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Title:
MANUFACTURING METHOD FOR MACHINE PARTS HAVING SUPERIOR ROLLING-CONTACT FATIGUE LIFE
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/145168
Kind Code:
A1
Abstract:
Provided is a manufacturing method for machine parts having a surface hardness of at least 58 HRC, in which a superior stable rolling-contact fatigue life is achieved even if there is no reduction in nonmetallic inclusions or decrease in size thereof when the steel is manufactured, compared to steel material for which there is a reduction in nonmetallic inclusions and a decrease in size thereof when the steel is manufactured. In addition to a process for imparting to steel for mechanical structures the steel shape or a process for imparting the subsequent machine part shape, the method includes a process in which the steel is worked in the previous process, the steel is heated to at least 780°C, and a hydrostatic pressure of at least 80 MPa is applied to create very close contact at the interface between the nonmetallic inclusions in the steel and the steel, which is the parent phase, after which some or all of the steel is quenched and tempered.

Inventors:
HASHIMOTO KAZUYA (JP)
FUJIMATSU TAKESHI (JP)
TSUNEKAGE NORIMASA (JP)
HIRAOKA KAZUHIKO (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/059573
Publication Date:
December 03, 2009
Filing Date:
May 26, 2009
Export Citation:
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Assignee:
SANYO SPECIAL STEEL CO LTD (JP)
HASHIMOTO KAZUYA (JP)
FUJIMATSU TAKESHI (JP)
TSUNEKAGE NORIMASA (JP)
HIRAOKA KAZUHIKO (JP)
International Classes:
C21D8/00; B21J1/02; C21C7/04; C21C7/06; C21D6/00; C21D9/00; C21D9/32; C21D9/40; C21D1/32; C22C38/00; C22C38/22; F16C33/64
Foreign References:
JP2000190064A2000-07-11
JPS55110723A1980-08-26
JP2006200027A2006-08-03
JPS4626612B1
JPH1046286A1998-02-17
JP2007130642A2007-05-31
Other References:
FUJIMATSU T. ET AL.: "Kotanso Chromium Jikuukehagane no Korogari Tsukare ni Okeru Naibu Kekkan kara no Kiretsu Hassei Kyodo", JOURNAL OF THE IRON & STEEL INSTITUTE OF JAPAN, vol. 94, no. 1, 1 January 2008 (2008-01-01), pages 13 - 20
Attorney, Agent or Firm:
YOSHITAKE Kenji et al. (JP)
Kenji Yoshitake (JP)
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Claims:
 機械構造用鋼の一部もしくは全体を焼入焼戻し処理により転動疲労寿命に優れた表面硬さ58HRC以上の機械部品を製造する方法であって、
 機械構造用鋼を、鋼材形状を付与するための工程またはその後の機械部品形状を付与するための工程に付し、該工程中で該鋼に塑性加工を施し、
 該塑性加工が施された鋼を780℃以上に加熱して80MPa以上の静水圧を付与し、それにより、該鋼中に含有する非金属介在物と母相である鋼との界面を密着させ、その後、
 該鋼の一部もしくは全体を焼入焼戻し処理に付する
工程を含んでなる方法。
 前記加熱が800℃以上で行われ、前記静水圧が100MPa以上である、請求項1に記載の方法。
 前記塑性加工を受ける機械構造用鋼が、通常のAlに加えてSiを含む脱酸剤を添加して、あるいは、Alからなる脱酸剤を添加することなく、脱酸されたものである、請求項1または2に記載の方法。
 前記塑性加工を受ける機械構造用鋼が、通常のAlに加えてCaを含む脱酸剤を添加して脱酸されたものである、請求項1または2に記載の方法。
 前記塑性加工が複数回行われ、該複数回の中の最後の塑性加工が熱間塑性加工である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
 前記塑性加工が複数回行われ、該複数回の中の最後の塑性加工が温間塑性加工である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
 前記塑性加工が複数回行われ、該複数回の中の最後の塑性加工が冷間塑性加工である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
Description:
転動疲労寿命に優れた機械部品 製造方法 関連出願の相互参照

 この出願は、2008年5月27日に出願された日 本国特許出願2008-138774号、2008年5月27日に出願 された日本国特許出願2008-138775号、および2008 年5月27日に出願された日本国特許出願2008-1387 76号の優先権を主張するものであり、これら 全体の開示内容が参照により本明細書に組 込まれる。

 本発明は、軸受、ギア、ハブユニット、 段変速機、等速ジョイント、ピストンピン どの、非金属介在物や空洞が破損起点であ 転動疲労寿命が求められ、表面硬さが58HRC 上に硬化されて使用される鋼材からなる機 部品の製造方法に関するものである。

 近年、各種の機械装置の高性能化にとも い、転動疲労寿命が求められる機械部品や 置の使用環境は非常に厳しくなり、寿命の 上ならびに信頼性の向上が強く求められて る。このような要求に対し、鋼材の面から 対策としては、鋼成分の適正化や不純物元 の低減化が行われている。

 鋼成分の不純物元素のうち、酸素、窒素、 黄はそれぞれAl 2 O 3 、MnS、TiNといった非金属介在物を形成し鋼部 品の破損の起点となるため、特に有害である ことが知られている。さらに、非金属介在物 の径が大きいほど、鋼部品の転がり疲労寿命 は短くなることが知られている。そのため非 金属介在物量を少なく、すなわち、鋼の清浄 度が高く、介在物径が20μm以上の大型の酸化 系非金属介在物の極めて少ない高清浄度鋼 種々提案されている(例えば、特開2006-63402 公報および特開平6-192790号公報参照)。

 このような高清浄度鋼からなる鋼材を用 ても、短寿命で破損することを十分には抑 することができていない。そのため、鋼材 の非金属介在物を低減し、さらに該非金属 在物を小径化しようとする開発が盛んに行 われている。

 本発明者らは、今般、鋼の製造時に非金 介在物の低減および非金属介在物の小径化 図らなくても、鋼中の非金属介在物と母相 ある鋼との隙間を無くした状態の鋼材とす ことで、該鋼材からなる表面硬さが58HRC以 で、かつ、剥離を抑制し、転動疲労寿命に れた機械用部品を得ることができるとの知 を得た。

 すなわち、軸受その他の機械部品におい 転動疲労寿命を改善するためには、これら 機械部品用鋼材から、非金属介在物を少な することが重要である。さらに軸受その他 機械部品の転走面下に大きな非金属介在物 存在すれば、該機械部品に剥離を発生させ 破損に至らせることから、軸受その他の機 部品の転走面下の危険部位に出現する非金 介在物を小さくすることが軸受その他の機 部品の寿命向上に対して特に重要であるこ が知られている。そこで、量産の製造工程 おいて、非金属介在物を小径化する方策が く発明されているが、安定して非金属介在 を小径化することは難しかった。

 本発明者らは、転動疲労における破損す わち剥離に至る過程について、人工欠陥材 用いて亀裂観察を行なうことで鋭意詳細に 討した。非金属介在物から亀裂発生および 展して剥離に至る過程において、非金属介 物の周囲への応力集中効果により、亀裂が 位する初期亀裂(以下「開口型の初期亀裂」 という)過程を経ることを見出した。その後 せん断応力による亀裂の伝播を経て破損に ることは従来の知見通りである。このこと 、本発明者らが見出した開口型の初期亀裂 起こらなければ、その後の亀裂伝播や破損 起こらないことを意味する。また開口型の 期亀裂は非金属介在物と母相との界面に物 的な隙間すなわち空洞が生じていることを 提として起こるのであり、物理的な隙間が じていなければ、開口型の亀裂は生じない とも応力計算により検証している(参照によ 本明細書に組み込まれる、鉄と鋼、94(2008) p.13および平成20年度兵庫県立大学学位論文 平岡和彦(2008年1月)を参照)。

 さらに物理的な隙間は、鋼材の製造過程、 材に成形していく過程において必ず行なわ る何らかの塑性加工、すなわち、熱間圧延 冷間圧延、熱間鍛造、温間鍛造、冷間鍛造 ローリング鍛造、冷間転造、冷間ヘッダー 工ならびに引抜き加工などによって生じる とも見出した。図1に熱間圧延鋼材から切り 出し、イオンミリングを行った後に、走査電 子顕微鏡(FE-SEM)にて非金属介在物1周囲の空洞 有無を観察した影像を概念図にて示す。図1 おいて、符号の2はAl 2 O 3 であり、符号の3は空洞である。特に機械構 用鋼では、通常Alによる脱酸が行なわれる。 その際に生成するAl 2 O 3 系非金属介在物は母材との変形能の違いや形 状から特に母相との界面に空洞が生成しやす いことを確認している。本発明は以上の新た に得た知見に基づきなされたものである。

 したがって、本発明の目的は、鋼の製造 に非金属介在物の低減およびその小径化を らなくても、鋼材中に含有する非金属介在 と母相である鋼との界面状態を改善した鋼 とすることで、鋼の製造時に非金属介在物 低減およびその小径化を図った鋼材に比べ 、優れた転動疲労寿命が安定して得られる 械用部品の製造方法を提供することにある

 本発明によれば、機械構造用鋼の一部もし は全体を焼入焼戻し処理により転動疲労寿 に優れた表面硬さ58HRC以上の機械部品を製 する方法であって、
 機械構造用鋼を、鋼材形状を付与するため 工程またはその後の機械部品形状を付与す ための工程に付し、該工程中で該鋼に塑性 工を施し、
 該塑性加工が施された鋼を780℃以上に加熱 て80MPa以上の静水圧を付与し、それにより 該鋼中に含有する非金属介在物と母相であ 鋼との界面を密着させ、その後、
 該鋼の一部もしくは全体を焼入焼戻し処理 付する
工程を含んでなる方法が提供される。

 本発明の第一の好ましい態様によれば、 記加熱が800℃以上で行われ、前記静水圧が1 00MPa以上である、上記製造方法が提供される

 本発明の第二の好ましい態様によれば、 記塑性加工を受ける機械構造用鋼が、通常 Alに加えてSiを含む脱酸剤を添加して、ある いは、Alからなる脱酸剤を添加することなく 脱酸されたものである、上記製造方法が提 される。

 本発明の第三の好ましい態様によれば、 記塑性加工を受ける機械構造用鋼が、通常 Alに加えてCaを含む脱酸剤を添加して脱酸さ れたものである、上記製造方法が提供される 。

 本発明の機械用部品の製造方法によれば 鋼材の製造時に非金属介在物の低減および 径化を図らなくても、何らかの塑性加工に り鋼中に含有する非金属介在物と母相であ 鋼との界面に生じた物理的な隙間すなわち 洞を消滅させ、これらからなる界面を密着 せうるならば、非金属介在物を破壊起点と る転動疲労による剥離が回避され、その結 、大幅に寿命が向上すると見込まれる。

熱間圧延した鋼材から試料を切り出し イオンミリングを行なった後に、走査電子 微鏡(FE-SEM)にて非金属介在物周囲の空洞有 を観察した影像を示す概念図である。

 本発明における機械構造用鋼は、軸受、 ア、ハブユニット、無段変速機、等速ジョ ント、ピストンピンなどの機械部品に求め れる鋼を広く包含する。具体的には、この うな機械構造用鋼としては、一般的にJIS G 4805に規定されている高炭素クロム軸受鋼鋼 、JIS G 4051に規定されている機械構造用炭 鋼鋼材、JIS G 4052に規定されている焼入れ を保証した構造用鋼鋼材(H鋼)、JIS G 4053に 定されている機械構造用合金鋼鋼材、JIS G 3441に規定されている機械構造用合金鋼鋼管 JIS G 3445に規定されている機械構造用炭素 鋼管、JIS G 3507-1に規定されている冷間圧 用炭素鋼-第1部:線材、JIS G 3507-2に規定され ている冷間圧造用炭素鋼-第2部:線、JIS G 3509 -1に規定されている冷間圧造用合金鋼-第1部: 材、JIS G 3509-2に規定されている冷間圧造 合金鋼-第2部:線、およびそれぞれの関連外 規格鋼、さらにそれぞれの成分類似鋼と成 改良鋼が使用されており、これらのJIS規格 記載は参照により本明細書に組み込まれる 本発明における機械構造用鋼とは上記JIS規 に記載の化学成分を満足する鋼材を包含す 。

 本発明における機械構造用鋼の好ましい組 の数値範囲(質量%)は、以下の通りである。
     好ましい範囲    より好 ましい範囲   更に好ましい範囲 
C   0.10~1.10  0.95~1.10  0.95~1.10
Si  2.0以下      0.15~0.70  0.15~0.35
Mn  3.0以下      1.15以下     0.50以下
P   0.025以下    0.025以下    0.025以下
S   0.100以下    0.025以下    0.025以下
Cr  15.0以下     0.90~1.60  1.30~1.60
Mo  2.0以下      0.25以下     0.08以下
Ni  5.0以下      0.25以下     0.25以下
Cu  0.25以下     0.25以下     0.25以下
残部  Fe及び不可避不純物  Fe及 び不可避不純物  Fe及び不可避不純物
備考            JIS G 4805  JIS G 4805
              SUJ1~5     S UJ2     
 なお、不可避不純物には脱酸剤としてのAl Caも含まれてよい。

 このような機械構造用鋼は、一般的に、1 )アーク溶解炉または転炉による溶鋼の酸化 錬、2)取鍋精錬炉(LF)による還元精錬、3)還流 式真空脱ガス装置(RH)による還流真空脱ガス 理(RH処理)、4)連続鋳造または一般造塊によ 鋼塊の鋳造および5)鋼塊の熱間圧延あるいは 熱間での圧鍛および冷間圧延あるいは冷間で の圧鍛による塑性加工工程を経て、鋼材が製 造される。本発明における鋼材形状を得るた めの工程とは上記の工程を指し、鋼材形状と は形鋼、棒鋼、管材、線材、鋼板、鋼帯を指 す。

 次いで、鋼材は、熱間鍛造、亜熱間鍛造 温間鍛造、冷間鍛造、ローリング鍛造、冷 転造、冷間ヘッダー加工ならびに引抜き加 、場合によっては引抜きと冷間ヘッダー加 、上記の組合せの塑性加工と、必要に応じ 軟化や組織調整を目的とした熱処理あるい 旋削を行なって所望の部材に成形される。 発明における機械部品形状を得るための工 とは上記の工程を指す。

 なお、本発明における熱間塑性加工の熱 とは該鋼の再結晶温度以上を指し、温間塑 加工の温間とは室温以上、再結晶温度以下 指し、冷間塑性加工の冷間とは室温および の近辺を指す。

 一般的には、塑性加工が施された鋼は、 いで、表面硬さ58HRC以上を得るために全体 入れ(ズブ焼入れ)、浸炭焼入れ、浸炭窒化焼 入れ、窒化焼入れ、浸炭浸窒焼入れ、高周波 焼入れなどの焼入焼戻し処理が鋼材や用途に 応じて施されて、研磨や研削などの仕上げ処 理を経て、本発明が対象とする機械部品が製 造される。本発明における焼入焼戻し処理と は上記の処理を指す。

 しかしながら、本発明の効果を得るため は、機械部品に焼入焼戻しを行って表面硬 58HRC以上を得る前の段階で、強制的に酸化 系非金属介在物と母相との界面に存在する 洞を消滅させるための工程を経る必要があ 。その手段としては、780℃以上に加熱した に80MPa以上の静水圧付与が可能な工法が良い 。例えば、その工法として熱間等方圧プレス (HIP)法、ホットプレス法、完全閉塞あるいは 全密閉による熱間鍛造法が良い。

 なお、金型に完全密閉されていない熱間 造、亜熱間鍛造、温間鍛造、冷間鍛造、ロ リング鍛造、冷間転造、冷間ヘッダー加工 らびに引抜き加工では、全鋼材部分に静水 が付与できないか、もしくはある方向に材 が連続的に延伸されるために、本発明の効 が得られない。

 780℃以上に加熱した後に80MPa以上の静水 付与を行う理由は次の通りである。すなわ 、鋼材の加熱温度が高いほど、鋼材は変形 易くなる。従って、鋼材の加熱温度が高い ど、酸化物系非金属介在物と母相との界面 存在する隙間すなわち空洞を消滅させるた に必要な静水圧は低くすることができる。 発明者らが鋭意検討した結果、780℃以上に 熱して、かつ80MPa以上の静水圧が付与できれ ば、本発明の効果が得られる。なお、本発明 の第一の好ましい態様によれば、上記加熱が 800℃以上で行われ、上記静水圧が100MPa以上で あるのが好ましい。

 本発明の第二の好ましい態様によれば、塑 加工を受ける機械構造用鋼が、通常のAlに えてSiを含む脱酸剤を添加して、あるいは、 Alからなる脱酸剤を添加することなく、脱酸 れたものである。一般的に、機械構造用鋼 Alによる脱酸が行なわれている。そのため 生成する酸化物系非金属介在物は、Al 2 O 3 系が主体となる。Al 2 O 3 系は、硬質の介在物であり、かつ精錬以降に 凝集し、ASTM E 45に規定されているタイプBの 形状をとり易いという問題から、静水圧を付 与した際に、酸化物系非金属介在物と母相と の界面に存在する空洞を完全に消滅させるに は、最適な静水圧付与時の条件範囲が限られ る。そこで、酸化物系非金属介在物の形態を 制御すれば、静水圧を付与した際に、酸化物 系非金属介在物と母相との界面に存在する空 洞を完全に消滅させるための効果は増す。そ の手段として、通常のAlに加えてSiを含む脱 剤を添加して、あるいは、Alからなる脱酸材 を添加することなく、脱酸することにより、 生成する酸化物系非金属介在物を軟質化させ て、母相との変形能の差を小さくするのが好 ましい。

 本発明の第三の好ましい態様によれば、塑 加工を受ける機械構造用鋼が、通常のAlに えてCaを含む脱酸剤を添加して脱酸されたも のである。一般的に、機械構造用鋼はAlによ 脱酸が行なわれている。そのために生成す 酸化物系非金属介在物は、Al 2 O 3 系が主体となる。Al 2 O 3 系は、硬質の介在物であり、かつ精錬以降に 凝集し、ASTM E 45に規定されているタイプBの 形状をとり易いという問題から、静水圧を付 与した際に、酸化物系非金属介在物と母相と の界面に存在する空洞を完全に消滅させるに は、最適な静水圧付与時の条件範囲が限られ る。そこで、酸化物系非金属介在物の形態を 制御すれば、静水圧を付与した際に、酸化物 系非金属介在物と母相との界面に存在する空 洞を完全に消滅させるための効果は増す。そ の手段として、通常のAlに加えてCaを含む脱 剤を添加して脱酸することにより、生成す 酸化物系非金属介在物をASTM E 45に規定され ているタイプDの形状(粒状)に制御することに より、非金属介在物の周囲に均一な静水圧が 付与できるようにするのが好ましい。

 なお、上述した第一、第二ないし第三の ましい態様を任意に組み合わせて本発明を 施してもよいことは言うまでもない。

 本発明の第一の態様の実施条件と得られ 効果について具体的に説明する。先ず、表1 に供試材の成分組成を示す。本供試材はJIS G  4805の組成を満足する鋼であるSUJ2鋼に基づ ものである。アーク溶解炉にて溶鋼を酸化 錬し、取鍋精錬炉(LF)にて還元精錬し、還流 真空脱ガス装置(RH)にて還流真空脱ガス処理 (RH処理)し、連続鋳造にて鋼塊を鋳造し、鋼 を熱間圧延して鋼材を作製した。次に800℃ て球状化焼なましを施した。

 さらに、上記の球状化焼なましした鋼材を 下に示す工程条件1~3のいずれかに従って加 した。
 工程条件1:鋼材をスラスト型の転がり軸受 部材である軌道盤形状に切削加工した。
 工程条件2:鋼材を、室温以上で再結晶温度 下である温間、600℃に加熱して据え込みを なった後に、スラスト型の転がり軸受の部 である軌道盤形状に切削加工した。
 工程条件3:鋼材を、冷間据え込みを行なっ 後に、スラスト型の転がり軸受の部材であ 軌道盤形状に切削加工した。

 得られた軌道盤形状品にそれぞれ熱間等 圧プレス(HIP)処理を施した。この処理条件 表2に示す。プレス条件Aとプレス条件Bは本 明の加熱温度条件および静水圧条件を満足 る。プレス条件Cとプレス条件Dはプレス条件 で、プレス条件EはHIP処理を行なわないもの 、これらは本発明の加熱温度条件および静 圧条件を満足しないものである。これらプ ス条件Aとプレス条件Bの軌道盤形状品を835℃ で20分保持した後、油冷により焼入れし、次 で170℃で90分の焼戻し処理を行い、所望の58 HRC以上の硬さを得た。さらに研磨を施して、 スラスト型の転がり軸受に仕上げて、転動疲 労寿命評価を行なった。なお、転動体は市販 のスラスト型の転がり軸受用ボールを使用し た。

 スラスト型転がり疲労試験は5292MPaの最大ヘ ルツ応力Pmaxで行い、上記の各プレス条件に きそれぞれ10回ずつ行なった。その結果から 、ワイブル分布関数に基づき、短寿命側から 10%の試験片に剥離が生じるまでの総回転数を 求め、これをL 10 寿命とした。これらの焼入・焼戻し後の表面 硬さとスラスト型転がり疲労試験を行った各 条件の10枚の試験片の寿命から評価したL 10 寿命を表3に示す。なお、各条件の試験片は 験の都合で1×10 8 cycleに到達した時点で、剥離に至らなくても 止した。

 なお、表3のL 10 寿命における→は1×10 8 cycleで、剥離しなかったことを意味する。表3 において、本発明の加熱温度条件および静水 圧条件を満足するプレス条件Aとプレス条件B 表面硬さが58HRC以上である。また、本発明 加熱温度条件および静水圧条件を満足しな プレス条件C~Eは表面硬さが58HRC以上である。 しかし、本発明のプレス条件Aおよびプレス 件Bの発明例は、最終が熱間塑性加工、温間 性加工、冷間塑性加工に関わらずプレス条 C~Eの比較例に比べて、転がり疲れ寿命が格 に優れている。

 本発明の第二の態様の実施条件と得られ 効果について具体的に説明する。先ず、表4 に供試材の成分組成を示す。この供試材であ る鋼種AおよびBは、全てJIS G 4805の組成を満 する鋼であるSUJ2鋼に基づくものである。ア ーク溶解炉にて溶鋼を酸化精錬し、取鍋精錬 炉(LF)にて還元精錬し、還流式真空脱ガス装 (RH)にて還流真空脱ガス処理(RH処理)し、連続 鋳造にて鋼塊を鋳造し、鋼塊を熱間圧延して 鋼材を作製した。なお、供試材の鋼種Aは脱 時にAlを添加することなく、SiとMnで脱酸を なったもので、表4に示すAlの0.003%は不可避 純物として含有されているものである。鋼 Bは一般的に行なわれているAlによる脱酸を なった。熱間圧延して得た鋼材に800℃にて 状化焼なましを施した。

 さらに、上記の球状化焼なましした鋼材を 下に示す工程条件1~3のいずれかに従って加 した。
 工程条件1:鋼材をスラスト型の転がり軸受 部材である軌道盤形状に切削加工した。
 工程条件2:鋼材を、室温以上で再結晶温度 下である温間、600℃に加熱して据え込みを なった後にスラスト型の転がり軸受の部材 ある軌道盤形状に切削加工した。
 工程条件3:鋼材を、冷間据え込みを行なっ 後にスラスト型の転がり軸受の部材である 道盤形状に切削加工した。

 得られた軌道盤形状品にそれぞれ熱間等 圧プレス(HIP)処理もしくはホットプレス処 を施した。この処理条件を表5に示す。プレ 条件(1)はホットプレス処理によるもので、 レス条件(2)~(4)はHIP処理によるものである。 プレス条件(1)~(3)は本発明の加熱温度条件お び静水圧条件を満足する本発明例である。 れらに対してプレス条件(4)は加熱温度が700 と本発明のHIP処理の加熱条件よりも低く本 明の条件を満足しないもので、比較例であ 。さらにプレス条件(5)はプレス無しの比較 である。この軌道盤形状品を835℃で20分保持 した後、油冷により焼入れし、次いで170℃で 90分の焼戻し処理を行い、所望の58HRC以上の さを得た。さらに研磨を施して、スラスト の転がり軸受に仕上げて、転動疲労寿命評 を行なった。なお、転動体は市販のスラス 型の転がり軸受用ボールを使用した。

 スラスト型転がり疲労試験は5292MPaの最大ヘ ルツ応力Pmaxで行い、上記の各プレス条件に き10回ずつ行なった。その結果から、ワイブ ル分布関数に基づき、短寿命側から10%の試験 片に剥離が生じるまでの総回転数を求め、こ れをL 10 寿命とした。さらに、これらの焼入焼戻し後 の表面硬さとスラスト型転がり疲労試験を行 った各条件の10枚の試験片の寿命から評価し L 10 寿命を鋼種Aは表6に、鋼種Bは表7に示す。な 、各試験片は試験の都合で1×10 8 cycleに到達した時点で、剥離に至らなくても 止した。

 表6における本発明の構成を満足する鋼で ある鋼種Aと表7における鋼種Bは、表面硬さが 58HRC以上であり、本発明の加熱温度条件およ 静水圧条件を満足するプレス条件(1)~(3)は、 本発明の条件を満足しない比較例である条件 (4)および(5)に比べて、転がり疲れ寿命に優れ ている。さらに、鋼種Aと鋼種Bは、鋼種Cに比 べて、本発明の条件を満足するプレス条件の 条件(1)~(3)において、最適な静水圧付与時の 件範囲を広げることが可能で優れている。

 本発明の第三の態様の実施条件と得られ 効果について具体的に説明する。先ず、表8 に供試材の成分組成を示す。この供試材であ る鋼種AおよびBは、全てJIS G 4805の組成を満 する鋼であるSUJ2鋼に基づくものである。ア ーク溶解炉にて溶鋼を酸化精錬し、取鍋精錬 炉(LF)にて還元精錬し、還流式真空脱ガス装 (RH)にて還流真空脱ガス処理(RH処理)し、連続 鋳造にて鋼塊を鋳造し、鋼塊を熱間圧延して 鋼材を作製した。なお、供試材の鋼種AはAl脱 酸を基本として、LF終了後にCaを添加した。 種Bは一般的に行なわれているAlによる脱酸 行なった。熱間圧延して得た鋼材に800℃に 球状化焼なましを施した。

 さらに、上記の球状化焼なましした鋼材を 下に示す工程条件1~3のいずれかに従って加 した。
 工程条件1:鋼材をスラスト型の転がり軸受 部材である軌道盤形状に切削加工した。
 工程条件2:鋼材を、室温以上で再結晶温度 下である温間、600℃に加熱して据え込みを なった後にスラスト型の転がり軸受の部材 ある軌道盤形状に切削加工した。
 工程条件3:鋼材を、冷間据え込みを行なっ 後にスラスト型の転がり軸受の部材である 道盤形状に切削加工した。

 得られた軌道盤形状品にそれぞれ熱間等 圧プレス(HIP)処理もしくはホットプレス処 を施した。この処理条件を表9に示す。プレ 条件(1)はホットプレス処理によるもので、 レス条件(2)~(4)はHIP処理によるものである。 プレス条件(1)~(3)は本発明における加熱温度 件と静水圧条件を満足する本発明例である これらに対してプレス条件(4)は加熱温度が70 0℃と本発明のHIP処理の加熱条件よりも低く 発明の条件を満足しないもので、比較例で る。さらにプレス条件(5)はプレス無しの比 例である。この軌道盤形状品を835℃で20分保 持した後、油冷により焼入れし、次いで170℃ で90分の焼戻し処理を行い、所望の58HRC以上 硬さを得た。さらに研磨を施して、スラス 型の転がり軸受に仕上げて、転動疲労寿命 価を行なった。なお、転動体は市販のスラ ト型の転がり軸受用ボールを使用した。

 スラスト型転がり疲労試験は5292MPaの最大ヘ ルツ応力Pmaxで行い、上記の各プレス条件に き10回ずつ行なった。その結果から、ワイブ ル分布関数に基づき、短寿命側から10%の試験 片に剥離が生じるまでの総回転数を求め、こ れをL 10 寿命とした。さらに、これらの焼入焼戻し後 の表面硬さとスラスト型転がり疲労試験を行 った各条件の10枚の試験片の寿命から評価し L 10 寿命を鋼種Aは表10に、鋼種Bは表11に示す。な お、各試験片は試験の都合で1×10 8 cycleに到達した時点で、剥離に至らなくても 止した。

 表10において、本発明の構成を満足する である鋼種Aは、表面硬さが58HRC以上であり 本発明の加熱温度条件および静水圧条件を 足するプレス条件(1)~(3)は、本発明の条件を 足しない比較例であるプレス条件(4)および( 5)に比べて、転がり疲れ寿命に優れている。 らに、鋼種Aは、表11における鋼種Bに比べて 、本発明の条件を満足するプレス条件のプレ ス条件(1)~(3)において、最適な静水圧付与時 条件範囲を広げることが可能で優れている