Login| Sign Up| Help| Contact|

Patent Searching and Data


Title:
VEHICLE
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/026725
Kind Code:
A1
Abstract:
A vehicle capable of turning with a smaller limitation value (large limitation value). The position of the center of gravity of the whole vehicle is estimated. The limited lateral acceleration alim(=aMin, aMax) corresponding to the position of the center of gravity is determined. The vehicle turns with a lateral acceleration a* determined from a target travel state (V*, γ*) which the occupant wishes and not exceeding the limited lateral acceleration alim. That is, if the occupant inputs (requires) a target travel state (V*, γ*) not exceeding the limited lateral acceleration alim, the vehicle turns in the target travel state. If a target travel state (V*, γ*) exceeding the limited lateral acceleration alim is inputted, the ideal target travel state (V*, γ*) is limited to an actual target travel state (V*~, γ*~) so that lateral acceleration a* = limited lateral acceleration alim. With this, since the turning speed and the turning curvature are not limited more than necessary, the turning performance of the vehicle can be utilized at a maximum to its limitation.

Inventors:
DOI KATSUNORI (JP)
Application Number:
PCT/JP2007/067001
Publication Date:
March 06, 2008
Filing Date:
August 31, 2007
Export Citation:
Click for automatic bibliography generation   Help
Assignee:
EQUOS RES CO LTD (JP)
DOI KATSUNORI (JP)
International Classes:
B62K17/00; B62K3/00; B60L15/00
Foreign References:
JP2005138630A2005-06-02
JP2005075070A2005-03-24
JP2004345608A2004-12-09
Attorney, Agent or Firm:
NAKANO, Hitoshi et al. (12-8 Nishishinjuku 8-chome, Shinjuku-ku Toyko 23, JP)
Download PDF:
Claims:
 互いに対向配置された2つの駆動輪を含む車両であって、
 目標速度V * と目標曲率γ * を取得する目標走行状態取得手段と、
 前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * による走行を制御する走行制御手段と、
 搭乗物を含めた車両の重心位置を取得する重心位置取得手段と、
 前記取得した重心位置に対応する限界横方向加速度a lim を決定する限界横方向加速度決定手段と、
 取得した目標速度V * と目標曲率γ * に対応する目標横方向加速度a * が前記限界横方向加速度a lim を超える場合、前記目標横方向加速度a * が前記限界横方向加速度a lim 以下となるように、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * の少なくとも一方を制限する制限手段と、
を具備したことを特徴とする車両。
 前記制限手段は、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * に対する差が最小となる値に制限する、
 ことを特徴とする請求項1に記載の車両。
 前記制限手段は、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * のうち、少なくともその時間変化率が小さい方を制限する、ことを特徴とする請求項1に記載の車両。
 前記制限手段は、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * の時間変化率が共に所定の閾値以下である場合に、前記制限手段は、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * に対する差が最小となる値に制限し、
 前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * の時間変化率の少なくとも一方が所定の閾値より大きい場合に、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * のうち、少なくともその時間変化率が小さい方を制限する、
ことを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3に記載の車両。
 前記制限手段は、制限後の値で所定時間tだけ走行した後の車両位置が、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * で前記所定時間tだけ走行した後の車両位置に最も近くなるように、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * のうち少なくとも一方を制限する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両。
 前記所定時間tは、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * で走行した場合に所定角度旋回する時間であることを特徴とする請求項5に記載の車両。
 前記制限手段は、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * で旋回した場合の走行軌跡と、制限後の値で走行した場合の走行軌跡とのズレ量が、所定のズレ上限値δ Max 以内となるように、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * の少なくとも一方を制限する、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両。
 前記制限手段は、
 前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * で旋回した場合の車両軌跡と、前記取得した目標曲率γ * での旋回が可能になるまで最低減速度b Min で減速しながら旋回をした場合の車両軌跡とのズレ量が、
 所定のズレ上限値δ Max 以内である場合には、減速度bを前記最低減速度b Min とし、
 所定のズレ上限値δ Max より大きい場合にはズレ上限δ Max と一致する減速度bとし、
前記目標速度V * を前記減速度bにより制限し、前記目標曲率γ * を前記目標速度V * の制限値により目標曲率γ * を制限する、
ことを特徴とする請求項7に記載の車両。
 前記制限手段は、前記目標横方向加速度a * が前記限界横方向加速度a lim となるように、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * の少なくとも一方を制限することを特徴とする請求項1から請求項8のうちのいずれか1の請求項に記載の車両。
 前記搭乗部に配置された荷重センサと、
 前記重量体の高さを測定する高さセンサと、
 前記荷重センサ及び前記高さセンサの検出値から、搭乗物の重心位置を取得する搭乗物重心取得手段と、を備え、
 前記重心位置取得手段は、前記取得した搭乗物の重心位置と、予め規定されている車両の重心位置とから、搭乗物を含めた車両の重心位置を取得する、ことを特徴とする請求項1から請求項9のうちのいずれか1の請求項に記載の車両。
 前記走行制御手段は、目標速度V * と目標曲率γ * を直接の制御対象としてフィードバック制御により走行を制御することを特徴とする請求項1から請求項10のうちのいずれか1の請求項に記載の車両。
Description:
車両

 本発明は、車両に係り、例えば、互いに 抗配置された2つの駆動輪を有する横置き二 輪車両の旋回走行の制御に関する。

 倒立振り子の姿勢制御を利用した車両(以下 、単に倒立振り子車両という)が注目され、 在実用化されつつある。
 例えば、同軸上に配置された2つの駆動輪を 有し、運転者の重心移動による駆動輪の姿勢 を感知して駆動する技術が特許文献1で提案 れている。
 また、従来の円形状の駆動輪1つや、球体状 の駆動輪1つの姿勢を制御しながら移動する 両や各種倒立振り子車両について提案され いる。

特開2004-276727公報

特開2004-129435公報

 このような、車両では、運転者による体重 動量、リモコンや操縦装置からの操作量、 め入力された走行指令データ等に基づいて 姿勢制御を行いながら停車状態を維持した 走行したりするようになっている。
 そして、車輪を操舵したり、2つの駆動輪に 差動トルクを与えたりすることで、車両の旋 回を行うようになっている。

 しかし、一般的な乗用車と比べて、この うな1人用車両は小型であり、左右輪の間隔 は狭い。また、車両全体の重量に対する乗員 の重量の割合は大きく、その乗員の着座姿勢 を確保すると、車両全体の重心位置は高くな る。

 したがって、このような車両が旋回走行す とき、その旋回速度が高すぎると、あるい 、旋回半径が小さすぎると、遠心力によっ 車両が倒立制御を維持できなくなる可能性 ある。また、内輪側の接地荷重が小さくな ために、内輪がスリップする可能性がある
 このように、旋回性能には限界があるため その限界値に応じた制限値を設定し、その 囲内で旋回させるようにしている。

 ところが、乗員が着座位置や着座姿勢を変 たり、異なる体型の人が乗ったりすると、 回速度や旋回曲率(旋回半径の逆数)の限界 も変化する。このため、安全を考慮すると 想定される条件変化の範囲内で最も厳しい 件に対応した制限値を設定する必要があり 各条件に適した高い制限値を設定すること できなかった。
 なお、搭乗物が全く無い場合や、任意の荷 を乗せて自動走行するような場合であって 同様の課題が存在する。

 そして、旋回性能の限界を超える旋回要求 搭乗者の操作で入力された場合、設定した 限値の範囲内で旋回するためには、要求値 対して旋回半径を制限して大きくするか、 回速度を制限して小さくする必要がある。
 しかし、旋回半径を急に制限すると乗員の 標走行ルートを大きく外れてしまう可能性 ある。
 一方、旋回速度を急に制限すると、急ブレ キとなり後続車の急接近を招くと共に乗員 不快に感じることになる。

 そこで本発明は、要求された旋回目標と実 の旋回限界を把握し、該旋回限界に対応し 、より少ない制限量(旋回目標にできるだけ 近い状態)で旋回することを第1の目的とする
 また、設定した制限値の範囲内でより走行 的や走行状態に適した、旋回速度と旋回半 の制限を行うことを第2の目的とする。

(1)請求項1記載の発明では、互いに対向配置 れた2つの駆動輪を含む車両であって、目標 度V * と目標曲率γ * を取得する目標走行状態取得手段と、前記取 得した目標速度V * と目標曲率γ * による走行を制御する走行制御手段と、搭乗 物を含めた車両の重心位置を取得する重心位 置取得手段と、前記取得した重心位置に対応 する限界横方向加速度a lim を決定する限界横方向加速度決定手段と、取 得した目標速度V * と目標曲率γ * に対応する目標横方向加速度a * が前記限界横方向加速度a lim を超える場合、前記目標横方向加速度a * が前記限界横方向加速度a lim 以下となるように、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * の少なくとも一方を制限する制限手段と、を 具備したことを特徴とする車両を提供するこ とで前記目的を達成する。
(2)請求項2に記載した発明では、請求項1に記 の車両において、前記制限手段は、前記取 した目標速度V * と目標曲率γ * に対する差が最小となる値に制限する、こと を特徴とする。
(3)請求項3に記載した発明では、請求項1に記 の車両において、前記制限手段は、前記取 した目標速度V * と目標曲率γ * のうち、少なくともその時間変化率が小さい 方を制限する、ことを特徴とする。
(4)請求項4に記載した発明では、請求項1、請 項2又は請求項3に記載の車両において、前 制限手段は、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * の時間変化率が共に所定の閾値以下である場 合に、前記制限手段は、前記取得した目標速 度V * と目標曲率γ * に対する差が最小となる値に制限し、前記取 得した目標速度V * と目標曲率γ * の時間変化率の少なくとも一方が所定の閾値 より大きい場合に、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * のうち、少なくともその時間変化率が小さい 方を制限する、ことを特徴とする。
(5)請求項5に記載した発明では、請求項1に記 の車両において、前記制限手段は、制限後 値で所定時間tだけ走行した後の車両位置が 、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * で前記所定時間tだけ走行した後の車両位置 最も近くなるように、前記取得した目標速 V * と目標曲率γ * のうち少なくとも一方を制限する、ことを特 徴とする。
(6)請求項6に記載した発明では、請求項5に記 の車両において、前記所定時間tは、前記取 得した目標速度V * と目標曲率γ * で走行した場合に所定角度旋回する時間であ ることを特徴とする。
(7)請求項7に記載した発明では、請求項1に記 の車両において、前記制限手段は、前記取 した目標速度V * と目標曲率γ * で旋回した場合の走行軌跡と、制限後の値で 走行した場合の走行軌跡とのズレ量が、所定 のズレ上限値δ Max 以内となるように、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * の少なくとも一方を制限する、ことを特徴と する。
(8)請求項8に記載した発明では、請求項7に記 の車両において、前記制限手段は、前記取 した目標速度V * と目標曲率γ * で旋回した場合の車両軌跡と、前記取得した 目標曲率γ * での旋回が可能になるまで最低減速度b Min で減速しながら旋回をした場合の車両軌跡と のズレ量が、所定のズレ上限値δ Max 以内である場合には、減速度bを前記最低減 度b Min とし、所定のズレ上限値δ Max より大きい場合にはズレ上限δ Max と一致する減速度bとし、前記目標速度V * を前記減速度bにより制限し、前記目標曲率γ * を前記目標速度V * の制限値により目標曲率γ * を制限する、ことを特徴とする。
(9)請求項9に記載した発明では、請求項1から 求項8のうちのいずれか1の請求項に記載の 両において、前記制限手段は、前記目標横 向加速度a * が前記限界横方向加速度a lim となるように、前記取得した目標速度V * と目標曲率γ * の少なくとも一方を制限することを特徴とす る。
(10)請求項10に記載した発明では、請求項1か 請求項9のうちのいずれか1の請求項に記載の 車両において、前記搭乗部に配置された荷重 センサと、前記重量体の高さを測定する高さ センサと、前記荷重センサ及び前記高さセン サの検出値から、搭乗物の重心位置を取得す る搭乗物重心取得手段と、を備え、前記重心 位置取得手段は、前記取得した搭乗物の重心 位置と、予め規定されている車両の重心位置 とから、搭乗物を含めた車両の重心位置を取 得する、ことを特徴とする。
(11)請求項11に記載した発明では、請求項1か 請求項10のうちのいずれか1の請求項に記載 車両において、前記走行制御手段は、目標 度V * と目標曲率γ * を直接の制御対象としてフィードバック制御 により走行を制御することを特徴とする。

 請求項1記載の発明では、目標横方向加速度 a * が限界横方向加速度 alim を超える場合、目標横方向加速度a * が限界横方向加速度a lim 以下となるように、取得した目標速度V * と目標曲率γ * の少なくとも一方を制限する構成としたので 、必要最低限の制限量で旋回することが可能 になる。
 請求項2記載の発明では、取得した目標速度 V * と目標曲率γ * に対する差が最小となる値に、目標速度V * と目標曲率γ * の少なくとも一方を制限する構成としたので 、より走行目的や走行状態に適した制限を行 うことができる。
 請求項3記載の発明では、目標横方向加速度 a * が限界横方向加速度a lim を超える場合、目標横方向加速度a * が限界横方向加速度a lim 以下となるように、取得した目標速度V * と目標曲率γ * のうち、少なくともその時間変化率が小さい 方を制限する構成としたので、必要最低限の 制限量で旋回することが可能になり、また、 より走行目的や走行状態に適した制限を行う ことができる。
 請求項5記載の発明では、目標横方向加速度 a * が限界横方向加速度a lim を超える場合、目標横方向加速度a * が限界横方向加速度a lim 以下で、制限後の値で所定時間tだけ走行し 後の車両位置が、取得した目標速度V * と目標曲率γ * で前記所定時間tだけ走行した後の車両位置 最も近くなるように、取得した目標速度V * と目標曲率γ * のうち少なくとも一方を制限する構成とした ので、必要最低限の制限量で旋回することが 可能になり、また、より走行目的や走行状態 に適した制限を行うことができる。
 請求項7記載の発明では、目標横方向加速度 a * が限界横方向加速度a lim を超える場合、目標横方向加速度a * が限界横方向加速度a lim 以下で、取得した目標速度V * と目標曲率γ * で旋回した場合の走行軌跡と、制限後の値で 走行した場合の走行軌跡とのズレ量が、所定 のズレ上限値δ Max 以内となるように、取得した目標速度V * と目標曲率γ * の少なくとも一方を制限する構成としたので 、必要最低限の制限量で旋回することが可能 になり、また、より走行目的や走行状態に適 した制限を行うことができる。

本実施形態における車両の外観構成図 ある。 制御ユニットの構成図である。 荷重計と座高計の配置説明図である。 旋回走行制御処理の内容を表したフロ チャートである。 旋回時の乗員(搭乗物)の状態を表した 明図である。 搭乗物の種類判別と、それに基づく重 高さの推定についての説明図である。 車両、搭乗者、及び全体の重心位置を したものである。 接地荷重中心点Sと接地荷重中心位置λG F、及び接地荷重偏心度βについての説明図で ある。 第1の最適化の状態を表した説明図であ る。 第2の最適化の状態を表した説明図で る。 第4の最適化の状態を表した説明図で る。 第5の最適化の状態を表した説明図で る。 車両旋回時の車両の力学的状態を表し た説明図である。 旋回走行安定化処理のフローチャート である。 旋回走行時における並進制御、姿勢制 御の状態を表した説明図である。

符号の説明

11 駆動輪
12 駆動モータ
13 搭乗部
131 座面部
14 支持部材
16 制御ユニット
20 制御ECU
21 車体走行制御システム
22 旋回走行目標制限システム
23 旋回限界決定システム
25 重心位置推定システム
30 操縦装置
31 コントローラ
40 走行、姿勢制御用センサ
41 走行速度計
42 加速度計
50 重心位置測定用センサ
51 荷重計
52 座高計
60 アクチュエータ
61 駆動輪アクチュエータ

 以下、本発明の車両における好適な実施の 態について、図1から図15を参照して詳細に 明する。
(1)実施形態の概要
 旋回走行時において、車両の接地荷重中心 が両駆動輪間の外側に移動すると、その車 は横転する。
 ここで、接地荷重中心点は、車両に作用す 遠心力と重力との合力ベクトルFに平行で重 心を通る直線と、地面との交点を表す。この とき、合力ベクトルFの向きは、車両の横方 加速度によって決定され、さらに、横方向 速度は,車両の旋回速度と旋回曲率によって 定される。
 したがって、旋回性能の限界、すなわち、 地荷重中心点の限界位置は、車両の重心位 と横方向加速度(旋回速度と旋回曲率)によ て決定される。

 本実施形態では、横置き二輪車両の旋回 御として、(a)車両重心位置に対応した旋回 界値として限界横方向加速度を決定し、(b) 乗者の旋回要求から求まる目標横方向加速 が、設定した限界横方向加速度を超えてい 場合に、旋回走行目標を制限する。

(a)限界横方向加速度(横方向加速度の限界値) 決定
 搭乗物(乗員や荷物等)の重心位置を推定し これと設計段階で既知である車両の設計重 位置とから、車両全体の重心位置を推定す 。
 そして、推定した車両全体の重心位置と車 の設計値(両駆動輪11a、11bの間隔等)から、 界横方向加速度a lim の値を求める。この、限界横方向加速度a lim は、車速等の走行状態とは関係なく、求める ことができる。
 なお、重心位置の推定については、荷重計 座高計の測定値から、搭乗物(乗員や荷物等 )の着座位置、重量、体型を測定し、その測 値から車両の重心位置(車体対称面からのズ 、高さ)を推定する。

(b)旋回走行目標の制限
 例えば、搭乗者から入力された目標走行状 に基づく目標横方向加速度a * が0.5Gで、求めた限界横方向加速度a lim =0.3Gを超えている場合、搭乗者の要求通りの 御を行うことはできないので、横方向加速 a=a lim =0.3Gとなるように目標走行状態を制限する必 がある。
 本実施形態では、目標走行状態の制限とし 、車速と旋回曲率を次のいずれかの方法に り制限した値で旋回走行を行う。
 なお、入力された目標走行状態が限界横方 加速度a lim 以下であれば、入力値に従って旋回走行を行 う。

(a)目標に対する最適化(第1の最適化)
 第1の最適化では、搭乗者の入力目標(V * 、γ * )に対する最適化を行うもので、理想目標状 (搭乗者が入力した又は外部から指示された 標走行状態)と、現実目標状態(横方向加速 が限界値を超えないよう制限された目標走 状態)の差を最小にする。
(b)目標変化を考慮した最適化(第2の最適化)
 第2の最適化では、理想目標R(V * 、γ * )の時間変化(時間変化率)を考慮して、現実目 標Gを決定する。
(c)乗員の操縦意志を考慮した目標に対する最 適化(第3の最適化)
 第3の最適化では、搭乗者の入力目標(V * 、γ * )と、その変化を考慮した最適化を行う。搭 者によるジョイスティック(コントローラ31) 操作は、その動きの速さによって、乗員意 の強さ(例えば、その要求の緊急性)を判断 きる。そこで、入力目標(V * 、γ * )の時間変化率を求め、その大きさが所定の 値Th(Th V 、Thγ)以下であれば、緊急性無しと判断して 1の最適化を、閾値Thより大きければ、緊急 有りと判断して第2の最適化を行う。
(d)走行位置の最適化(第4の最適化)
 第4の最適化では、一定時間t後の理想目標 置P1と現実目標位置P2との距離が最短となる うに最適化を行う。
(e)走行起動ズレの制約(第5の最適化)
 第5の最適化では、走行軌道ズレの観点から 最適化を行う。
 すなわち、理想目標軌道と現実目標軌道の レが設定制限値以内に収まるように減速さ る減速度bを求め、その値に基づいて最適化 を行う。

(2)実施形態の詳細
 図1は、本実施形態における車両の外観構成 を例示したものである。
 図1に示されるように、車両は、同軸上に配 置された2つの駆動輪11a、11bを備えている。
 両駆動輪11a、11bは、それぞれ駆動モータ12 駆動されるようになっている。

 駆動輪11a、11b(以下、両駆動輪11aと11bを指す 場合には駆動輪11という)及び駆動モータ12の 部には、重量体である荷物や乗員等が搭乗 る搭乗する搭乗部13(シート)が配置されてい る。
 搭乗部13は、運転者が座る座面部131、背も れ部132、及びヘッドレスト133で構成されて る。

 搭乗部13は、駆動モータ12が収納されてい る駆動モータ筐体121に固定された支持部材14 より支持されている。

 搭乗部13の左脇には操縦装置30が配置され ている。この操縦装置30は、運転者の操作に り、車両の加速、減速、旋回、その場回転 停止、制動等の指示を行う為のものである

 本実施形態における操縦装置30は、座面 131に固定されているが、有線又は無線で接 されたリモコンにより構成するようにして よい。また、肘掛けを設けその上部に操縦 置30を配置するようにしてもよい。

 また、本実施形態の車両には、操縦装置3 0が配置されているが、予め決められた走行 令データに従って自動走行する車両の場合 は、操縦装置30に代えて走行指令データ取得 部が配設される。走行指令データ取得部は、 例えば、半導体メモリ等の各種記憶媒体から 走行指令データを読み取る読み取り手段で構 成し、または/及び、無線通信により外部か 走行指令データを取得する通信制御手段で 成するようにしてもよい。

 なお、図1において、搭乗部13には人が搭 している場合について表示しているが、必 しも人が運転する車両には限定されず、荷 だけを乗せて外部からのリモコン操作等に り走行や停止をさせる場合、荷物だけを乗 て走行指令データに従って走行や停止をさ る場合、更には何も搭乗していない状態で 行や停止をする場合であってもよい。

 本実施形態において、操縦装置30の操作 より出力される操作信号によって加減速等 制御が行われるが、例えば、特許文献1に示 れるように、運転者が車両に対する前傾き ーメントや前後の傾斜角を変更することで その傾斜角に応じた車両の姿勢制御及び走 制御を行うようにしてもよい。また、両方 を切り替え可能にしてもよい。

 搭乗部13の下側(座面部131裏面側)には、図示 しないが後述する荷重計51が配置されている
 また、搭乗部の背面(背もたれ部の表側)に 、図示しないが後述する座高計52が配置され ている。

 搭乗部13と駆動輪11との間には制御ユニット 16が配置されている。
 本実施形態において制御ユニット16は、搭 部13の座面部131の下面に取り付けられている が、支持部材14に取り付けるようにしてもよ 。

 図2は、制御ユニット16の構成を表したもの ある。
 制御ユニット16は、車両の走行、姿勢制御 及び本実施形態における旋回時の走行制御 の各種制御を行う制御ECU(電子制御装置)20を えており、この制御ECU20には、操縦装置30、 走行制御用センサ40、重心位置測定用センサ5 0、アクチュエータ60、及びバッテリ等のその 他の装置が電気的に接続されている。

 バッテリは、駆動モータ12、アクチュエ タ60、制御ECU20等に電力を供給するようにな ている。

 制御ECU20は、走行制御プログラム、姿勢 御プログラム、本実施形態における旋回制 処理プログラム等の各種プログラムやデー が格納されたROM、作業領域として使用され RAM、外部記憶装置、インターフェイス部等 備えたコンピュータシステムで構成されて る。

 制御ECU20は、車体走行制御システム21と旋回 限界決定システム23を備えている。
 車体走行制御システム21は、車両の前後方 の加減速を制御する前後加減速機能と、車 を旋回させる旋回機能を実現するように構 され、旋回機能を実現するため旋回走行目 制限システム22を備えている。
 車体走行制御システム21は、コントローラ31 から入力される走行目標、走行制御用センサ 44から供給される両駆動輪11a、11bの車輪回転 及び/又は並進加速度から姿勢制御を行うよ うになっている。

 また、操縦装置30から供給される前後方向 減速、及び旋回の指示に応じて、それを実 する出力指令値を車輪駆動アクチュエータ61 に供給する。
 本実施形態では、両駆動輪11a、11bの回転数 制御することで旋回するようになっている

 旋回走行目標制限システム22は、旋回限 決定システム23で決定した横方向加速度限界 に基づいて、コントローラ31から入力される 旋回走行目標(車速と旋回曲率の目標値)を 限するようになっている。

 旋回限界決定システム23は、重心位置推定 ステム25を備えている。
 重心位置推定システム25は、供給された横 向加速度と荷重分布、座高の測定値から搭 物の種別(人、荷物、無し)を判定し、その種 別に応じて搭乗物の重心ズレと高さを推定す る。
 また重心位置推定システム25は、推定した 心位置ズレと高さから、車両の重心位置を 定する。

 旋回限界決定システム23は、推定した車 の重心位置から限界横方向加速度を求め、 回走行目標制限システム22に供給するように なっている。

 操縦装置30はコントローラ31を備えており、 運転者の操作に基づいて車両走行の目標値を 制御ECU20に供給するようになっている。
 コントローラ31は、ジョイスティックを備 ている。ジョイスティックは直立した状態 ニュートラル位置とし、前後方向に傾斜さ ることで前後進を指示し、左右に傾斜させ ことで左右方向の旋回を指示するようにな ている。傾斜角度に応じて、要求速度、旋 曲率が大きくなる。

 走行制御用センサ40は、車輪回転角を検出 る車輪回転計41と、車両の並進加速度を検出 する加速度計42を備えている。
 走行制御用センサ40による検出値は、車体 行制御システム21に供給される。

 重心位置測定用センサ50は、乗員(搭乗物)の 重心位置を推定(直接推定)するのに使用する 荷重計(又は荷重分布計)と座高計(又は形状 定器)を備えている。
 図3は、荷重計51と座高計52の配置について したものである。
 図3に示されるように、荷重計51は搭乗部13 下側、具体的には座面部131の下面部に配置 れている。
 荷重計51は、シート上の荷重分布(偏心)を測 定し、測定値を重心位置推定システム25に供 するようになっている。

 荷重計51は、搭乗部13の下側(シート構造よ も下側)に配置することで、搭乗部に配置さ た搭乗物だけでなく、背もたれ部132やヘッ レスト133に掛けられた荷物の荷重や、その の箇所に配置された全ての搭乗物の荷重を 定可能に構成されている。
 なお、車体の重量(以下車体重量という)と その重心位置(以下車体重心位置という)は固 定されており、設計時に予め決定してあるの で、荷重計51の計測対象外である。

 本実施形態では、荷重計51として、3軸の成 を測定可能な荷重計を3つ以上配置している 。
 荷重計51は、荷重分布と同時に重量を測定 、それを搭乗物の判別や重心位置調整シス ムの目標位置(角度)設定に使用する。

 搭乗物の重心位置を推定するためには、荷 計を横方向に2つ設置すればよいが、3つ以 の荷重計を設置することで、フェイルセー を実現している(荷重計が1つ壊れても計測可 能)。
 また、3軸成分測定可能な荷重計を使用し、 さらに、横方向加速度と横方向車体傾斜角の データを利用することにより、旋回時や車体 傾斜時での重心ズレの推定も可能にしてもよ い。

 図3に示されるように、座高計52は、背もた 部132及びヘッドレスト133に配設されている
 座高計52は、移動型(走査型)の光センサを鉛 直方向(高さ方向)に走査することで搭乗物の さ(上位の座高)を測定するようになってい 。これにより高精度な測定が可能になる。 定値は、重心位置推定システム25に供給され る。
 なお、複数の固定型センサを鉛直方向に配 し、搭乗物の高さを離散的に測定するよう してもよい。

 なお、本実施形態の座高計52では、複数 光センサを水平方向に配設することで搭乗 が大きく横にずれたときでも高さの測定を 能にするのと共に、1つが故障しても他の光 ンサの測定値を使用することでフェイルセ フを実現している。

 また、本実施形態の座高計52によって、 乗物の形状を推定し、その種類の判別(人、 物、無し)に利用することも可能である。

 なお、重心位置に関する情報が得られるの あれば、他の測定器で代用するようにして よい。
 例えば、図3(d)に示されるように、ねじりト ルク測定器で重心ズレを測定することができ る。ただし、この場合には、搭乗物の質量を 測定するために、荷重計を1つだけ設置する 要がある。

 図2において、アクチュエータ60は、車体走 制御システム21から供給される指令値に従 て駆動輪11を駆動する車体駆動アクチュエー タ61を備えている。
 車体駆動アクチュエータ61は、指令値に従 て、両駆動輪11a、11bを各々独立して駆動制 するようになっている。

 以上のように構成された実施形態としての 両における旋回走行制御処理について、次 説明する。
 図4は、旋回走行制御処理の内容を表したフ ローチャートである。
 制御ECU20の旋回限界決定システム23は、搭乗 物(乗員等)の搭乗(着座)位置、荷重(体重)、形 状(体型)を、重心位置測定用センサ50等の計 器を使って測定する(ステップ11)。

 ついで旋回限界決定システム23の重心位置 定システム25は、得られたデータから搭乗物 の重心ズレ、高さを推定する(ステップ12)。
 まず重心位置推定システム25は、荷重計51か ら得られた搭乗部13上の荷重に基づき、搭乗 の質量を求める。
 図5は、旋回走行時の乗員(搭乗物)およびシ ト(搭乗部13)の力学的状態を表したものであ る。
 図5において、搭乗物質量をm H 、シート質量をm S 、搭乗部全質量をm c =m H +m S 、重力加速度をgとするとき、搭乗部に作用 る力の垂直方向成分(車体中心軸に平行な方 成分)の釣り合いは、次の数式1で表される

(数式1)
 F n =σF n (k) =-m c g

 数式1において、F n (k) はN個の中のk番目の荷重計で計測された引張 重を表し、全荷重計N個の計測値の総和をと ることで、搭乗部に作用する垂直力F n を求める。

 本実施形態では、重心位置推定システム25 、数式1を変形して得られる次の数式2から、 搭乗物質量m H を求める。

(数式2)
 m H =(F n /g)-m S

 この搭乗物質量m H の値は、全体の重心位置評価、搭乗物の種類 判別に利用する。

 次に、重心位置推定システム25は、座高計 ら得られた搭乗物の高さ(座高、荷物の高さ) と、数式2で算出した搭乗物質量m H に基づき、搭乗物の種類(人、荷物、無し)を 別し、その種類に適した方法で搭乗物重心 さh H を推定する。

 図6は、搭乗物の種類の判別、及び、その種 類に基づく重心高さh H の決定について説明したものである。
 図6に示されるように、座高ζ H 、質量m H 、比質量m H H に対して、ある閾値を設定し、それに基づい て搭乗物の種類を判別する。なお、図6及び 下の判別式で用いる各閾値は一例であり、 定される使用環境に応じて修正する。
(a)m H <0.2kg、かつ、ζ H <0.01mの場合、搭乗物は「無し」と判別する 。
(b)m H >8kg、かつ、ζ H >0.3m、かつ、m H H >30kg/mの場合、搭乗物は「人」と判別する
(c)その他の場合(上記(a)、(b)以外の場合)、搭 物は「荷物」であると判別する。

 以上の判別条件において、人の判別条件(b) 体重に対する閾値が8kgと小さいのは、子供 乗車も想定しているためである。また、比 量(単位座高当たりの重さ;m H H )を人の判別条件に加えることで、その判別 正確性を高めることができる。
 なお、小さくて重い荷物(例えば、鉄塊)を せた場合も人と判定しないために、上限と てm H H <p(例えば、80kg/m)を人の判別条件に加えて よい。
 また、各判別条件及び判別値は、一例であ 、想定される使用条件に応じて適宜変更さ 、判別される。

 以下、重心位置推定システム25は、判別し 搭乗物の種類に応じて、搭乗物の重心高さ( 面部131からの高さ)h H を推定する。このように、搭乗物を判別し、 その種類に応じて重心高さh H の推定方法(評価式)を変えることで、より正 な値を推定することができる。

(a)搭乗物を「無し」と判別した場合
 h H =0

(b)搭乗物を「荷物」と判別した場合、重心が 幾何中心よりも下にずれていると仮定し、そ の下方向へのズレの程度を表す偏心度γを用 て、次の数式3から重心高さh H を求める。この偏心度γはあらかじめ設定し 仮定値であり、本実施形態ではγ=0.4として る。
(数式3)
 h H =((1-γ)/2)ζ H

(c)搭乗物を「人」と判別した場合、標準的な 人の体型を基準として、数式4から重心高さh H を求める。
 数式4において、ζ H,0 、h H,0 は座高と重心高さの標準値であり、本実施形 態では、ζ H,0 =0.902m、h H,0 =0.264mとする。
(数式4)
 h H =(ζ H H,0 )h H,0

 なお、ここでは、図6に従って搭乗物の種 類や重心高さを求める場合について説明した が、より複雑な条件や評価式(マップ)を用い 、搭乗物の種類や重心高さを求めるように てもよい。

 次に、重心位置推定システム25は、荷重計51 から得られた搭乗部13上の荷重分布、及び、 れまでに取得した搭乗物情報である搭乗物 量m H と搭乗物重心高さh H に基づいて、搭乗物の横方向の重心ズレλ H を求める。
 図5において、搭乗部に作用する力の水平方 向成分(車体対称面に垂直な方向成分)、およ 、基準軸(車体対称面と荷重計51の設置面と 交線)まわりのモーメントの釣り合いは、次 の数式5で表される。但し、車体傾斜運動(あ いは、搭乗部13の傾斜運動)の角速度による 心力や角加速度による慣性力は無視してい 。
 この数式5において、m c 、λ c 、h c 、η c =h c S は、それぞれ、搭乗部全体の質量、重心ズレ (車体軸から重心までの距離)、重心高さ(座面 部131の座面から重心までの距離)、荷重計基 重心高さ(荷重計51の設置面から重心までの 離)であり、数式6で表される。
 また、数式5および数式6において、m H 、λ H 、h H 、η H =h H S は、搭乗物の質量、重心ズレ、重心高さ、荷 重計基準重心高さ、m S 、λ S 、h S 、η S =h S S は、シートの質量、重心ズレ、重心高さ、荷 重計基準重心高さ、δ S は座面部131の厚さ(荷重計51の設置面から座面 部131の座面までの距離)、gは重力加速度をそ ぞれ表す。
 数式5において、λ H ( ・・ ) の記号「(・・)」は、は2回微分を表す。

(数式5)
 F t =σF t (k) =-m c a-m H λ H (・・)+F et
 T tn =σ(F n (k) Y (k) )
   =F n λ c -F t η c +m H λ H (・・)(η H c )-F et et c )

(数式6)
 m c =m H +m S
 λ c =(m H λ H +m S λ S )/m c
 η c =(m H η H +m S η S )/m c

 数式5において、F n (k) 、F t (k) はN個の中のk番目の荷重計で計測された引張 重、横方向荷重(車体対称面に垂直な方向成 分)であり、全荷重計N個で総和をとることで 搭乗部に作用する垂直力F n 、横力F t を求める。また、Y (k) はk番目の荷重計の取り付け位置(車体対称面 らの距離)であり、これとF n (k) との積の総和をとることで、搭乗部に作用す るモーメントT tn を求める。

 同数式5において、aは搭乗物が実際に受け いる横方向加速度であり、これらの値を使 することにより、旋回走行時にも搭乗物の 心ズレや重心高さを求めることができる。
 この数式5で使用する横方向加速度aは、走 制御用センサ40の計測値から求める。

 同数式5において、F et は外力を表し、人が外から押す力や風による 力に相当する。また、η et は外力の作用点高さ(荷重計51の設置面からの 高さ)である。これらの値は未知であり、搭 物の重心ズレλ H を合わせて、数式5の2つの式は3つの未知数を 含む。
 従って、外力F et とその作用点高さη et の両者を正確に求めることはできないが、そ の一方の値を仮定すれば、もう一方の値を求 めることができる。例えば、空力中心(空気 抗の作用点)の想定位置を作用点高さη et として仮定すれば、その空気抵抗の大きさF et を評価でき、その値を走行、姿勢制御に利用 することもできる。

 本実施形態では、外力の影響は小さいと仮 し、F et =0とする。これにより、数式5の2つの式を、 下の数式7の形に変えることができる。この 式7は代数式であり、簡易で安定した搭乗物 重心ズレλ H の評価が可能である。
 すなわち、重心位置推定システム25は、こ までに求めた搭乗物の重量m H と重心高さh H を用いて、数式7(および数式6)に基づき、搭 物の重心ズレλ H を求める。

(数式7)
 λ H =(m c λ c -m S λ S )/m H
 λ c ={F t η c +F Ha H c )+T tn }/F n
 F Ha =F t +m c a

 搭乗物の力学的パラメータである質量mH、 心ズレλH、重心高さhHを推定した後、旋回限 界決定システム23は、車体と搭乗物(乗員等) 合わせた車両の全体の重心位置を求める(ス ップ14)。
 図7は、車両、搭乗者、及び全体の重心位置 を表したものである。
 旋回限界決定システム23は、車両全体の質 m、重心ズレλ、重心距離lを、次の数式8から 求める。
 数式8において、m H 、λ H 、h H 、l H =h H +l 0 は、搭乗物の質量、重心ズレ、重心高さ、重 心距離をそれぞれ表す。l 0 は、車体の前後方向の回転中心(車軸)から座 部131の座面までの距離である。また、m CB 、l CB は車体の質量、重心距離をそれぞれ表す。な お、車体の重心ズレはλ CB =0とする。

(数式8)
 m=m H +m CB
 λ=m H λ H /m
 l=(m H l H +m CB l CB )/m

 次に、旋回限界決定システム23は、求めた 両全体の重心位置(質量m、重心ズレλ、本重 距離l)から、限界横方向加速度a lim =a Min 、a Max を算出する(ステップ14)。
 ここで、横方向加速度は、右折時の方向(車 両から見て左方向)を正、左折時の方向(車両 ら見て右方向)を負としており、一般にa Min は左折時の限界横方向加速度を表し、a Max は右折時の限界横方向加速度に相当する。

 図8は、横方向加速度aと車両全体重心位置 ら決まる接地荷重中心点S、接地荷重中心位 λ GF 、及び接地荷重偏心度βについて表したもの ある。
 図8に示されるように、接地荷重中心点Sは 遠心力と重力の合力ベクトルFと平行で重心 通る直線と地面との交点であり、車体中心 に対する点Sの相対位置(ズレ)を接地荷重中 位置λ GF とする。
 また、λ GF を半トレッドD/2で無次元化した値が、接地荷 重偏心度βであり、-1<β<1ならば、接地荷 重中心点は両駆動輪11の間に存在する。

 接地荷重偏心度β、および、接地荷重中心 置λ GF は、次の数式9で表される。
 数式9において、R W はタイヤ接地半径、Dはトレッド(両駆動輪11a 11b間の距離)、λは車両全体重心ズレ、lは車 両全体重心距離、aは現在の横方向加速度、g 重力加速度である。

(数式9)
 β=λ GF /(D/2)
 λ GF =λ-(a/g)(l+R W )

 この数式9から得られる接地荷重偏心度βの により、車両の安定度を次のように判定す ことができる。
 (a)β=0…中立状態;最も安定な状態
 (b)|β|>1…車体横転;接地荷重点のずれてい る方向に車体が横転する
 (c)|β|>β slip …片輪スリップ;接地荷重点から遠い側の駆 輪がスリップする(結果的に車両がスピンし 横転する可能性が高い)

 片輪スリップの条件(c)における閾値である スリップ開始荷重偏心度β slip は、次の数式10で表される。
 数式10において、a BC は重心位置での横方向加速度、gは重力加速 、R w はタイヤ接地半径、mは車両の質量である。 た、τ w* は接地荷重中心点から遠い側の駆動輪の駆動 トルクを表す。

(数式10)
 β slip =1-{1/√(1-(a/μg) 2 )}|τ w* |/{(1/2)μmgR w }

 数式10において、μはタイヤ路面間の摩擦 係数である。本実施形態では、予め設定した 想定値を与えるが、計測器による測定値やオ ブザーバなどによる推定値を用いてもよい。

 数式10から明らかなように、β slip は1よりも小さい。すなわち、駆動トルクを えている場合には、車両が横転する前に片 がスリップする。そこで、本実施形態では このスリップ限界β slip を安定限界とする。

 そして、旋回限界決定システム23は、数式9 び数式10の3式を解くことによって、限界横 向加速度a lim =a Min 、a Max を求める。
 ただし、数式9、数式10による連立方程式は 的に解くことができないため、ニュートン などの陰的な繰り返し計算法、もしくは,あ らかじめ数値計算で求めておいた数値解のテ ーブルによって、限界横方向加速度を決定す る。

 旋回限界決定システム23は、以上により求 た限界横方向加速度a lim =a Min 、a Max を旋回走行目標制限システム22に供給する。

 車両全体の重心位置の推定値から限界横方 加速度a lim が求まると、旋回走行目標制御システム22で 、旋回目標値の制限を含めた目標走行状態 決定する(ステップ15~ステップ18)。

 まず旋回走行目標制御システム22は、乗員 入力操作に基づいて、目標走行状態を設定 る(ステップ15)。すなわち、コントローラ31 ら入力される走行目標の入力値に対応する 標車速V * と目標曲率γ * を目標走行状態として設定する。

 ついで旋回走行目標制御システム22は、設 した目標車速V * と目標曲率γ * から目標横方向加速度a * * V *2 を求める(ステップ16)。
 そして、目標横方向加速度a * が、ステップ14で決定した限界横方向加速度a Min 、a Max を超えてないか(a Min <a * <a Max ?)を判断する(ステップ17)。

 目標横方向加速度a * が限界横方向加速度a lim (=a Min 、a Max )の範囲内にある場合(ステップ17;Y)、搭乗者 操作による目標車速V * と目標曲率γ * を制限することなく、ステップ19に移行する
 なお、この場合の走行目標(現実目標)は、V * ~=V * 、γ * ~=γ * となる。

 一方、目標横方向加速度a * が限界横方向加速度a lim (=a Min 、a Max )を超えてる場合(ステップ17;N)、旋回走行目 制御システム22は、目標走行状態(V * 、γ * )を制限して修正する(ステップ18)。すなわち 横方向加速度a * ≒限界横方向加速度a lim (=a Min 、a Max )となるように目標走行状態(V * 、γ * )を、(a)~(e)のいずれかの方法により最適化す 。
 (a)~(c)による最適化は、要求された目標走行 状態(V * 、γ * )に対する最適化を行うもので、搭乗者の操 (意志)に沿った最適化となる。
 (c)、(e)による最適化は、要求された目標走 状態で走行した場合の走行状態及びその履 に対する最適化を行うものである。

 (a)~(c)による最適化では、横方向加速度a * ≒限界横方向加速度a lim (=a Min 、a Max )となるように、理想目標走行状態(V * 、γ * )を現実目標走行状態(V * ~、γ * ~)に制限している。
 これにより、旋回速度と旋回曲率を必要以 に制限しないので、車両の旋回性能を限界 で最大限利用することができる。

 以下の説明において、理想目標は搭乗者の 力目標(V * 、γ * )を意味し、理想目標状態は、理想目標に従 て走行した後の位置、速度等を意味するも とする。
 また、現実目標は、目標横方向加速度a * が限界横方向加速度a lim となるように理想目標を制限した値(V * ~、γ * ~)を意味し、現実目標状態は、現実目標に従 て走行した後の位置、速度等を意味するも とする。

(a)第1の最適化
 この第1の最適化では、搭乗者の入力目標(V * 、γ * )に対する最適化を行うもので、理想目標状 と、現実目標状態の差を最小にする。
 図9は、第1の最適化の状態を表したもので る。
 この図9において、旋回限界曲線Aは、ステ プ14で決定した限界横方向加速度a lim によって決まる曲線である。この旋回限界曲 線の原点側(左下側)の領域が安定状態であり 原点から離れる側(右上側)の領域が不安定 領域(制限が必要な領域)である。

 図9に示すように、入力された理想目標R0 安定領域に存在する場合(ステップ17;Y)、最 化を行わず、入力された理想目標での旋回 御を行う。

 一方、理想目標R1、R2が不安定領域に存在す る場合、これを旋回走行の安定限界である旋 回限界曲線A上の現実目標G1、G2に最適化する
 この最適化では、例えば、理想目標R1にで るだけ近い状態のG1を旋回限界曲線A上で選 する。

 すなわち、旋回走行目標制御システム22は 理想目標R(V * 、γ * )と旋回限界a lim を取得し、次の連立方程式(数式11)に基づい 、現実目標G(V * ~、γ * ~)を求める。

(数式11)
 xy 2 =c
 2x(x-x 1 )=y(y-y 1 )
 x=γ * ~/γ 0 、x 1 * 0 、c=a lim /(γ 0 V 0 2 )
 y=V * ~/V 0 、y 1 =V * /V 0

 数式11中のV 0 、γ 0 は、それぞれ旋回速度、曲率の基準値であり 、例えば、操縦系における各々の設定最大値 を与える。なお、これらの値を変更して、速 度と曲率の重みを変えることもできる。
 数式11の数値解法としては、例えばニュー ン法(繰り返し計算法)を用いる。なお、一つ 前の時間ステップでの解を初期値として与え ることにより、その収束安定性および収束速 度を高めることができる。

 本実施例において旋回走行目標制御システ 22は、数値計算による決定法を用いるが、 記の連立方程式の解を、パラメータx 1 、y 1 、cの関数としてテーブルで予め与えておき それを用いて現実目標状態を決定してもよ 。

 このように、搭乗者が入力した理想目標(V * 、γ * )に対する第1の最適化は、搭乗者の操縦によ 通常走行時に適しており、搭乗者の意思に じた走行状態を実現することができる。
 また、操縦者の責任において、走行目標の 当性、安全性が保障される。
 さらに、アルゴリズムがシンプルであり、 答性やロバスト性が高い。

(b)第2の最適化
 この第2の最適化では、理想目標R(V * 、γ * )の時間変化(時間変化率)を考慮して、現実目 標Gを決定する。
 図10は第2の最適化の状態を表したものであ 。
 図10に示されるように、第2の最適化では、 えば、ある時間内に安定領域にあった理想 標R11から不安定領域の理想目標R12に移動し ものとする。この場合、理想目標車速の変 量δV * よりも、理想旋回曲率の変化量δγ * の方が大きく、この変化は、車速よりも曲率 を大きくしたいという搭乗者の走行意志の現 れと判断することができる。
 そこで、旋回走行目標制御システム22は、 化後の理想目標の両要素V * 、γ * のうち、変化量の大きい要素は制限せず、変 化量の小さい要素を優先的に制限することで 、旋回限界曲線A上の現実目標Gを決定する。

 例えば、上記例のように理想目標が所定時 内にR11からR12に変化した場合には、搭乗者 旋回曲率の増加を強く希望していると判断 て、旋回曲率は入力された値γ * を維持(γ * ~=γ * )しながら、車速V * を制限(V * ~=V * ´<V * )する。
 また、理想目標がR21からR22に変化した場合 搭乗者は車速の増加を強く希望しえいると 断して、車速は入力された値V * を維持(V * ~=V * )しながら、旋回曲率γ * を制限(γ * ~=γ * ´<γ * )する。

 以上を纏めると、図10(b)に示されるように 入力操作による理想目標状態(V * 、γ * )の時間変化の方向に従って、以下の通り最 化が行われる。
 旋回走行目標制御システム22は、まず、理 目標V * 、γ * と、旋回限界a lim を取得し、理想目標の時間変化δV * 、δγ * を次の数式12から求める。

(数式12)
 δV *(k) =V *(k) -V *(k-n)
 δγ *(k) *(k) *(k-n)

 数式12において、時間変化は、現在の理想 標V *(k) 、γ *(k) と、参照時間T=nδtだけ前の理想目標V *(k-n) 、γ *(k-n) の差によって評価する。
 参照時間Tの中で、理想目標の変化量が小さ い場合、それ以前の値を考慮して、変化の向 きを決定する。

 次いで旋回走行目標制御システム22は、時 変化の方向から次の通り理想目標V * 、γ * を制限する。
(イ)右下への変化(δV * ≦0、且つ、δγ * ≧0)の場合
 例えば、カーブ入口での操縦等が想定され この場合、「曲がりたい」という搭乗者の 求であると判断し、目標曲率を優先し、目 速度のみを制限する。
 すなわち、旋回走行目標制御システム22は 現実目標曲率をγ * ~=γ * とする。
 また、現実目標速度を、V * ~=√(a lim * )、により求める。

(ロ)左上への変化の場合(δV * ≧0、且つ、δγ * ≦0)
 例えば、カーブ出口での操縦等が想定され 「加速したい」という搭乗者の要求である 判断し、目標速度を優先し、目標曲率のみ 制限する。
 すなわち、旋回走行目標制御システム22は 現実目標速度をV * ~=V * とする。
 また、現実目標曲率を、γ * ~=a lim /V *2 、により求める。

(ハ)その他の場合、(理想目標速度、曲率とも に増加または減少)
 この場合、変化の向き(角度)に応じて目標 度と目標曲率を制限し、次の数式13から現実 目標速度V * ~(=x)と現実目標曲率γ * ~(=y)を求める。
 但し、数式13において、δx=δγ * 0 、δy=δV * /V 0 、である。

(数式13)
 xy 2 =c
 δx(x-x 1 )=δy(y-y 1 )

 このように、搭乗者が入力した理想目標(V * 、γ * )に対する第2の最適化は、入力操作の変化を 乗者の強い走行意思として判断している。
 このため特に搭乗者の緊急操作時(例えば、 衝突回避時の急な旋回指令)に適切な走行状 を実現できる。

 なお、説明した実施形態では、理想目標(V * 、γ * )の時間変化から、上記(イ)~(ハ)の3つの時間 化状態に応じて現実目標Gを決定する場合に いて説明したが、変化率が小さい方の理想 標(V * 、γ * )を制限することで2つの時間変化状態に応じ 現実目標Gを決定するようにしてもよい。
 すなわち、理想目標R(V * 、γ * )のうち、時間変化率δV * 、δγ * が小さい方を制限して旋回限界曲線A上の値 する。

(c)第3の最適化
 この第3の最適化では、搭乗者の入力目標(V * 、γ * )と、その変化を考慮した最適化を行うもの ある。
 搭乗者による入力目標(V * 、γ * )はジョイスティック(コントローラ31)の操作 よるが、その動きが速い場合には緊急意志 表れであると判断することができる。
 そこで、入力目標(V * 、γ * )の変化率を求め、所定の閾値Th(Th V 、Thγ)以下であれば、緊急性無しと判断して 1の最適化(目標値に対する最適化)を行う。
 一方、変化率が閾値Thより大きければ、緊 性有りと判断して第2の最適化(入力目標の変 化を考慮した最適化)を行う。
 閾値Thとの比較は、車速の閾値Th V 、曲率の閾値Thγともに行い、いずれか一方 大きい場合には緊急性有りと判断する。

 なお、一旦第2の最適化の制御に入ったら、 入力目標値が制限値以内に収まるまで、継続 して第2の最適化によるの制限方法を適用す 。
 これは、ジョイスティックを素早く動かし 場合には、緊急性があるため暫くはそのま の位置を維持すると推定され、この場合、 化率が0となり第1の最適化に戻ってしまう とを防止するためである。

(d)第4の最適化
 この第4の最適化では、所定時間後の走行位 置の観点から最適化を行う。
 図11は、理想目標状態で走行した場合の車 位置と第4の最適化による車両位置について したものである。
 この図4に示されるように、ある時点におけ る車両位置P0から、搭乗者の入力目標((V * 、γ * )に従って所定の一定時間tだけ旋回走行した 仮定した場合の車両位置を理想目標位置P1 する。また、入力目標(V * 、γ * )を制限した現実目標(V * ~、γ * ~)で同じ一定時間tだけ旋回走行したと仮定し た場合の車両位置を現実目標位置P2とする。

 第4の最適化において、旋回走行目標制御シ ステム22は、理想目標(V * 、γ * )と、旋回限界a lim を取得し、一定時間t後の理想目標位置P1と現 実目標位置P2との距離が最短となるように現 目標(V * ~、γ * ~)を決定する。
 両位置P1とP2の距離が最短となる条件(近似 )は、次の数式14で表される。

(数式14)
 V * ~=(α/(1-β))V * 、γ * ~=a lim /(V * ~) 2
 α=a lim /a *
 β={2(8-π)/(π 2 -2(1+3α)π+32)}(1-α)

 本実施形態において一定時間tは、理想目標 (V * 、γ * )状態で車両が所定角度θ=90度だけ旋回するの に要する時間としている。
 なお、所定角度θを小さく(例えば、30度、45 度)設定することも可能で、その場合、より かな制御を行うことが可能になる。
 また、本実施例において、数式14では、両 P1、P2のズレに対して1次近似で最短条件を求 めているが、方程式を陰的に解くことによっ て、その厳密解を求めるようにしてもよい。

 この第4の最適化によれば、理想目標に基 づいて計算される時々刻々の目標位置に対し て実際の車両の位置ができるだけ近づくよう に制限するので、例えば、周りに同様の走行 をする車がある場合、集団走行する場合に適 している(軌道だけではなく、時刻も考慮し いるため、追突されない)。

(e)第5の最適化
 この第5の最適化では、走行軌道ズレの観点 から最適化を行う。第5の最適化は、例えば 決められた軌道上を単独で走行する場合に している。
 図12は、第5の最適化について表したもので る。
 図12に示されるように、第5の最適化では、 想目標軌道と現実目標軌道のズレが設定制 値以内に収まるように減速させる。
 理想目標曲率γ * での旋回が可能になるまで、最低減速度b Min (設定値)で減速しながら旋回するとき、両軌 のズレが軌道ズレ上限δ Max 以内であれば、あらかじめ設定した最低減速 度b Min で減速させる。
 一方、両軌道のズレが軌道ズレ上限δ Max より大きければ、軌道ズレ上限δ Max と一致するように減速度を設定する。

 すなわち、旋回走行目標制御システム22は まず、あらかじめ設定されている軌道ズレ 限δ Max と、最低減速度b MIn を取得すると共に、理想目標V * 、γ * と、旋回限界 lim を取得する。
 ここで、軌道ズレ上限δ Max の値として、本実施形態では車体幅分の距離 が設定されている。また、最低減速度b MIn は、例えば、0.05Gが設定されているが、変更 能に構成してもよい。
 そして旋回走行目標制御システム22は、最 減速度b Min で旋回した時の軌道ズレδを数式15に従って める。

(数式15)
 δ=(1/γ){(1-α)/α 2 }(1-cosθ)
 α=a lim 、θ=a lim /b Min (1-√α)

 次いで、旋回走行目標制御システム22は、 式15で求めた軌道ズレδが軌道ズレ上限δ Max 以下か判断し、以下であれば(δ≦δ Max )減速度bを最低減速度b Min とする。
 一方、軌道ズレδがδ Max より大きければ(δ>δ Max )、軌道ズレδがδ Max となる減速度bを次の数式16から算出する。

(数式16)
 b={(1-√α)/cos -1 {1-(α 2 /(1-α))γ * δ}}a lim

 次に旋回走行目標制御システム22は、求め 減速度bに応じた現実目標速度V * ~を数式17から算出し、また、現実目標曲率γ * ~を数式18から算出する。
 なお、数式17、18において、δtは時間刻みを 表し、一つ前の時間ステップにおける現実目 標速度V * ~ (k-1) から現在の現実目標速度V * ~ (k) を決定する。

(数式17)
 V * ~ (k) =V * ~ (k-1) -δt・b

(数式18)
 γ * ~ (k) =a lim /V * ~ (k)2

 以上説明した第5の最適化では、走行軌道の ある程度のズレを許容することにより、不必 要な急減速を無くすことができる。
 また、乗員が不快に感じない程度の減速度 して最低減速度b Min を設定することで、必要以上の軌道ズレを防 ぐことができる。

 なお、説明した第5の最適化では、一定の 減速度を設定しているが、ジャーク(加速度 時間変化率)を考慮し、乗員が不快に感じる 速度変化の周波数成分を除去するようにし もよい。

 また、説明した第5の最適化では、軌道ズレ 上限値δ Max として予め設定した値を用いるが、以下のよ うに、走行環境や走行状況に応じて逐次変え るようにしてもよい。
 イ)走行平均速度による変更
 平均速度が大きい程、走行している道路幅 広いと推定できるので、軌道ズレ上限δ Max を大きくする(ズレ許容量を大きくする)。
 ロ)センサによる周囲の物体検知に基づく変 更
 車両周囲の物体を検知し、所定距離L1内に 体を検知できない場合には、軌道ズレ上限δ Max =L2(<L1、例えば、L2=L1/2)とする。

 ハ)ナビ情報(道路幅、交通量など)の利用
 車両がナビゲーション装置を備えている場 、道路幅や交通量といったナビ情報を使用 、走行中の道路幅が広い程、又は/及び、交 通量が少ない程、軌道ズレ上限δ Max を大きくする。
 ニ)搭乗者の入力操作による設定値の変更
 操縦措置30等の入力装置からの入力操作に って、搭乗者の希望する軌道ズレ上限δ Max に変更できるようにする。

 以上説明したように旋回走行目標制御シス ム22で目標走行状態が決定すると、車体走 制御システム21は、旋回走行の制御を行う( テップ19、20)。
 まず、車体走行制御システム21は、車輪回 計41や加速度計42を使って、実際の走行状態 測定する(ステップ19)。

 図13は、車両が旋回するときの車両の力学 状態を表したものである。
 横方向加速度aの測定は、(1)各輪(駆動輪11a 11b)の車輪回転計41(角度計)の測定値を使用す る方法と、(2)加速度計42の測定値を使用する 法がある。

(1)車輪回転計41の測定値を使用する方法
 この方法は、左右駆動輪11a、11bの回転速度 ら、横方向加速度a (1) を算出する。
 図13(a)に示されるように、乗員からみて右 の駆動輪11aの回転周速度をV R 、左側の駆動輪11bの回転周速度をV L とすると、乗員(搭乗物)の重心位置Pにおける 横方向加速度a (1) は次の数式19及び数式20から算出される。

(数式19)
 a (1) =V・δV/D

(数式20)
 V=V M -(Y G /D)δV
 V M =(1/2)(V R +V L )
 δV=V R -V L
 V R =R W ω WR
 V L =R W ω WL

 なお、数式20における各記号は次の通りで る。
 ω WR :右輪回転角速度
 ω WL :左輪回転角速度
 R W :タイヤ接地半径
 D:トレッド
 Y G :実質重心位置のズレ(1つ前の時間ステップで の値を利用)

(2)加速度計42の測定値を使用する方法
 この方法は、加速度計42で測定される並進 速度の値から、横方向加速度a~ (2) を算出する。
 図13(b)に示されるように、車体中心軸をn軸 車体対称面に垂直な軸をt軸とし、a n ,a t をセンサ加速度(各軸方向成分)とするとき、 ンサ取り付け位置における横方向加速度a~ (2) は、a~ (2) =a t となる。

 本実施形態では、車輪回転計41の測定値に づく横方向加速度a (1) と、加速度計42の測定値に基づく横方向加速 a~ (2) から、横方向加速度aを決定する。
 車体走行制御システム21は、駆動輪がスリ プしているか否かを判断し、スリップして ないと判断した場合には、車輪回転計41の測 定値に基づく値a (1) を横方向加速度aとし、スリップしていると 断した場合には、加速度計42の測定値に基づ く値a~ (2) を横方向加速度aとする。

 以下に、本実施形態における駆動輪のスリ プ判断について説明する。
 初めに、車体走行制御システム21は、次の 式22によって、車輪回転計41の測定値に基づ 乗員重心位置での横方向加速度a (1) から、センサ取り付け位置での横方向加速度 a~ (1) を算出する。

(数式22)
 a~ (1) =a (1) +(δV/D) 2 Y G

 そして、車体走行制御システム21は、δa=a~ (1) -a~ (2) を求め、δaの絶対値が所定の閾値ε以上であ 場合には、スリップが生じていると判断す 。
 なお、右駆動輪11aと左駆動輪11bのどちらが リップしているかについては、次の数式23 より判断できる。

(数式23)
 a~ (1) -a~ (2) ≧ε  …右側の駆動輪11aがスリップ
 a~ (1) -a~ (2) ≦-ε …左側の駆動輪11bがスリップ

 ついで、車体走行制御システム21は、状態 ィードバック制御により、目標走行状態に づけることで、安定した旋回走行を実現さ る(ステップ20)。
 図14は、旋回走行安定化処理(ステップ20)の ローチャートである。
 車体走行制御システム21は、ステップ19で測 定したタイヤの回転速度vと横方向加速度aを 得し(ステップ21)、車両の実際の旋回曲率γ( =a/V 2 )と、旋回速度Vを計算する(ステップ22)。

 一方、車体走行制御システム21は、限界横 向加速度a lim に応じて搭乗者の入力目標(V * 、γ * )に基づいて決定した現実目標速度V * ~と現実目標曲率γ * ~を、目標旋回速度、目標旋回曲率に設定す (ステップ23)。
 なお、a Min <a * <a Max である場合(ステップ17;Y)の現実目標はV * ~=V * 、γ * ~=γ * である。

 このように、本実施形態では、走行目標で る現実目標速度V * ~と現実目標曲率γ * ~を直接の制御対象としてフィードバック制 しているので、差動トルク指令によるフィ ドフォワード制御(トルクを直接の制御対象 し、速度と曲率を間接的に制御)に比べ、走 行が安定、制限が容易で確実になる。

 ついで、車体走行制御システム21は、目 と実際の旋回曲率、旋回速度の差を評価し( テップ24)、その差が小さくなるように、各 動輪11a、11bの駆動トルクをフィードバック 御により補正し(ステップ25)、リターンする 。

 車体走行制御システム21では、操縦者の入 操作量から決定した(限界に対する修正済の )速度目標V * ~、曲率目標γ * ~と、走行制御用センサ40の計測値から決定し た速度V、曲率γとから、各駆動輪11a、11bのト ルク指令値を次の数式24により算出する。
 数式24において、τ R が右輪トルク指令値を、τ L が左輪トルク指令値を表す。
 また、τ~は並進、姿勢制御トルクを表し、 dif は回転制御トルクを表し、数式25で表される 数式25において、(・ ) は一回微分を意味する。
 図15は、旋回走行時における並進制御、姿 制御の状態を表したものであり、数式24、25 おける各記号は図15で示す通りである。

(数式24)
 τ R =(1/2)(τ - dif )
 τ L =(1/2)(τ - dif )

(数式25)
 τ - =-K V (V-V * )-Kθθ-Kθ(・ ) θ(・ )
 τ dif =-Kγ(γ-γ * )

 数式25において、右辺第1項の-K V (V-V * )が速度(並進)のフィードバック制御を、第2 の-Kθθ-Kθ(・ ) θ(・ ) が姿勢のフィードバック制御を表す。

 数式24、25において、各フィードバックゲイ ンK V 、Kθ、Kθ(・ ) 、Kγは、例えば極配置法によって設定してお く。場合によっては、微分ゲイン(姿勢角以 にも)や積分ゲインを導入してもよい。

 以上説明した実施形態では、1軸の二輪車 における旋回走行制御を例に説明したが、本 発明では、三輪以上の車両に対しても、横方 向限界加速度を超える入力(要求)に対する最 化を含め、本実施形態における旋回走行制 の方法を適用することが可能である。

 以上説明した実施形態の車両では、車両全 の重心位置を推定し、その重心位置に応じ 限界横方向加速度a lim (=a Min 、a Max )を求め、搭乗者が要求する目標走行状態(V * 、γ * )から求めた横方向加速度a * が、限界横方向加速度a lim を超えない範囲で旋回走行を行う。
 すなわち、限界横方向加速度a lim を超えない目標走行状態(V * 、γ * )が搭乗者によって入力(要求)された場合には 、その目標走行状態で旋回走行する。
 一方、限界横方向加速度a lim を超える目標走行状態(V * 、γ * )が入力された場合には、(a)~(e)の最適化によ て、横方向加速度a=限界横方向加速度a lim (=a Min 、a Max )となるように、目標走行状態(V * 、γ * )を現実走行状態(V * ~、γ * ~)に制限している。
 これにより、旋回速度と旋回曲率を必要以 に制限しないので、車両の旋回性能を限界 で最大限利用することができる。

 なお、説明した実施形態では、横方向加速 a=限界横方向加速度a lim となるように、目標走行状態(V * 、γ * )を現実走行状態(V * ~、γ * ~)に制限する場合について説明したが、限界 方向加速度a lim の範囲内であればよい。
 ただし、車両の旋回性能の利用範囲を従来 りも大きくするために、制限後の横方向加 度を所定の閾値a k (例えば、a k =a lim -0.05G)以上とする。

 また、以上説明した実施形態では、コン ローラ31としてジョイスティックを備え、 の前後傾斜量を目標速度に、左右傾斜量を 標曲率に対応させているが、他の状態量を 応させてもよい。例えば、前後傾斜量を目 前後加速度に、左右傾斜量を目標旋回角速 に対応させてもよい。この場合には、目標 行状態設定時(図4のステップ15)で、目標とす る前後加速度と角速度を速度と曲率に変換す ればよい。あるいは、加速度と角速度を目標 走行状態とすることにより、以上で説明した 実施形態と同様の処理を行ってもよい。