出率が7質量% 下であるものが好ましい。ここで、ポリア ドは、ヘキサフルオロイソプロパノールに 解するものであるが、樹脂組成物中のポリ ミドの含有比率より、ヘキサフルオロイソ ロパノールで抽出されるポリアミドの量が いということは、樹脂組成物中でポリアミ より溶解しにくい形態となっていることを 唆し、良好なPAS/ポリアミドのポリマーアロ を形成しているものと推測され、このこと より、耐熱性が向上するものと考えられる 特に、本発明のポリアリーレンスルフィド 脂中のポリアミド(B)の含有量をX(質量%)とし 、該組成物をヘキサフルオロイソプロパノー ルで70℃15分間抽出した際の抽出率をY(質量%) した場合に、Y/Xの値が0.01~0.40の範囲にある とが好ましい。なお、この抽出率の測定方 については、実施例に記載する。

 以上詳述したポリアリーレンスルフィド 脂組成物を製造する方法は、具体的には、 記PAS(A)およびテレフタル酸アミドを必須の 造単位とする芳香族ポリアミド(B)を、さら 必要に応じてその他の配合成分をタンブラ 又はヘンシェルミキサーなどで均一に混合 次いで、2軸押出機に投入し、樹脂成分の吐 出量(kg/hr)とスクリュー回転数(rpm)との比率( 出量/スクリュー回転数)が0.02~0.2(kg/hr・rpm)な る条件下に溶融混練する方法が挙げられる。 かかる条件下に製造することによって前記PAS (A)をマトリックスとして微分散する前記芳香 族ポリアミドの体積平均径を1.0~0.1μmに調整 ることができる。

 上記製造方法につきさらに詳述すれば、 記した各成分を二軸押出機内に投入し、設 温度330℃、樹脂温度350℃程度の温度条件下 溶融混練する方法が挙げられる。この際、 脂成分の吐出量は回転数250rpmで5~50kg/hrの範 となる。なかでも特に分散性の点から20~35kg /hrであることが好ましい。よって、樹脂成分 の吐出量(kg/hr)とスクリュー回転数(rpm)との比 率(吐出量/スクリュー回転数)は、特に0.08~0.14 (kg/hr・rpm)であることが好ましい。

 また、前記配合成分のうち繊維状強化材( E-1)は、前記2軸押出機のサイドフィーダーか 該押出機内に投入することが該繊維状強化 (E-1)の分散性が良好となる点から好ましい かかるサイドフィーダーの位置は、前記2軸 出機のスクリュー全長に対する、押出機樹 投入部から該サイドフィーダーまでの距離 比率が、0.1~0.6であることが好ましい。中で も0.2~0.4であることが特に好ましい。

 このようにして溶融混練されたポリアリ レンスルフィド樹脂組成物はペレットとし 得られ、次いで、これを成形機に供して溶 成形することにより、目的とする成形物が られる。

 ここで溶融成形する方法は、例えば、射 成形、押出成形、圧縮成形等が挙げられる 、このうち表面実装用電子部品の成型用と ては射出成形が特に好ましい。

 このようにして得られる成形物は、耐熱 に優れ、高温域での弾性率が高い為、はん 付けされる成形物に好ましく使用すること できる。特に、前記した通り、表面実装用 電子部品用途においては、加熱炉(リフロー 炉)内の基体の表面温度が280℃以上の高温に るところ、従来のPASでは融解又は変形が見 れるのに対して、本発明のポリアリーレン ルフィド樹脂組成物は、成形物品が融解又 変形を生じることなく該基体にはんだ付け ることが可能である。なお、上記のはんだ けされる基体の表面温度とは、表面実装方 におけるはんだ付け工程において、実際に 定される基体の表面上の温度である。該基 の具体例としては、SMT方式におけるプリン 印刷された配線基板や回路基板等が挙げら る。

 また、上記した表面実装方式での加熱炉( リフロー炉)中での加熱方式には、(1)ヒータ 上を移動する耐熱ベルトの上に基板を載せ 加熱する熱伝導方式、(2)約220℃の沸点を有 るフッ素系液体の凝集時の潜熱を利用する ーパーフェイズソルダリング(VPS)方式、(3)熱 風を強制的に循環させているところを通す熱 風対流熱伝達方式、(4)赤外線により基板の上 部又は上下両面から加熱する赤外線方式、(5) 熱風による加熱と赤外線による加熱を組み合 わせて用いる方式等が挙げられる。

 本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂 成物の成形物品は、例えば、精密部品、各 電気・電子部品、機械部品、自動車用部品 建築、サニタリー、スポーツ、雑貨等の幅 い分野において使用することができるが、 に難燃性、耐熱性、剛性等々に優れるため とりわけ、前記した通り、表面実装用電子 品として有用である。

 ここで、本発明の表面実装用電子部品は 前記したポリアリーレンスルフィド樹脂組 物の成形物と、金属端子とを必須の構成要 とするもので、プリント印刷された配線基 や回路基板上に表面実装方式によって固定 れるものである。この電子部品を表面実装 式で基板に固定させるには、該電子部品の 属端子がハンダボールを介して基板上の通 部に接するように基板表面に載せて、上記 た加熱方式によってリフロー炉内で加熱す ことによって、該電子部品を基板にハンダ けする方法が挙げられる。

 かかる表面実装用の電子部品は、具体的 は、表面実装方式対応用のコネクター、ス ッチ、センサー、抵抗器、リレー、コンデ サー、ソケット、ジャック、ヒューズホル ー、コイルボビン、ICやLEDのハウジング等 挙げられる。

 また、本発明の製造方法で得られるポリ リーレンスルフィド樹脂成形物品は、所謂 ロゲン系銅や酸化アンチモンあるいは金属 酸化物といった難燃剤を添加することなく UL耐炎性試験規格UL-94(アンダーライターズ  ラボラトリーズ,インコーポレイテッド,(UL)ス タンダード No.94)において、V-0に相当する高 難燃性を達成せしめるものである。

 以下に、実施例により本発明をさらに詳 く説明する。

(実施例1~13及び比較例1~7)
 表1~3に記載する配合比率にしたがい、ポリ リーレンスルフィド(ポリフェニレンスルフ ィド)、芳香族ポリアミド及びその他配合材 (ガラス繊維チョップドストランドを除く)を タンブラーで均一に混合した。その後、東芝 機械株式会社製ベント付き2軸押出機「TEM-35B に前記配合材料を投入し、また、サイドフ ーダー(スクリュー全長に対する樹脂投入部 から該サイドフィーダーまでの距離の比率:0. 28)から繊維径10μm、長さ3mmのガラス繊維チョ プドストランドを上記配合材料60質量部に して40質量部の割合で供給しながら、樹脂成 分吐出量25kg/hr、スクリュー回転数250rpm、樹 成分の吐出量(kg/hr)とスクリュー回転数(rpm) の比率(吐出量/スクリュー回転数)=0.1(kg/hr・r pm)、設定樹脂温度330℃で溶融混練して樹脂組 成物のペレットを得た。

 次いで、得られた樹脂組成物のペレット 用いて以下の各種評価試験を行った。

[リフロー加熱後の曲げ強度及び曲げ破断伸 ]
 樹脂組成物ペレットを射出成形機を用いて 形し、幅10mm×長さ50mm×厚さ1.6mmの試験片を た。次いでこの試験片について、ASTM D790に じてリフロー加熱後の曲げ強度及び曲げ破 伸びを測定した。リフロー加熱は赤外線加 炉(山陽精工製、SMTスコープ)を用いて、図1 示す温度プロファイルに従ってリフロー工 を行った。

[耐ブリスター性試験]
 樹脂組成物のペレットを射出成形機を用い 成形し、形状が縦50mm×横10mm×高さ8mm、0.8mm さの箱形コネクターを作成した。次いでこ 箱形コネクターを赤外線加熱炉(山陽精工製 SMTスコープ)を用いて、図1に示す温度プロ ァイルに従ってリフロー工程を行った。評 は加熱後に箱形コネクターを目視観察し、 記の2段階の基準で評価した。
 A:外観に変化なし。
 B:ブリスターもしくは融解が観察された。

[燃焼試験]
 UL-94垂直試験に準拠して燃焼試験を行い、 燃性を評価した。

[塩素原子含有量の測定]
 樹脂組成物ペレットを密閉石英管内で燃焼( 900℃、Ar-O 2 雰囲気)処理し、発生したガスを純水に吸収 せてイオンクロマトグラフ法により塩化物 オンを定量し、塩素原子含有量を測定した
〈処理装置〉
 燃焼ガス吸収装置:ダイアインスツルメンツ 社製「AQF-100」
 イオンクロマトグラフ:ダイオネクス社製「 ICS-3000」

[再結晶化ピーク温度(Tc2)の測定]
 試料をポリアリーレンスルフィド(A)及び芳 族ポリアミド(B)の融点以上の温度(330℃)ま にいったん加熱し(昇温速度:20℃/分)、溶融 態にした後(保持時間:3分)、試料を20℃/分の 温速度で120℃まで冷却した時に、発現した 結晶化ピーク温度(Tc2)を測定した。

[ヘキサフルオロイソプロパノール抽出率の 定]
 樹脂組成物のペレットを、凍結粉砕機を用 て凍結粉砕し、目開き500μmの篩を通して粗 を取り除いた後、20mlサンプル管に凍結粉砕 した試料約1gを精密に秤量し、ヘキサフルオ イソプロパノール(以下「HFIP」と略記する )を4ml加えた。次に、試料とHFIPの入ったサン プル管を70℃で15分超音波洗浄機にて超音波 理した。さらに、超音波処理液を、質量を 密に秤量したフィルターを用いてろ過した その後、試料をフィルターごと乾燥して秤 し、HFIPに溶解しなかった試料の質量を測定 た。HFIP中での超音波処理前に秤量した試料 の質量と、HFIP中で超音波処理後、フィルタ の残った試料の質量(フィルターの質量は除 。)との差が、HFIPにより抽出された試料の 量であり、これをHFIP中での超音波処理前に 量した質量で除した値を百分率で示した値 抽出率とした。

[離型性の評価]
 樹脂組成物のペレットを用いて、図2に示す 形状のキャビティを有する金型での射出成形 における離型性を評価した。成形条件は、樹 脂温度340℃、金型温度130℃で、充填完了後の 冷却時間を徐々に短くして、金型から成形品 がエジェクトされなくなる時間を求めた。金 型から成形品がエジェクトされる最低の時間 T1により、以下のように評価した。
 A:T1が10秒以下
 B:T1が10~15秒
 C:T1が15秒以上

 さらに、T1が10秒以下の樹脂組成物につい ては、同様にペレットを用いて、長さ25mm、 2mm、厚さ0.3~0.5mm、45ピン0.2mmピッチのコネク ー形状のキャビティを有する金型での射出 形における離型性を評価した。成形条件は 樹脂温度340℃、金型温度140℃で、充填完了 の冷却時間を徐々に短くして、金型から成 品がエジェクトされなくなる時間を求めた 金型から成形品がエジェクトされる最低の 間T2が3秒以下の場合、離型性の評価を「AA とした。

 なお、表1~3中の配合樹脂、材料は下記のも である。
(1)PPS-1:ポリフェニレンスルフィド(DIC株式会 製「DSP LR-1G」;非ニュートン指数1.1、ピーク 分子量28,000、Mw/Mn=7.5)
(2)PPS-2:リニア型ポリフェニレンスルフィド(DI C株式会社製「LR-100G」(非ニュートン指数1.1、 ピーク分子量18,000、Mw/Mn=6.2)
(3)PPS-3:リニア型ポリフェニレンスルフィド(DI C株式会社製「ML320」;非ニュートン指数1.2、 ーク分子量40,900、Mw/Mn=17.2)
(4)PA6T-1:テレフタル酸65モル%、イソフタル酸25 モル%、アジピン酸10モル%を必須の単量体成 として反応させた芳香族ポリアミド(融点310 、Tg120℃、ピーク分子量:45,800)
(5)PA6T-2:テレフタル酸66モル%、イソフタル酸23 モル%、アジピン酸11モル%を必須の単量体成 として反応させた芳香族ポリアミド(融点310 、Tg120℃、ピーク分子量:28,500)
(6)PA6T-3:テレフタル酸64モル%、イソフタル酸34 モル%、アジピン酸2モル%を必須の単量体成分 として反応させた芳香族ポリアミド(融点310 、Tg120℃、ピーク分子量:36,100)
(7)PA9T:ポリアミド9T(株式会社クラレ製「ジェ スタ N1000A」)
(8)PA46:ポリアミド46(ディーエスエム ジャパ  エンジニアリング プラスチックス株式会 製「スタニール TS300」)
(9)Si-1:エポキシシラン(γ-グリシドキシプロピ ルトリメトキシシラン)
(10)ADD-1:ヒンダードフェノール系酸化防止剤( バ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社 「イルガノックス 1098」)
(11)ADD-2:リン系加工熱安定剤(チバ・スペシャ ティ・ケミカルズ株式会社製「イルガフォ  168」)
(12)ADD-3:リン系加工熱安定剤(株式会社ADEKA製 アデカスタブ PEP-36」)
(13)ADD-4:次亜リン酸カルシウム
(14)ADD-5:ハイドロタルサイト(協和化学工業株 会社製「DHT-4A」)
(15)GF:ガラス繊維チョップドストランド(繊維 10μm、長さ3mm)

図1は耐ブリスター性試験における赤外 線加熱炉内の温度プロファイルを示すグラフ である。 図2は、離型性評価のために使用した試 験片の形状を示す。