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Title:
ACRYLONITRILE COPOLYMER AND METHOD FOR MANUFACTURING THE SAME, AND ACRYLONITRILE COPOLYMER SOLUTION AND POLYACRYLONITRILE PRECURSOR FIBER FOR CARBON FIBER AND METHOD FOR MANUFACTURING THE SAME
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/145051
Kind Code:
A1
Abstract:
Provided are an acrylonitrile copolymer that is excellent in thermal stability as a solution (spinning dope) when dissolved in an amide solvent and can form dense polyacrylonitrile fiber suitable for manufacturing carbon fiber, an acrylonitrile copolymer solution obtained by dissolving the acrylonitrile copolymer in an amide solvent, and a method for manufacturing polyacrylonitrile precursor fiber for carbon fiber, the polyacrylonitrile precursor fiber using the acrylonitrile copolymer solution.  An acrylonitrile copolymer contains 1.0 × 10-5 equivalent/g or more of sulfonic acid groups derived from a polymerization initiator and the value (equivalent ratio) of (the content of sulfuric acid groups derived from the polymerization initiator/the total content of the sulfonic acid groups and the sulfuric acid groups) is 0.4 or less.  An acrylonitrile copolymer solution contains the acrylonitrile copolymer and an amide solvent.

Inventors:
HIROTA NORIFUMI (JP)
SINMEN YUUSUKE (JP)
MATSUYAMA NAOMASA (JP)
NII TAKESHI (JP)
SHIBATANI HARUMI (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/058840
Publication Date:
December 03, 2009
Filing Date:
May 12, 2009
Export Citation:
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Assignee:
MITSUBISHI RAYON CO (JP)
HIROTA NORIFUMI (JP)
SINMEN YUUSUKE (JP)
MATSUYAMA NAOMASA (JP)
NII TAKESHI (JP)
SHIBATANI HARUMI (JP)
International Classes:
C08F220/44; C08F4/40; D01F6/18
Domestic Patent References:
WO1999010572A11999-03-04
Foreign References:
JPH11140131A1999-05-25
JP2008088616A2008-04-17
JP2008075205A2008-04-03
JP2007291580A2007-11-08
JP2008142446A2008-06-26
JPH0913220A1997-01-14
JPH11200140A1999-07-27
Other References:
See also references of EP 2281847A4
Attorney, Agent or Firm:
SHIGA Masatake et al. (JP)
Masatake Shiga (JP)
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Claims:
 重合開始剤に由来するスルホン酸基を1.0×10 -5 当量/g以上含有し、
 (重合開始剤に由来する硫酸基の含有量/前記スルホン酸基および前記硫酸基の合計量)の値(当量比)が0.4以下であるアクリロニトリル系共重合体。
 アクリロニトリルとビニル系単量体とを、
 過硫酸塩及び亜硫酸塩を重合開始剤に用いて共重合する請求項1に記載のアクリロニトリル系共重合体の製造方法。
 アクリロニトリルとビニル系単量体とを、
 過硫酸塩及び亜硫酸塩を重合開始剤に用いて共重合した後、
 共重合体中の硫酸基を加水分解する請求項1に記載のアクリロニトリル系共重合体の製造方法。
 共重合体溶液中で共重合体の硫酸基を加水分解する請求項3に記載のアクリロニトリル系共重合体の製造方法。
 請求項1記載のアクリロニトリル系共重合体及びアミド系溶剤を含むアクリロニトリル系共重合体溶液。
 前記アミド系溶剤が、ジメチルアセトアミド及び/又はジメチルホルムアミドである請求項5記載のアクリロニトリル系共重合体溶液。
 請求項5又は6記載のアクリロニトリル系共重合体溶液を紡糸原液として紡糸する工程を有する炭素繊維用ポリアクリロニトリル系前駆体繊維の製造方法。
 アクリロニトリル系共重合体溶液を紡糸原液として紡糸して凝固糸とし、
 前記凝固糸を処理して得られる炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維において、
 前記前駆体繊維中のアクリロニトリル系共重合体が請求項1に記載のアクリロニトリル系共重合体である炭素繊維用アクリロニトリル系前駆体繊維。
Description:
アクリロニトリル系共重合体、 の製造方法、アクリロニトリル系共重合体 液及び炭素繊維用ポリアクリロニトリル系 駆体繊維及びその製造方法

 本発明は、ポリアクリロニトリル系繊維、 に炭素繊維の前駆体繊維(プレカーサ)の製 に適したアクリロニトリル系共重合体、そ 製造方法、その溶液、炭素繊維用ポリアク ロニトリル系前駆体繊維及びその製造方法 関する。
 本願は、2008年5月30日に、日本に出願された 特願2008-142446号に基づき優先権を主張し、そ 内容をここに援用する。

 ポリアクリロニトリル系繊維は、羊毛に似 優れた嵩高性、風合い、染色鮮明性等の特 を有し、広範な用途に利用されている。ポ アクリロニトリル系繊維は、炭素繊維のプ カーサとしても広く利用されている。
 ポリアクリロニトリル系繊維は、一般的に クリロニトリル系重合体を有機又は無機溶 に溶解した紡糸原液を、湿式又は乾湿式紡 して繊維状に賦型した後、延伸、洗浄、乾 緻密化することにより製造される。
 紡糸原液の溶剤としては、ジメチルホルム ミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系 剤や、ジメチルスルホキシドなどが広く使 されている。

 しかしながら、紡糸原液の溶剤としてアミ 系溶剤を用いた場合、紡糸原液の保存安定 が良くないという問題がある。
 このような問題に対し、たとえば特許文献1 では、アクリロニトリル系重合体を、ジメチ ルアミンの含有量が一定量以下のジメチルア セトアミドなどのアミド系溶剤に溶解し、溶 液(紡糸原液)の安定性を向上する技術を開示 ている。かかる技術によれば、長時間の保 においてゲル化、着色を抑制できる。しか 、前記溶液においては、高温下において時 とともにジメチルアセトアミドの加水分解 生じ、これにより発生するジメチルアミン より重合体の環化反応などが進行するなど 高温下での安定性(熱安定性)が充分ではな 場合がある。
 特許文献2では、ポリマー末端に硫酸基及び /又はスルホン酸基を所定量以上含有するア リロニトリル系重合体をジメチルアセトア ドに溶解した溶液(紡糸原液)からポリアクリ ロニトリル系繊維を得ることを開示している 。このようにして得られるポリアクリロニト リル系繊維は、緻密性に優れており、炭素繊 維の製造に適している。しかし、前記と同様 、溶液の熱安定性が充分ではない場合がある 。
 特許文献3では、硫酸基及び/又はスルホン 基を所定量以上含有するアクリロニトリル 重合体を、ジメチルスルホキシドなどのア ド結合を持たない溶剤に溶解することで、 液(紡糸原液)の粘度変化が抑制されることを 開示している。かかる溶液は、安定性の観点 で好ましい。しかし、前記溶液を用いて得ら れるポリアクリロニトリル系繊維は、アミド 系溶剤を用いた場合に比べて、緻密性に劣る 問題がある。

特開平9-13220号公報

国際公開第1999/10572号パンフレット

特開平11-200140号公報

 本発明は、上記事情に鑑みてなされたも であって、アミド系溶剤に溶解した場合に 溶液(紡糸原液)の熱安定性に優れており、 素繊維の製造に適した緻密なポリアクリロ トリル系繊維を得ることが可能なアクリロ トリル系共重合体及びその製造方法、前記 クリロニトリル系共重合体をアミド系溶剤 溶解したアクリロニトリル系共重合体溶液 並びに前記アクリロニトリル系共重合体溶 を用いた炭素繊維用ポリアクリロニトリル 前駆体繊維及びその製造方法を提供するこ を目的とする。

 本発明のアクリロニトリル系共重合体は、 合開始剤に由来するスルホン酸基を1.0×10 -5 当量/g以上含有し、(重合開始剤に由来する硫 酸基の含有量/前記スルホン酸基および前記 酸基の合計量)の値(当量比)が0.4以下である
 本発明のアクリロニトリル系共重合体の製 方法は、アクリロニトリルとビニル系単量 とを、過硫酸塩及び亜硫酸塩を重合開始剤 用いて共重合することを特徴とする。
 本発明のアクリロニトリル系共重合体の製 方法は、アクリロニトリルとビニル系単量 とを、過硫酸塩及び亜硫酸塩を重合開始剤 用いて共重合した後、共重合体中の硫酸基 加水分解することを特徴とする。
 本発明のアクリロニトリル系共重合体の製 方法は、共重合体溶液中で共重合体の硫酸 を加水分解することを特徴とする。
 本発明のアクリロニトリル系共重合体溶液 、前記アクリロニトリル系共重合体及びア ド系溶剤を含むものである。
 本発明の炭素繊維用ポリアクリロニトリル 前駆体繊維の製造方法は、前記アクリロニ リル系共重合体溶液を紡糸原液として紡糸 る工程を有する。
 本発明の炭素繊維用ポリアクリロニトリル 前駆体繊維は、前記前駆体繊維中のアクリ ニトリル系共重合体が重合開始剤に由来す スルホン酸基を1.0×10 -5 当量/g以上含有し、(重合開始剤に由来する硫 酸基の含有量/前記スルホン酸基および前記 酸基の合計量)の値(当量比)が0.4以下である とを特徴とする。

 本発明によれば、アミド系溶剤に溶解し 場合にも溶液(紡糸原液)の熱安定性に優れ おり、炭素繊維の製造に適した緻密なポリ クリロニトリル系繊維を得ることが可能な クリロニトリル系共重合体及びその製造方 、前記アクリロニトリル系共重合体をアミ 系溶剤に溶解したアクリロニトリル系共重 体溶液、並びに前記アクリロニトリル系共 合体溶液を用いた炭素繊維用ポリアクリロ トリル系前駆体繊維及びその製造方法を提 できる。

実施例1において、共重合体溶液を85℃ 21日間保持した後に紡糸して得られた凝固 断面の顕微鏡写真である。 実施例2において、共重合体溶液を85℃ 21日間保持した後に紡糸して得られた凝固 断面の顕微鏡写真である。 比較例1において、共重合体溶液を85℃ 21日間保持した後に紡糸して得られた凝固 断面の顕微鏡写真である。 実施例6において、共重合体溶液を紡糸 して得られた凝固糸断面の顕微鏡写真である 。 比較例5において、共重合体溶液を紡糸 して得られた凝固糸断面の顕微鏡写真である 。

<アクリロニトリル系共重合体及びその製 方法>
 本発明において、「アクリロニトリル系共 合体」とは、アクリロニトリル単位と、ア リロニトリル以外の単量体に由来する単位 を有する共重合体である。
 ここで、「単位」とは、重合体を構成する り返し単位を意味する。
 「アクリロニトリル単位」は、アクリロニ リルのエチレン性二重結合が開裂して形成 れる単位を示す。
 アクリロニトリル以外の単量体としては、 とえば、後述するビニル系単量体が挙げら る。

 アクリロニトリル系共重合体中のアクリロ トリル単位の割合は、炭素繊維にしたとき 共重合成分に起因する欠陥点を少なくし、 素繊維の品質並びに性能を向上させる目的 ら、当該アクリロニトリル系共重合体を構 する全単量体単位の合計に対し、90質量%以 が好ましく、95質量%以上がより好ましい。
 アクリロニトリル単位の割合の上限は、共 合体の溶剤への溶解性を考慮すると、99.5質 量%以下が好ましく、99質量%以下がより好ま い。

 本発明のアクリロニトリル系共重合体は、 リマー末端基として、重合開始剤に由来す スルホン酸基を含有する。前記アクリロニ リル系共重合体は、前記スルホン酸基とと に、重合開始剤に由来する硫酸基を有して てもよい。前記スルホン酸基および硫酸基( 以下、これらをまとめて強酸性基ということ がある。)は、当該アクリロニトリル系共重 体を用いて作製する繊維の緻密性の制御に 要な役割を果たす。
 本発明において、アクリロニトリル系共重 体中の前記スルホン酸基の含有量は1.0×10 -5 当量/g以上であり、1.2×10 -5 当量/g以上が好ましい。
 前記スルホン酸基の含有量が1.0×10 -5 当量/g未満であると、当該アクリロニトリル 共重合体をアミド系溶剤に溶解した溶液の 安定性が悪く、前記溶液を高温で長期間保 した後に紡糸して得られる繊維のマクロボ ドが大幅に増加し、緻密性が低下するおそ がある。前記繊維の緻密性の低下は、最終 に得られる炭素繊維の性能が低下するため ましくない。
 なお、本発明において、アクリロニトリル 共重合体におけるスルホン酸基、硫酸基等 官能基の含有量は、当該共重合体1g当りの 該官能基のモル当量を意味する。

 前記スルホン酸基の含有量の上限は特に限 されないが、スルホン酸基及び硫酸基の合 量(以下、全強酸性基の含有量ということが ある。)が多くなると、アクリロニトリル系 重合体の分子量が低下する。分子量の低下 当該共重合体溶液の粘度の低下をもたらし 当該溶液を用いて得られる繊維の緻密性を 下させるおそれがある。
 そのため、前記スルホン酸基の含有量とし は、アクリロニトリル系共重合体における 強酸性基の含有量が、4.0×10 -5 当量/g未満となる量が好ましく、3.2×10 -5 当量/g未満となる量がより好ましい。
 アクリロニトリル系共重合体における全強 性基の含有量の下限は、当該アクリロニト ル系共重合体を用いて作製する繊維の緻密 を考慮すると、1.0×10 -5 当量/g以上が好ましく、1.2×10 -5 当量/g以上がより好ましい。

 また、本発明のアクリロニトリル系共重合 は、重合開始剤に由来する硫酸基を含んで 良いが、(前記硫酸基の含有量/全強酸性基 含有量)の値(当量比)が0.4以下である必要が り、0.35未満が好ましく、0であってもよい。 前記値は、全強酸性基中の硫酸基の割合を示 す。前記硫酸基の割合が当量比で0.4を超える と、当該アクリロニトリル系共重合体をアミ ド系溶剤に溶解した溶液を高温で長期間保持 した場合に、ポリマー末端の硫酸基が加水分 解されてしまい、紡糸して得られる繊維のマ クロボイドが大幅に増加し、緻密性が低下す る場合がある。前記硫酸基の割合が当量比で 0.4以下であれば、スルホン酸基が加水分解さ れずに充分に残るため、前記溶液を高温で長 期間保持した場合でも紡糸して得られる繊維 のマクロボイドが増加することはなく、緻密 性が確保される。
 前記硫酸基の割合が多い場合にマクロボイ が大幅に増加する現象は、ポリマー末端の 酸基が加水分解により減少することにより 紡糸における凝固時に水が糸内部へ拡散す 拡散速度が増大するためではないかと推測 れる。このため、ポリマー末端の硫酸基の 合が少ないほど、溶液を高温で長期間保持 た場合の経時安定性が向上すると推測され 。

 前記アクリロニトリル系共重合体中のスル ン酸基の含有量や(前記硫酸基の含有量/全 酸性基の含有量)の値を求める方法としては 以下のような方法などが挙げられるが、こ らに限定されるものではない。
 予め、当該アクリロニトリル系共重合体中 ポリマー末端の全強酸性基の含有量(スルホ ン酸基及び硫酸基の合計量)(硫黄換算又は硫 イオン換算)を、元素分析法又は強酸性基の 滴定により測定する。
 これとは別に、前記アクリロニトリル系共 合体を塩酸水溶液中で還流して硫酸末端を 水分解した後、液中に発生した硫酸イオン をイオンクロマト法などにより測定し、ポ マー末端の硫酸基の含有量を算出する。
 前記全強酸性基の含有量から硫酸基の含有 を減じることにより、ポリマー末端のスル ン酸基の含有量が求められる。
 また、前記硫酸基の含有量を全強酸性基の 有量で除することにより、(前記硫酸基の含 有量/全強酸性基の含有量)の値が求められる
 また、上記の方法以外にも、加水分解後の クリロニトリル系共重合体を乾燥後に元素 析法などによりスルホン酸末端由来の硫黄 を測定し、計算することによりポリマー末 のスルホン酸基の含有量や(前記硫酸基の含 有量/全強酸性基の含有量)を算出することも 能である。
 前記元素分析法としては、試料を燃焼させ 発生した硫黄の酸化物(ガス)を過酸化水素 などに吸収させ、吸収液のイオンクロマト 定を行って硫酸イオン換算の含有量を定量 る方法などが挙げられる。試料を燃焼させ 燃焼法としては、燃焼ボート法、燃焼フラ コ法等が挙げられる。定量法としてはイオ クロマト法、ICP発光分析等が挙げられる。

 アクリロニトリル系共重合体は、アクリロ トリルと、アクリロニトリル以外の単量体 を重合開始剤の存在下で共重合させること より製造できる。
 本発明においては、アクリロニトリル系共 合体のポリマー末端に重合開始剤由来の強 性基(スルホン酸基、硫酸基)を導入する。
 アクリロニトリル系共重合体のポリマー末 に重合開始剤由来の強酸性基を導入する方 としては、前記重合開始剤として、亜硫酸 を含む還元剤と、過硫酸塩を含む酸化剤と 組み合わせたレドックス重合開始剤を用い 方法が挙げられる。
 前記過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウ 、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムが挙 られる。
 前記亜硫酸塩としては、亜硫酸水素アンモ ウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナト ウムが挙げられる。
 また、還元剤として、別途、硫酸第一鉄等 Fe 2+ 塩を添加してもよい。
 また、pH調節等の目的で、硫酸を添加して よい。

 前記レドックス重合開始剤を用いる場合、 クリロニトリル系共重合体のポリマー末端 は、前記過硫酸塩に由来する硫酸基、およ 前記亜硫酸塩に由来するスルホン酸基が導 される。
 そのため、前記レドックス重合開始剤にお る過硫酸塩及び亜硫酸塩の組み合わせや割 を制御することにより、得られるアクリロ トリル系共重合体における前記スルホン酸 の含有量や、前記硫酸基の割合を比較的容 に調整することができる。たとえば前記硫 基の割合を減らす場合は、添加する過硫酸 の割合を減らして重合を実施すればよい。
 また、硫酸基の割合を0にする場合には、前 記過硫酸塩を使用せずに重合すればよい。
 たとえば、過硫酸塩の代わりの酸化剤とし 塩素酸ナトリウムなどの塩素酸塩を還元剤 亜硫酸塩と組み合わせて使用することで硫 基の割合が0の重合体を得ることができる。
 また、共重合体中の硫酸基の割合を減らす 法として、亜硫酸塩を含む還元剤と、過硫 塩を含む酸化剤とを組み合わせたレドック 重合開始剤を用いてアクリロニトリル系共 合体を作製した後、硫酸基を加水分解する 法を用いても良い。共重合体中の硫酸基を 水分解する方法としては、共重合体を塩酸 硫酸などの酸の存在する水溶液中に分散さ て加熱して加水分解する方法や、共重合体 溶剤に溶解した後、共重合体溶液を加熱下 長時間保持することで溶媒中に存在する水 反応させて硫酸基を分解する方法などが好 しく用いられる。

 アクリロニトリル以外の単量体としては アクリロニトリルと共重合可能なビニル系 量体が挙げられる。前記ビニル系単量体と ては、たとえばメチル(メタ)アクリレート エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ) クリレート、ブチル(メタ)アクリレート、 キシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリ 酸エステル類、塩化ビニル、臭化ビニル、 化ビニリデン等のハロゲン化ビニル類、(メ タ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸等 酸類及びそれらの塩類、マレイン酸イミド フェニルマレイミド、(メタ)アクリルアミド 、スチレン、α-メチルスチレン、酢酸ビニル が挙げられる。これらは1種で又は2種以上を 用して使用できる。

 本発明においては、前記ビニル系単量体と て、前駆体繊維を焼成して炭素繊維とする の焼成工程での耐炎化反応性を高める目的 、カルボン酸基を含有するビニル系単量体 用いることが好ましい。これにより、カル ン酸基を有するアクリロニトリル系共重合 が得られる。
 ただし、前記カルボン酸基は、焼成工程で 耐炎化反応性を向上させる役割を果たす一 、炭素繊維の欠陥点となるおそれがあるた 、アクリロニトリル系共重合体中のカルボ 酸基の含有量を調節することが好ましい。
 具体的には、アクリロニトリル系共重合体 のカルボン酸基の含有量の下限は、5.0×10 -5 当量/g以上が好ましく、5.5×10 -5 当量/g以上がより好ましい。カルボン酸基の 有量が5.0×10 -5 当量/g未満である場合は、焼成工程での耐炎 反応性が低く、さらに高温での処理を必要 する。高温で処理を行うと、暴走反応が起 りやすく、安定した焼成工程通過性を得る とが困難となる。逆に暴走反応を抑制する めに、低速度での焼成を行う必要が生じ、 済的でないため好ましくない。
 また、アクリロニトリル系共重合体中のカ ボン酸基の含有量の上限は、2.0×10 -4 当量/g以下が好ましく、1.8×10 -4 当量/g以下がより好ましい。カルボン酸基の 有量が2.0×10 -4 当量/gを超えると、ポリマーのニトリル基の 環反応が迅速になるため繊維内部にまで酸 反応が進行せず、繊維表層近傍のみ耐炎化 造が進行するおそれがある。このような構 では、次のさらに高温の炭素化工程におい 、繊維中心部の耐炎化構造の未発達な部分 分解が抑制できないため、炭素繊維の性能 特に引張弾性率が著しく低下し、好ましく い。
 アクリロニトリル系共重合体中のカルボン 基の含有量は、使用する全単量体中のカル ン酸基を含有するビニル系単量体の割合を 節することにより調節できる。
 カルボン酸基を含有するビニル系単量体と ては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコ 酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸等 挙げられる。この中でも、アクリル酸、メ クリル酸、イタコン酸が好ましい。これら いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以 を併用してもよい。

 また、前記ビニル系単量体として、アクリ アミドを用いても良い。焼成工程での耐炎 反応性、及び熱環化反応速度は、カルボン 基の含有量が支配的な要因であるが、アク ロニトリル系共重合体中に少量のアクリル ミド単位が共存することで急激に増大する また、アクリルアミド単位を含むことで、 クリロニトリル系共重合体のアミド系溶剤 対する溶解性が向上したり、湿式紡糸又は 湿式紡糸した凝固糸の緻密性が向上したり る。
 アクリロニトリル系共重合体中のアクリル ミド単位の含有量は、0.5質量%以上5質量%以 であることが好ましく、1.0質量%以上4.0質量 %以下がより好ましい。

 重合方法は、特に限定はなく、水系析出重 、懸濁重合、溶液重合、乳化重合などの公 の方法を用いることができる。重合方法と ては、生産性に優れ、洗浄工程などにより 留するモノマーなどの不要な成分を少なく ることが可能であることから、水系析出重 が好ましい。
 重合反応の条件は、アクリロニトリル系重 体の製造において通常用いられている条件 使用することができる。
 たとえば重合温度は、20~80℃が好ましく、40 ~70℃がより好ましい。
 また、pHは、用いる重合開始剤の酸化・還 反応の速度が向上する点から、4以下が好ま く、3.5以下がより好ましい。
 重合は、たとえば重合停止剤を添加するこ により、停止させることができる。
 重合後、重合反応により得られたアクリロ トリル系共重合体から、未反応の単量体や 合開始剤等の残査、その他の不純物類を極 のぞくことが、ポリマー末端の硫酸基の加 分解を抑制できるため、好ましい。

<アクリロニトリル系共重合体溶液>
 本発明のアクリロニトリル系共重合体溶液( 以下、本発明の溶液ということがある。)は 前記アクリロニトリル系共重合体及びアミ 系溶剤を含む。かかる溶液は、アミド系溶 を溶媒に用いていても熱安定性が高く、長 間加熱保持した場合にも、溶液中のアクリ ニトリル系共重合体の強酸性末端基含有量 一定以上あり、紡糸により緻密な繊維を得 ことができる。そのため、ポリアクリロニ リル系繊維、特に炭素繊維用の前駆体繊維( レカーサ)の製造に適している。

 アミド系溶剤としては、アクリロニトリル 共重合体を溶解するものであればよく、公 のアミド系溶剤を使用できる。具体的には ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムア ド、N-メチルピロリドン等が挙げられる。 れらはいずれか1種を単独で用いてもよく、2 種以上を併用してもよい。
 本発明において、アミド系溶剤としては、 密性の高いアクリロニトリル系共重合体繊 を得ることが可能であることから、ジメチ アセトアミド及び/又はジメチルホルムアミ ドが好ましく、ジメチルアセトアミドが特に 好ましい。

 本発明の溶液中、アクリロニトリル系共重 体の濃度(ポリマー濃度)は、特に限定され いが、紡糸時に緻密な凝固糸を得るために 、溶液(紡糸原液)としてある程度以上のポリ マー濃度を有することが好ましい。そのため 、本発明の溶液中のポリマー濃度は、17質量% 以上が好ましく、19質量%以上がより好ましい 。また、前記ポリマー濃度は、通常25質量%以 下が好ましい。
 本発明の溶液は、上記のアクリロニトリル 共重合体を、アミド系溶剤に溶解すること より製造できる。
 アクリロニトリル系共重合体をアミド系溶 に溶解する方法としては公知の任意の方法 用いることができる。

<炭素繊維用ポリアクリロニトリル系前駆 繊維及びその製造方法>
 本発明の炭素繊維用ポリアクリロニトリル 前駆体繊維は、前記前駆体繊維中のアクリ ニトリル系共重合体が重合開始剤に由来す スルホン酸基を1.0×10 -5 当量/g以上含有し、(重合開始剤に由来する硫 酸基の含有量/前記スルホン酸基および前記 酸基の合計量)の値(当量比)が0.4以下である とが必要である。
 上述のような特徴を持つため、凝固時のマ ロボイドが非常に少なくなり、前記前駆体 維は緻密な構造を有するため、焼成して得 れた炭素繊維の欠陥が少なくなるため、特 に優れた炭素繊維が得られる。
 前記前駆体繊維中のアクリロニトリル系共 合体中のスルホン酸基の含有量や(前記硫酸 基の含有量/全強酸性基の含有量)の値を求め 方法は、前述の通りであるが、必要に応じ 事前に試料に付着している油剤等の物質を 去する操作を入れても良い。油剤を除去す 方法としては、有機溶媒中で還流して抽出 除去する方法などが好ましく用いられる。 た、必要に応じて前記前駆体繊維を溶剤に 解して溶液とし、その溶液を水などの貧溶 中に滴下して再沈、ろ過、乾燥することで 態を粉末にしてその後の測定を実施しても い。
 本発明の炭素繊維用ポリアクリロニトリル 前駆体繊維の製造方法は、前記アクリロニ リル系共重合体溶液を紡糸原液として紡糸 る工程を有する。
 紡糸方式としては、湿式紡糸法、乾湿式紡 法、乾式紡糸法が採用でき、何れの方法に 定されるものではないが、湿式紡糸法、乾 式紡糸法が、紡糸の生産性の観点、炭素繊 の強度発現性の観点から好ましく用いられ 。

 紡糸では、まず、紡糸原液を円形断面のノ ル孔より凝固浴中に吐出するか(湿式紡糸) 又は一旦空気中に吐出した後、凝固浴に導 て(乾-湿式紡糸)、凝固糸とする。
 紡糸ドラフトは、ポリマー濃度、延伸倍率 応じ、所望のデニール繊維が得られるよう 適切に設定する。
 緻密で均質な前駆体繊維を得るには、この 固糸の性状が極めて重要であり、前記前駆 繊維の繊維構造の緻密性あるいは均質性が 十分な場合、焼成時に欠陥点となり、炭素 維の性能を損なうおそれがある。
 前記凝固糸の性状として、重要なものとし は、マクロボイドの有無が挙げられる。こ で、マクロボイドとは、最大径が0.1~数μmの 大きさを有する球形、紡錘形、円筒形を有す る空隙を総称したものである。マクロボイド が多く存在すると、凝固糸は失透して白濁す るが、本発明において得られる凝固糸には、 マクロボイドがほとんど存在しないため失透 せず白濁しない。このようなマクロボイドが ない凝固糸からは、緻密性、均一性等に優れ た前駆体繊維を得ることができる。
 本発明においては、凝固糸におけるマクロ イドの数が、凝固糸の繊維方向1mm長中に1個 未満であることが好ましい。
 マクロボイドの有無やその計数は、凝固糸 直接光学顕微鏡で観察するか、適切な方法( たとえば、カミソリの刃で切断する等)で切 して断面を光学顕微鏡で観察することで容 に判断することができる。

 凝固浴は、紡糸原液に用いられる溶剤を含 水溶液が好適に使用される。
 前記凝固浴の条件を調整することにより、 固糸の性状を制御できる。たとえば、含ま る溶剤の濃度を調節することにより、凝固 の空隙率が50%以下となるように設定できる
 凝固浴に含まれる溶剤の濃度は、使用する 剤によって一般的に異なるが、例えばジメ ルアセトアミドを使用する場合は、50~80質 %が好ましく、60~75質量%がより好ましい。
 又、凝固浴の温度は低い方が好ましく、通 50℃以下、さらに好ましくは40℃以下である 。前記温度を低くするほど、より緻密な凝固 糸を得ることができる。ただし、前記温度が 低くなるほど、凝固糸の引取速度が低下し、 生産性が低下するため、適切な範囲に設定す ることが望ましい。凝固浴の温度は、0℃以 が好ましく、5℃以上がより好ましい。

 得られた凝固糸は、その後、公知の工程を て炭素繊維用ポリアクリロニトリル系前駆 繊維とされる。前記工程としては、脱溶剤 浴中延伸、油剤付着処理、乾燥、更にはス ーム延伸或いは乾熱延伸の後延伸が挙げら る。
 前記炭素繊維用ポリアクリロニトリル系前 体繊維を焼成することにより、炭素繊維を 造できる。焼成は、耐炎化、炭素化の処理 公知の方法により施すことにより実施でき 。

 以下に実施例を示して本発明を具体的に説 するが、本発明はこれらの実施例により限 されるものではない。
 実施例中の「AN」はアクリロニトリルを表 、「AAm」はアクリルアミドを表し、「MAA」 メタクリル酸を表す。
 実施例で用いた測定方法及び評価方法を以 に示す。

[(A)共重合体の組成]
 共重合体の組成(各単量体単位の比率(質量 ))は、1H-NMR法(日本電子社製、「GSZ-400型超伝 FT-NMR」)により、溶媒としてジメチルスルホ キシド-d6溶媒を用い、積算回数40回、測定温 120℃の条件にて測定して、ケミカルシフト 積分比から求めた。
 共重合体中のメタクリル酸単位の質量比か アクリロニトリル系共重合体中のカルボン 基の含有量(当量/g)を算出した。

[(B)スルホン酸基及び硫酸基の定量]
 (i)
 共重合体の2質量%ジメチルホルムアミド溶 を陰陽混合イオン交換樹脂に通して電離性 純物を除去した後、陽イオン交換樹脂に通 て強酸基イオンを酸型に転換した。その後 電位差滴定により、共重合体1g当たりに含ま れるスルホン酸基及び硫酸基の合計の当量数 (=ポリマー末端の全強酸性基の含有量(b))を求 めた。
 (ii)
 共重合体2gを濃度0.1mol/lの塩酸水溶液20ml中 分散させ、80℃にて2時間還流することによ 、ポリマー末端の硫酸基の加水分解を行っ 。
 加水分解した液部をフィルターでろ過した 、イオンクロマト法により硫酸イオンの定 を行い、共重合体1g当たりの硫酸イオンの 有量(=ポリマー末端の硫酸基の含有量(a))を めた。
 (iii)
 上記で求めた(b)及び(a)の値から、(b-a)の値(= ポリマー末端のスルホン酸基の含有量)、及 (a/b)の値(=硫酸基の含有量/全強酸性基の含有 量)をそれぞれ算出した。

[(C)凝固糸の断面観察]
 凝固浴から出た糸条を採取し、水洗した後 カミソリ刃を用いて繊維方向に垂直な面で 断し、その断面を、光学顕微鏡で観察した

[(D)炭素繊維のストランド強度・ストランド 性率]
 JIS R 7601に記載の方法に準じて測定した。

[実施例1]
(1-1)
 容量80リットルのタービン撹拌翼付き重合 に、脱イオン交換水57.4kg、表1に示す組成比 単量体19.1kgをあらかじめ仕込んだ(水/モノ ー=3.0(質量比))。
 別途、前記単量体に対してレドックス重合 始剤である過硫酸アンモニウム0.4質量%、亜 硫酸水素アンモニウム0.6質量%、硫酸第一鉄(F e 2 SO 4 ・7H 2 O)0.3ppm、硫酸0.07質量%をそれぞれ脱イオン交 水に溶解して重合開始剤溶液を調製した。
 前記重合開始剤溶液を上記重合釜中に連続 に供給して重合を行った。このとき、反応 のpHが3.0になるように硫酸供給量で調節し 重合反応液温度を50℃に保ち、充分な撹拌を 行い、ポリマー水系分散液(重合スラリー)の 均滞在時間70分になるように、重合釜オー ーフロー口より連続的に重合スラリーを取 出した。取り出した重合スラリーには、シ ウ酸ナトリウム0.5質量%、重炭酸ナトリウム1 .5質量%を脱イオン交換水に溶解した重合停止 剤水溶液を、重合スラリーのpHが5.5~6.0になる ように加えて重合を停止させた。
 調製した重合スラリーを、オリバー型連続 ィルターによって脱水処理した後、ポリマ に対して10倍量の70℃の脱イオン交換水中に 分散させ、再び重合スラリー化した。この後 、前記重合スラリーを再度オリバー型連続フ ィルターによって脱水処理し、ペレット成形 して80℃にて8時間熱風循環型の乾燥機で乾燥 した後、ハンマーミルで粉砕して粉体を得た 。得られた粉体をジメチルアセトアミドに5 量%の溶液になるように添加して加熱溶解し その溶液を、約20倍の脱イオン交換水中に っくりと滴下してミキサーで混合しながら 沈して、再度ろ過、脱水処理した後、ペレ ト成形して80℃にて8時間熱風循環型の乾燥 で乾燥後、ハンマーミルで粉砕することに り共重合体Aを得た。
 前記共重合体Aの組成、(a)、(b)、(b-a)及び(a/b )を測定した。その結果を表2に示す。

(1-2)
 この共重合体Aを、21質量%の濃度になるよう にジメチルアセトアミドに溶解して共重合体 溶液を調製した。
 前記共重合体溶液(紡糸原液)を、85℃で21日 保持した後、70℃とし、直径0.075mm、孔数6000 の口金を用いて、濃度66質量%、浴温38℃のジ チルアセトアミド水溶液中に吐出して凝固 を得た。この凝固糸は、透明で、マクロボ ドのないものであった。前記凝固糸の繊維 に垂直な断面の顕微鏡写真を図1に示す。前 記写真から明らかなように、凝固糸の断面に はマクロボイドは見られなかった。

(1-3)
 得られた凝固糸を、空気中で1.5倍、さらに 水中で3.4倍延伸しながら洗浄・脱溶剤した 、シリコン系油剤溶液中に浸漬し、140℃の 熱ローラーにて乾燥緻密化した。引き続い 、180℃の熱板上で1.5倍延伸し、捲取速度100m /分にて1.1デニールの円形断面を有する前駆 繊維を得た。
 この前駆体繊維を空気中、230~260℃の熱風循 環式耐炎化炉にて、5%の伸張を付与しながら5 0分間処理し、耐炎化繊維となし、引き続き この繊維を窒素雰囲気下、最高温度600℃、 張率5%にて1.5分間低温熱処理し、さらに同雰 囲気下で最高温度が1200℃の高温熱処理炉に -4%の伸張の下、約1.5分処理することにより 素繊維を得た。得られた炭素繊維のストラ ド強度は531kg/mm 2 、ストランド弾性率は26.1ton/mm 2 であった。

(1-4)
 また、85℃で21日間保持した上記共重合体溶 液を、ジメチルアセトアミドで4.2倍に希釈し て5質量%の溶液とした後、前記溶液を、約20 の脱イオン交換水中にゆっくりと滴下して キサーで混合しながら再沈して、ろ過、脱 処理した。その後、ペレット成形して80℃に て8時間熱風循環型の乾燥機で乾燥し、ハン ーミルで粉砕して共重合体A’を得た。
 前記共重合体A’(85℃21日間保持後の共重合 A)について、(a)、(b)、(b-a)及び(a/b)を測定し 。
 また、これらのうち、(a)について、保持前 (a)に対する減少率(%)[(保持前の(a)-保持後の( a))/保持前の(a)×100]を求めた。この(a)の減少 、硫酸基の加水分解により生じているもの 推測される。
 同様に、(b)についても、保持前の(b)に対す 減少率(%)求めた。
 これらの結果を表2に示す。

[実施例2]
 重合条件を表1に記載したものに変更した以 外は、実施例1の(1-1)と同様にして共重合体B 得た。この共重合体Bの組成、(a)、(b)、(b-a) び(a/b)を測定した。その結果を表2に示す。
 前記共重合体Bを用いた以外は実施例1の(1-2) と同様にして共重合体溶液(紡糸原液)を調製 た。これを85℃で21日間保持した後、実施例 1の(1-2)と同様にして凝固糸を作製した。前記 凝固糸の繊維軸に垂直な断面の顕微鏡写真を 図2に示す。前記写真から明らかなように、 固糸の断面にはマクロボイドは見られなか た。
 得られた凝固糸を用いて、実施例1の(1-3)と 様にして、1.1デニールの円形断面を有する 駆体繊維を作製した。得られた前駆体繊維 用いて、実施例1の(1-3)と同様にして炭素繊 を作製した。得られた炭素繊維のストラン 強度は501kg/mm 2 、ストランド弾性率は25.3ton/mm 2 であった。
 また、85℃で21日間保持した上記共重合体溶 液を用い、実施例1の(1-4)と同様にして再沈処 理を行い、共重合体B’を得た。前記共重合 B’について、(a)、(b)、(b-a)及び(a/b)を測定し た。
 また、(a)、(b)について、実施例1と同様、保 持前の(a)、(b)に対する減少率(%)を求めた。
 これらの結果を表2に示す。

[比較例1]
 重合条件を表1に記載したものに変更した以 外は、実施例1の(1-1)と同様にして共重合体C 得た。この共重合体Cの組成、(a)、(b)、(b-a) び(a/b)を測定した。その結果を表2に示す。
 前記共重合体Cを用いた以外は実施例1の(1-2) と同様にして共重合体溶液(紡糸原液)を調製 た。この紡糸原液を85℃で21日間保持した後 、70℃とし、濃度66質量%、浴温38℃のジメチ アセトアミド水溶液中に吐出したが、凝固 が白色になってしまい、マクロボイドが生 していることが推定された。前記凝固糸の 維軸に垂直な断面の顕微鏡写真を図3に示す 前記写真から明らかなように、凝固糸の断 にはマクロボイドが多数見られた。
 この凝固糸を用いて、実施例1の(1-3)と同様 して、1.1デニールの円形断面を有する前駆 繊維を作製した。得られた前駆体繊維を用 て、実施例1の(1-3)と同様にして炭素繊維を 製した。得られた炭素繊維のストランド強 は380kg/mm 2 、ストランド弾性率は22.8ton/mm 2 であった。
 また、85℃で21日間保持した上記共重合体溶 液を用い、実施例1の(1-4)と同様にして再沈処 理を行い、共重合体C’を得た。前記共重合 C’について、(a)、(b)、(b-a)及び(a/b)を測定し た。
 また、(a)、(b)について、実施例1と同様、保 持前の(a)、(b)に対する減少率(%)を求めた。
 これらの結果を表2に示す。

[実施例3]
 重合条件を表1に記載したものに変更した以 外は、実施例1の(1-1)と同様にして共重合体D 得た。この共重合体Dの組成、(a)、(b)、(b-a) び(a/b)を測定した。その結果を表2に示す。
 前記共重合体Dを用いた以外は実施例1の(1-2) と同様にして共重合体溶液(紡糸原液)を調製 た。これを85℃で21日間保持した後、実施例 1の(1-2)と同様にして凝固糸を作製した。凝固 糸の断面にはマクロボイドは見られなかった 。
 得られた凝固糸を用いて、実施例1の(1-3)と 様にして、1.1デニールの円形断面を有する 駆体繊維を作製した。得られた前駆体繊維 用いて、実施例1の(1-3)と同様にして炭素繊 を作製した。得られた炭素繊維のストラン 強度は515kg/mm 2 、ストランド弾性率は25.8ton/mm 2 であった。
 また、85℃で21日間保持した上記共重合体溶 液を用い、実施例1の(1-4)と同様にして再沈処 理を行い、共重合体D’を得た。前記共重合 D’について、(a)、(b)、(b-a)及び(a/b)を測定し た。
 また、(a)、(b)について、実施例1と同様、保 持前の(a)、(b)に対する減少率(%)を求めた。
 この前駆体繊維の油剤を、アセトン中で4時 間還流して除去した後、5質量%ジメチルアセ アミド溶液とした。前記溶液を、約20倍の イオン交換水中にゆっくりと滴下してミキ ーで混合しながら再沈して、ろ過、脱水処 した後、ペレット成形して80℃にて8時間熱 循環型の乾燥機で乾燥し、前駆体繊維中の 重合体の(a)、(b)、(b-a)及び(a/b)を測定した。
 これらの結果を表2に示す。

[比較例2,3]
 重合条件を表1に記載したものに変更した以 外は、実施例1の(1-1)と同様にして共重合体E,F を得た。この共重合体E,Fの組成、(a)、(b)、(b- a)及び(a/b)を測定した。その結果を表2に示す
 前記共重合体E,Fをそれぞれ用いた以外は実 例1の(1-2)と同様にして共重合体溶液(紡糸原 液)を調製した。この紡糸原液を85℃で21日間 持した後、70℃とし、濃度66質量%、浴温38℃ のジメチルアセトアミド水溶液中に吐出した が、凝固糸が白色になってしまい、マクロボ イドが生成していることが推定された。
 この凝固糸を用いて、実施例1の(1-3)と同様 して、1.1デニールの円形断面を有する前駆 繊維を作製した。得られた前駆体繊維を用 て、実施例1の(1-3)と同様にして炭素繊維を 製した。得られた炭素繊維のストランド強 、ストランド弾性率を表2に示す。
 また、85℃で21日間保持した上記共重合体溶 液を用い、実施例1の(1-4)と同様にして再沈処 理を行い、それぞれ共重合体E’,F’を得た。 前記共重合体について、(a)、(b)、(b-a)及び(a/b )を測定した。また、(a)、(b)について、実施 1と同様、保持前の(a)、(b)に対する減少率(%) 求めた。
 また、実施例3と同様に前駆体繊維中の共重 合体の(a)、(b)、(b-a)及び(a/b)を測定した。
 これらの結果を表2に示す。

 表2の結果に示すように、共重合体溶液を 85℃で21日間保持することで共重合体中の硫 基が加水分解されて減少し、スルホン酸末 の割合が増加していることがわかる。85℃で 21日間保持後の共重合体溶液中の共重合体と 持後の溶液を紡糸して得られた前駆体繊維 の共重合体の(a)、(b)、(b-a)及び(a/b)に差は見 られなかった。実施例1~3では、(b)の減少率が 小さく、また、前記溶液を用いて得られる凝 固糸にマクロボイドが見られなかった。これ らの結果から、実施例1~3で得られた溶液の熱 安定性が良好であることが確認できた。また 、前記溶液を用いて得られた前駆体繊維から 得られた炭素繊維は、ストランド特性に優れ たものであった。

[実施例4]
 実施例1で得た共重合体Aの粉体を10倍の重量 の0.1mol/L塩酸水溶液中に分散させて分散液を 製し、それを約100℃で4時間、加熱還流させ た。その後、分散液をろ過して回収した共重 合体を約20倍の量の脱イオン交換水で洗浄し ペレット成形した。80℃にて8時間熱風循環 の乾燥機で乾燥後、ハンマーミルで粉砕す ことにより共重合体A〃を得た。
 前記共重合体A〃の組成、(a)、(b)、(b-a)及び( a/b)を測定した。その結果を表3に示す。
 この共重合体A〃を、21質量%の濃度になるよ うにジメチルアセトアミドに溶解して共重合 体溶液を調製した。
 前記共重合体溶液(紡糸原液)を、70℃とし、 直径0.075mm、孔数6000の口金を用いて、濃度66 量%、浴温38℃のジメチルアセトアミド水溶 中に吐出して凝固糸を得た。この凝固糸は 透明で、マクロボイドのないものであった
 得られた凝固糸を用いて、実施例1と同様に して1.1デニールの円形断面を有する前駆体繊 維を得た。実施例3と同様に前駆体繊維中の 重合体の(a)、(b)、(b-a)及び(a/b)を測定した。 の結果を表3に示す。
 また、この前駆体繊維を用いて実施例1と同 様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維 のストランド強度は525kg/mm 2 、ストランド弾性率は25.6ton/mm 2 であった。

[実施例5]
 共重合体Bを用いた以外は実施例4と同様に て共重合体B〃を得た。
 前記共重合体B〃の組成、(a)、(b)、(b-a)及び( a/b)を測定した。その結果を表3に示す。
 この共重合体B〃を用いて実施例3と同様に て、凝固糸を得た。この凝固糸は、透明で マクロボイドのないものであった。
 得られた凝固糸を用いて、実施例1と同様に して1.1デニールの円形断面を有する前駆体繊 維を得た。実施例3と同様に前駆体繊維中の 重合体の(a)、(b)、(b-a)及び(a/b)を測定した。 の結果を表3に示す。
 また、この前駆体繊維を用いて実施例1と同 様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維 のストランド強度は490kg/mm 2 、ストランド弾性率は24.9ton/mm 2 であった。

[比較例4]
 共重合体Cを用いた以外は実施例4と同様に て共重合体C〃を得た。
 前記共重合体C〃の組成、(a)、(b)、(b-a)及び( a/b)を測定した。その結果を表3に示す。
 この共重合体C〃を用いて実施例3と同様に て、凝固糸を得たが、凝固糸が白色になっ しまい、マクロボイドが生成していること 推定された。
 得られた凝固糸を用いて、実施例1と同様に して、1.1デニールの円形断面を有する前駆体 繊維を得た。実施例3と同様に前駆体繊維中 共重合体の(a)、(b)、(b-a)及び(a/b)を測定した その結果を表3に示す。
 また、この前駆体繊維を用いて実施例1と同 様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維 のストランド強度は360kg/mm 2 、ストランド弾性率は22.5ton/mm 2 であった。

 表3の結果に示すように、塩酸で加熱還流 処理することで共重合体中の硫酸基が加水分 解され、0となっていることがわかる。加水 解処理した重合体とそれを用いて作製した 駆体繊維では共重合体中のスルホン酸末端 に差は見られなかった。実施例4~5では、共 合体中のスルホン酸末端の量が多いため、 記溶液を用いて得られる凝固糸にマクロボ ドが見られなかった。また、前記溶液を用 て得られた前駆体繊維から得られた炭素繊 は、ストランド特性に優れたものであった

[実施例6]
 実施例1で得た共重合体Aを、21質量%の濃度 なるようにジメチルアセトアミドに溶解し 共重合体溶液を調製した。
 前記共重合体溶液(紡糸原液)を調製してす に、70℃とし、直径0.075mm、孔数6000の口金を いて、濃度66質量%、浴温38℃のジメチルア トアミド水溶液中に吐出して凝固糸を得た この凝固糸は、透明で、マクロボイドのな ものであった。前記凝固糸の繊維軸に垂直 断面の顕微鏡写真を図4に示す。前記写真か 明らかなように、凝固糸の断面にはマクロ イドは見られなかった。

 得られた凝固糸を用いて、実施例1と同様に して1.1デニールの円形断面を有する前駆体繊 維を得た。実施例3と同様に前駆体繊維中の 重合体の(a)、(b)、(b-a)及び(a/b)を測定した。 の結果を表4に示す。
 また、この前駆体繊維を用いて実施例1と同 様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維 のストランド強度は550kg/mm 2 、ストランド弾性率は26.6ton/mm 2 であった。

[実施例7]
 重合条件を表1に記載したものに変更した以 外は、実施例1の(1-1)と同様にして共重合体G 得た。この共重合体Gの組成、(a)、(b)、(b-a) び(a/b)を測定した。その結果を表4に示す。
 共重合体Gを、21質量%の濃度になるようにジ メチルアセトアミドに溶解して共重合体溶液 を調製した。
 前記共重合体溶液(紡糸原液)を調製してす に、70℃とし、直径0.075mm、孔数6000の口金を いて、濃度66質量%、浴温38℃のジメチルア トアミド水溶液中に吐出して凝固糸を得た この凝固糸は、透明で、マクロボイドのな ものであった。

 得られた凝固糸を用いて、実施例1と同様に して1.1デニールの円形断面を有する前駆体繊 維を得た。実施例3と同様に前駆体繊維中の 重合体の(a)、(b)、(b-a)及び(a/b)を測定した。 の結果を表4に示す。
 また、この前駆体繊維を用いて実施例1と同 様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維 のストランド強度は525kg/mm 2 、ストランド弾性率は25.8ton/mm 2 であった。

[比較例5]
 重合条件を表1に記載したものに変更した以 外は、実施例1の(1-1)と同様にして共重合体H 得た。この共重合体Hの組成、(a)、(b)、(b-a) び(a/b)を測定した。その結果を表4に示す。
 共重合体Hを、21質量%の濃度になるようにジ メチルアセトアミドに溶解して共重合体溶液 を調製した。
 前記共重合体溶液(紡糸原液)を調製してす に、70℃とし、直径0.075mm、孔数6000の口金を いて、濃度66質量%、浴温38℃のジメチルア トアミド水溶液中に吐出したが、凝固糸が 色になってしまい、マクロボイドが生成し いることが推定された。前記凝固糸の繊維 に垂直な断面の顕微鏡写真を図5に示す。前 写真から明らかなように、凝固糸の断面に マクロボイドが多数見られた。

 得られた凝固糸を用いて、実施例1と同様に して1.1デニールの円形断面を有する前駆体繊 維を得た。実施例3と同様に前駆体繊維中の 重合体の(a)、(b)、(b-a)及び(a/b)を測定した。 の結果を表4に示す。
 また、この前駆体繊維を用いて実施例1と同 様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維 のストランド強度は400kg/mm 2 、ストランド弾性率は23.5ton/mm 2 であった。

[比較例6]
 重合条件を表1に記載したものに変更した以 外は、実施例1の(1-1)と同様にして共重合体I 得た。この共重合体Iの組成、(a)、(b)、(b-a) び(a/b)を測定した。その結果を表4に示す。
 共重合体Iを、21質量%の濃度になるようにジ メチルアセトアミドに溶解して共重合体溶液 を調製した。
 前記共重合体溶液(紡糸原液)を調製してす に、70℃とし、直径0.075mm、孔数6000の口金を いて、濃度66質量%、浴温38℃のジメチルア トアミド水溶液中に吐出したが、凝固糸が 色になってしまい、マクロボイドが生成し いることが推定された。

 得られた凝固糸を用いて、実施例1と同様に して1.1デニールの円形断面を有する前駆体繊 維を得た。実施例3と同様に前駆体繊維中の 重合体の(a)、(b)、(b-a)及び(a/b)を測定した。 の結果を表4に示す。
 また、この前駆体繊維を用いて実施例1と同 様にして炭素繊維を得た。得られた炭素繊維 のストランド強度は390kg/mm 2 、ストランド弾性率は23.0ton/mm 2 であった。

 比較例5では、共重合体中のスルホン酸末 端の量が多すぎるため、前記溶液を用いて得 られる凝固糸にマクロボイドが多く、このた め、前記溶液を用いて得られた前駆体繊維か ら得られた炭素繊維のストランド特性が表4 示されるように低いものであった。

 本発明によれば、アミド系溶剤に溶解し 場合にも溶液(紡糸原液)の熱安定性に優れ おり、炭素繊維の製造に適した緻密なポリ クリロニトリル系繊維を得ることが可能な クリロニトリル系共重合体及びその製造方 、前記アクリロニトリル系共重合体をアミ 系溶剤に溶解したアクリロニトリル系共重 体溶液、並びに前記アクリロニトリル系共 合体溶液を用いた炭素繊維用ポリアクリロ トリル系前駆体繊維及びその製造方法を提 できるため、繊維製造の分野等で有用であ 。