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Patent Searching and Data


Title:
HIGH-STRENGTH STEEL SHEET, AUTOMOTIVE STRENGTHENING MEMBER COMPRISING THE SAME, AND PROCESS FOR PRODUCING AUTOMOTIVE STRENGTHENING MEMBER
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/072303
Kind Code:
A1
Abstract:
A high-strength steel sheet which in a tensile test gives a stress-strain diagram which, in the range where the true strain is 3-7%, has a slope (dσ/dε) of 5,000 MPa or more.

Inventors:
OKITSU YOSHITAKA (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/003633
Publication Date:
June 11, 2009
Filing Date:
December 05, 2008
Export Citation:
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Assignee:
HONDA MOTOR CO LTD (JP)
OKITSU YOSHITAKA (JP)
International Classes:
C22C38/00; C22C38/14; C22C38/58; B23K9/00; B23K9/23; B23K11/00; B23K11/11; B23K11/16; B23K26/32; B62D21/15; C21D9/46
Foreign References:
JP2007321207A2007-12-13
JP2006161077A2006-06-22
JP2007130685A2007-05-31
JP2004277858A2004-10-07
JP2001130444A2001-05-15
JPS62182225A1987-08-10
JPH07188834A1995-07-25
Other References:
SCRIPTA MATERIALLIA, vol. 47, 2002, pages 893
TECHNICAL REPORT OF JAPAN STEEL, vol. 385, October 2006 (2006-10-01), pages 38
See also references of EP 2224029A4
Attorney, Agent or Firm:
SUENARI, Mikio (6-13 Kyobashi 1-chome, Chuo-k, Tokyo 31, JP)
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Claims:
 引張り試験で求められた真歪み3~7%の間における応力歪み線図の傾きdσ/dεが5000MPa以上であることを特徴とする高強度鋼板。
 フェライト相と分散する硬質第2相からなる金属組織を呈し、該金属組織に占める硬質第2相の面積率が30~70%であり、前記フェライト相中に占める結晶粒径が1.2μm以下のフェライトの面積率が15~90%であり、前記フェライト相中において、結晶粒径が1.2μm以下のフェライトの平均粒径dsと結晶粒径が1.2μmを超えるフェライトの平均粒径dLとが下記(1)式を満たすことを特徴とする請求項1に記載の高強度鋼板。
 dL/ds≧3…(1)
 請求項1または2のいずれかに記載の高強度鋼板が用いられていることを特徴とする車両用強度部材。
 前記高強度鋼板どうしが、電気抵抗溶接、レーザー溶接もしくはアーク溶接のいずれかの溶接手段によって接合されてなることを特徴とする請求項3に記載の車両用強度部材。
 前記高強度鋼板の合金成分が下記(2)式を満たし、
 Ceq=C+Mn/20+Si/40+4P+2S≧0.4…(2)
 前記高強度鋼板どうしが抵抗スポット溶接によって接合されてなり、該接合部における溶接で生じた溶融ナゲットの中心部の硬度がビッカース硬度:600以下であることを特徴とする請求項3に記載の車両用強度部材。
 前記高強度鋼板の合金成分が下記(2)式を満たし、
 Ceq=C+Mn/20+Si/40+4P+2S≧0.4…(2)
 前記高強度鋼板どうしが抵抗スポット溶接によって接合されてなり、該接合部周辺の溶接による熱影響部の直径が、溶接で生じた溶融ナゲットの直径の1.6倍以上であることを特徴とする請求項3に記載の車両用強度部材。
 請求項5に記載の車両用強度部材を製造する方法であって、前記抵抗スポット溶接を行うにあたり、接合通電の後に、電流:I(kA)、通電時間:t(秒)が「20≦I 2 ×t 0.5 ≦40」を満たす条件でテンパー通電を施すことを特徴とする車両用強度部材の製造方法。
Description:
高強度鋼板およびそれを用いた 両用強度部材、ならびに車両用強度部材の 造方法

 本発明は、高次元での高強度と衝撃エネ ギー吸収能を兼ね備えた高強度鋼板と、そ を用いた車両用強度部材に関する。

 近年、自動車の衝突安全性への要求が益 高まっている。例えば前面衝突に対する安 策としては、フロントフレームを変形させ エネルギーを吸収し、その代わりに乗員空 であるキャビンは変形抵抗を高めてなるべ 変形を抑えて乗員空間を確保するという手 が有効とされている。この手法におけるフ ントフレームでのエネルギー吸収量は、変 抵抗と変形ストロークの積に比例するが、 り短い変形ストロークで同等のエネルギー 吸収することができれば、フロントオーバ ハングの短縮による運動性能の向上や車体 量化など、さまざまなメリットを享受する とができる。したがって近年では、フロン フレームに使用される材料(一般的には鋼板 )の強度が、より高いものになっている。

 ここで、フロントフレーム用鋼板を高強 化するにあたっては、鋼板を高強度化する 必然的に降伏点が上昇するために、初期反 、すなわち車体が衝突する瞬間の反力も大 く上昇するという問題がある。したがって 初期反力を極力低く抑えながらも、変形時 吸収エネルギーを十分に確保することが必 である。

 また、一般に鋼板を高強度化すると、フ ントフレームのような部品が長手方向に圧 する状況にあっては、座屈形状が不安定に り、安定した蛇腹状の座屈から折れ曲がり 状態に変形様式が変化するという問題もあ 。言うまでもなく、折れ曲がりになると衝 エネルギーの吸収効率も低下するため、素 を高強度化したことによる吸収エネルギー 増加も見込めなくなる。なお、鋼板の高強 化により座屈が不安定になる理由としては 鋼板素材の高強度化による加工硬化能の低 が大きいと言われている。すなわち、部材 軸方向に1回だけ座屈した時に素材の加工硬 化の度合いが大きければ、座屈部のみならず その周囲にも変形が伝播し、別の部位が次に 座屈し、結果的に蛇腹状の座屈形態となるが 、加工硬化の度合いが小さい場合は、1回目 座屈部のみに変形が集中してしまい、その 合には折れ曲がりの形態となる。一般的に 板を高強度化すると加工硬化能は低下する め、座屈の不安定化は避けられなかった。

 このような問題を解決するためには、部 の形状を、安定座屈しやすくなるようなも とすることが効果的である。ところが、エ ジンルーム内でのレイアウトやデザインの で制約があり、部品の形状を所望通りに実 できるとは限らない。そこで、材料そのも の特性を最適化することで目的を達成する とができれば、材料を高強度化しながらも 題なくエネルギーを吸収することができる 具体的には、高強度でありながら降伏強度 低く、かつ、加工硬化能が高い鋼板を用い ば、初期反力の増加が抑制され、また、座 が安定化し、効率的に衝撃エネルギーを吸 することができる。

 さて、衝突特性に優れた車体部品用の鋼板 しては、加工誘起変態によりマルテンサイ を生成可能なオーステナイトを持つととも 、加工硬化指数が0.6以上の鋼板を用いて構 された鋼板が開示されている(特許文献1)。 た、この他には、C:0.1~0.45%を含み、Si:0.5%~を 含む鋼を所定の条件で熱延、冷延、焼鈍する ことで、引張り強度が82~113kgf/mm 2 で、引張り強度×伸びが2500kgf/mm 2 ・%以上を示す延性の良好な高強度鋼板の製 方法が開示されている(特許文献2)。さらに 、C:0.1~0.4wt%を含み、Siを制限した成分系でMn を高め、所定条件で2回焼鈍することで、引 張り強度が811~1240MPa、引張り強度×伸びが28000 MPa%以上の高延性を示す高強度鋼板が開示さ ている(特許文献3)。

特開2001-130444号公報

特開昭62-182225号公報

特開平7-188834号公報

 特許文献1には、Cr:19質量%、Ni:12.2質量%の 施例aと、Cr:18.3質量%、Ni:8.87質量%の実施例b 、いずれもオーステナイトステンレスが開 されている。本発明者がそのうちの実施例b とほぼ同じ成分を含有する市販のSUS304L(オー テナイトステンレス)を用いて、板材をハッ ト状に折り曲げ加工した部材を用いた筒型部 材(図10参照)を試験片として作製し、圧潰試 (後述の実施例参照)に供したところ、座屈は 蛇腹形状に安定して生じたものの、初期反力 と吸収エネルギーのバランスは、従来鋼に対 して優位差がないという結果を得た。

 また、特許文献1の請求項2には、使用され 鋼板の加工硬化指数が0.26以上と規定されて るが、初期反力と吸収エネルギーのバラン を決定するのは、いわゆる加工硬化指数す わち“n値”だけではないことを本発明者は 把握している。そもそもこのn値とは、応力σ と歪みεの関係を、「σ=Kε n 」で表した場合の指数nであり、本発明者は れに関して3つの問題点があると考えている

 第1に、n値自体は、応力歪み線図の形を 定しているにすぎず、材料の加工硬化量す わち変形応力の増分の絶対値を決めるもの はないということである。例えば軟鋼板はn が高いが、応力の増分の絶対値自体が大き わけではない。また、必ずしも全ての材料 応力歪み線図に対してn値が精度良く合うも のではない。後述するように本発明は、部材 の衝突特性にとって重要な因子は、n値では く、応力の増分すなわち応力歪み線図の勾 であるとの知見によっている。

 さらには、n値を測定するにあたり、測定 に用いる歪み量の範囲によって得られるn値 変わってくることも問題である。例えば、 プレス成形難易ハンドブック第3版(2007年 日 刊工業新聞社 薄鋼板成形技術研究会編)、99 ージ」には、「通常の材料では変形中にn値 が一定ではない」と記載されている。しかし ながら、n値の測定に用いる歪み量の範囲に 確な規定はない。前出の「プレス成形難易 ンドブック第3版 99ページ」には、歪み量は 、「普通鋼板では5~15%、または10~20%とするこ が多い」と記載されているのみである。ま 、「JIS Z 2253 薄板金属材料の加工硬化指 試験方法 7.n値の算出(1)」には、「計算に用 いる歪みの範囲は、それぞれの材料規格によ る。特に規定のない場合は、受渡当事者間の 協定による」と記載されているものの、「JIS  G 3141 冷間圧延鋼板及び鋼帯」には、n値の 規定はなく、「日本鉄鋼連盟規格 JFSA-2001  動車用冷間圧延鋼板及び鋼帯」にもn値の規 はない。

 以上を鑑みると、種々の方法で測定され n値をそのまま比較することは正当な評価を したことにならない。さらには、n値の測定 関しては、弾性変形域の取り扱いも慎重に されるべきである。「JIS Z 2253 薄板金属材 料の加工硬化指数試験方法」には、真歪みε 定義として伸び系の標点距離Lが用いられて おり、これに基づくならば、弾性変形域を含 んだ標点距離の変位量を用いて真歪みが計算 されるため、真歪みには弾性変形分が含まれ ることになる。しかしながら、加工硬化指数 を計算するにあたって弾性変形域を含んだ歪 みを用いることには、そもそも矛盾がある。 もっとも、軟鋼板等、降伏点が比較的低いも のの場合には、弾性変形域を含むか否かはさ ほど問題にならない。しかしながら本発明の ような衝突部品に適用される高強度鋼板では 、軟鋼板に比べて降伏点が高いため、弾性変 形域を含む場合と含まない場合のn値の差異 、無視できなくなる。

 以上のような状況に鑑み、本発明者は、 材の衝突特性に影響する材料因子として、n 値以外に、より簡便で、かつ、計算条件が明 確な指標を検討してきた。その結果、弾性変 形域を除外した塑性歪みを用いた真応力真歪 み線図において、真歪み3~7%の間の真応力の きdσ/dεが、最も有効であるとの結論に達し 。そのため本発明では、応力勾配dσ/dεを、 材料特性を規定するための指標とする。その 詳細な測定方法については後述する。

 次に、特許文献2に開示されているフェラ イトと残留オーステナイトの複合組織鋼板は 、優れた強度延性バランスを示すものの、一 定以上のSi添加が必要である。このため、表 性状が劣化することに加え、1000MPa以上の高 強度を得るためには0.36%ものC量が必要である ことから、スポット溶接強度が劣り、スポッ ト溶接で組み立てられる車両用車体には適さ ないという欠点がある。また、特許文献3に 、Siを低減しても良好な強度延性バランスを 有する高強度鋼板の製造方法が開示されてい るが、2回の焼鈍が必要なため製造コストが く、さらにC量が多いためにスポット溶接強 の問題が残る。

 また、いずれの特許文献に記載の鋼板に いても、初期反力を抑えて吸収エネルギー 確保するといった特性は有していない。以 のような状況から、衝突時の初期反力をで るだけ抑えて吸収エネルギーは確保するこ ができる高強度鋼板を、C量を低く抑えなが ら達成する技術が求められていた。

 よって本発明は、高次元での高強度と衝 エネルギー吸収能を兼ね備えるとともに、 接性も十分に確保される高強度鋼板と、そ を用いた車両用強度部材、ならびに車両用 度部材の製造方法を提供することを目的と ている。

 本発明者は、車両用強度部材のうち特に 方向に変形する部品において、初期反力を えながら吸収エネルギーを上昇させるため 必要な材料の特性について研究を重ねた結 、初期反力は素材の3%変形時の応力に比例 、圧潰後の吸収エネルギーは素材の7%変形応 力に比例しているとの知見を得た。その知見 を元に、初期反力を抑えながら吸収エネルギ ーを上昇させるためには、素材の3%変形応力 できるたけ低くし、7%変形応力をできるだ 高くすることが必要であるとの結論に達し 。すなわち、歪み3~7%の間の応力上昇つまり 力歪み線図の傾きが大きい鋼板が、従来得 れなかった低い初期反力と高い吸収エネル ーとのバランスを持つことができるとの結 に達した。

 本発明の高強度鋼板は上記知見に基づい なされたものであり、引張り試験で求めら た真歪み3~7%の間における応力歪み線図の傾 きdσ/dεが5000MPa以上であることを特徴として る。

 また、本発明の高強度鋼板においては、特 、フェライト相と分散する硬質第2相からな る金属組織を呈し、金属組織に占める硬質第 2相の面積率が30~70%であり、フェライト相中 占める結晶粒径が1.2μm以下のフェライトの 積率が15~90%であり、フェライト相中におい 、結晶粒径が1.2μm以下のフェライトの平均 径dsと結晶粒径が1.2μmを超えるフェライトの 平均粒径dLとが下記(1)式を満たすことを特徴 している。
 dL/ds≧3…(1)

 また、本発明の車両用強度部材は、上記 発明の高強度鋼板が用いられていることを 徴としている。

 さて、上記のように、本発明の高強度鋼 は、高強度で、かつ、衝撃吸収エネルギー 高次元で発揮されるために、引張り試験で められた真歪み3~7%の間における応力歪み線 図の傾きdσ/dεが5000MPa以上であることを必須 している。ここで、まず本発明の高強度鋼 の特性を示す応力歪み線図の傾きdσ/dεの測 定方法について詳述する。

 素材から引張り試験片を作製して引張り試 に供するが、その際には伸び計の使用は任 である。伸び計を使用する場合には、引張 試験時に標点伸びと荷重を測定し、公称応 歪み線図を得る。次いで、公称応力歪み線 の歪みから弾性変形分を減じて塑性歪みに 算し、さらに真歪みと真応力の関係に変換 る。そして、得られた塑性真歪み真応力の 係から、真歪み0.03での真応力:σ 3 と、真歪み0.07での真応力:σ 7 を得た後に、下記式によって応力歪み線図の 傾きdσ/dεを求める。
 dσ/dε=(σ 7 3 )/0.04
 これが、本発明で定義する応力歪み線図の きである。

 また、試験片が小さい等の理由で伸び計 使用できない場合には、クロスヘッド変位 荷重を測定し、応力変位線図を得た後に、 力変位線図の立ち上がりにおける直線部を 性変形分として、その弾性変形分を歪みか 減じれば、公称塑性歪みとなる。以下は上 と同じ要領で求められる。

 次に、本発明者は、上記の従来技術によ ずに加工硬化能が大幅に向上した高強度鋼 を得るために、結晶粒の超微細化に着目し 研究を行ってきた。その結果、超微細粒を 定の範囲の比率で含有するフェライトを母 とし、マルテンサイト、ベイナイト、残留 ーステナイトのいずれか1種、またはそれ以 上からなる第2相を一定の比率で含有する複 組織鋼板とすることで、高強度でありなが 従来にない高い加工硬化能を付与できると 結論に達した。

 このようにして製造した鋼板は、真歪み3 ~7%の間における応力歪み線図の傾きが5000MPa 上であり、従来の高強度鋼板の製造技術で 実現することができなかったものである。 1に発明鋼板と比較鋼板(後述の実施例に記載 の発明鋼板4と比較鋼板7)の公称応力公称歪み 線図、図2に発明鋼板と比較鋼板(後述の実施 に記載の発明鋼板12と比較鋼板10)の公称応 公称歪み線図を示すが、発明鋼板は、特に み10%以下の領域で大きな加工硬化能を有し いる。

 超微細粒のフェライト相と硬質第2相から なる組織が、従来にない大きな加工硬化能を 有する理由は必ずしも明確ではないが、以下 のように考えられる。図3は、発明鋼板(後述 実施例に記載の発明鋼板4)から引張り方向 圧延方向が一致するように引張り試験片を 製し、引張り変形させた後に、試験片の平 部から、観察面が引張り方向すなわち圧延 向と平行な断面となるように薄膜を採取し その薄膜を透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察し た明視野像である。図4は、その視野像の模 図である。これによると、全体的に暗い部 が硬質第2相、比較的明るい部分が母相のフ ライトであるが、母相のフェライトには非 に高い密度で転位が存在していることが判 。さらにその転位は、一般的に金属の変形 織に見られる転位セル組織を形成していな 。

 また、図5は、発明鋼板(後述の実施例に 載の発明鋼板12)から図3と同様な方法で薄膜 採取し、その薄膜を透過型電子顕微鏡(TEM) て観察した明視野像である。図6は、その視 像の模式図である。これら図によると、右 と中央下の比較的暗い色をした粒が硬質第2 相、比較的明るい部分が母相のフェライトで あるが、母相のフェライトには非常に高い密 度で転位が存在していることが判る。さらに その転位は、一般的に金属の変形組織に見ら れる転位セル組織を形成していない。

 ここで転位セルとは、変形により導入さ た転位が互いに補足し合ったりからみ合っ りして集積することで、歪みエネルギーが がるように配列したもので、セル壁と呼ば る転位密度の高い部分と、比較的転位密度 低い部分とからなる。このように転位セル 形成することで、歪みエネルギーが下がっ 内部応力が緩和されているため、セルを形 しない場合よりも、変形に必要な外部応力 小さいと考えられる。鉄の場合の転位セル 例は、「改定金属物理学序論(幸田成康著  ロナ社 1973年)265ページの図9.47」に記載さ ている。この例は、純鉄を18%引張り変形さ た場合であるが、セルが特定の方向に伸張 ており、短い方のセル壁間隔は、約1μmであ 。鋼を引張り変形した場合のセル間隔はこ 程度と考えてよい。

 さて、鋼を構成する結晶粒の大きさが、 常の転位セルの大きさと同等か、もしくは さい場合には、もはや転位セル組織を形成 ることはできない。したがって、加工によ 導入された転位は高密度で粒内に存在する とになり、転位どうしの相互作用も大きく 内部応力の増加をもたらすことになる。こ ため、それ以上に材料が変形するには、セ を形成する場合よりも大きな外部応力が必 になる。これが、大きな加工硬化をもたら 原因と考えられる。

 次に、上記の転位に基づく機構が本発明 鋼板においてどのように作用しているかに いて述べる。本発明の高強度鋼板の金属組 は、上記のように、フェライトの母相と硬 第2相からなる複合組織鋼板であり、金属組 織に占める硬質第2相の面積率が30~70%であり 母相のフェライト中に占める粒径1.2μm以下 超微細なフェライト粒の面積率が15~90%であ ことを特徴としている。

 その根拠は、まず、母相のフェライトに める粒径1.2μm以下の超微細フェライト粒の 合が15%よりも小さい場合は、材料の加工硬 はあまり向上しない。これは、金属組織の くを占める粗大粒の部分が、通常のように 位セルを形成するためである。一方、粒径1 .2μm以下の超微細フェライト粒の割合が90%を えると、フェライト相の変形能が低下して 断が容易に起こりやすくなる。粗大結晶粒 ェライトをある程度含有することで、超微 フェライト粒への応力の集中が分散され、 材の延性が向上する。これらの要因から、 微細フェライト粒の適正な面積率は15~90%で る。また、上述した効果を十分に発揮する は、超微細フェライト粒の平均粒径に対す 粒径1.2μmを超えるフェライト粒の平均粒径 3倍以上とすることが適正である。

 次に、硬質第2相の面積率の限定理由につ いて述べる。硬質第2相が30%より少ない場合 、母相の超微細粒率が所定の範囲であって 、大きな加工硬化は発現しない。そもそも 質第2相の役割は、隣接した軟質なフェライ を優先的に変形させ、歪み、すなわち転位 フェライト相中に多く導入するためである これにより母相のフェライトが加工硬化す 。しかし第2相が少ない場合はこのような効 果が不十分なため、フェライトの加工硬化が 不十分となる。

 一方、硬質第2相はまったく変形しないわ けではなく、金属組織の連続性を満たすため に、ある程度は変形するが、変形の主体はあ くまでもフェライトである。しかしながら、 硬質第2相が70%よりも多い状態では、材料を 形させた場合に、もはや母相のフェライト けでは素材の変形をまかなうことは困難で り、逆に素材の変形の多くの部分を、硬質 2相の変形によりまかなうようになる。とこ が本発明の硬質第2相は、マルテンサイト、 残留オーステナイトおよびベイナイトのうち のいずれかであり、硬質で変形能に乏しいた め、材料の強度は高くなるものの延性は望め ない。ここで、残留オーステナイトは、それ 自体変形能に乏しいということはない。しか しながら、歪み誘起によってマルテンサイト に変態した後は、硬度が高くかつ延性に乏し い。そのような相が変形の主体である場合は 、硬質第2相の内部もしくは硬質第2相とフェ イトとの界面にボイドが容易に形成され、 較的早期に破断に至る。したがって本発明 おいては、硬質第2相の面積率の上限を70%と 定めた。

 なお、一般的な複合組織鋼板においては 硬質第2相の面積率は最大30%程度のようであ って適正な第2相面積率の範囲が本発明とは なる。従来技術で硬質第2相の面積率が最大3 0%程度であることの理由は明確ではないが、 微細フェライト粒中の可動転位密度に関係 ていると想定される。第2相を含まない単相 の超微細フェライト粒からなる鋼の研究例で は、結晶粒内の転位密度が非常に小さいこと が明らかになっている(例えば、Scripta Material lia 第47巻 2002年 893ページ)。

 鉄の降伏強度は、結晶中の可動転位密度 密接に関係し、いわゆるギルマン・ジョン トンの降伏理論で説明されるように、初期 可動転位密度が低いと、材料の降伏により きな外部応力を必要とする。一旦材料が降 し転位の増殖によって可動転位密度が大幅 上昇してしまうと、それほどの外部応力は 要としないため、変形応力が低下する。し がってこの場合は、降伏点が高く加工硬化 小さいという材料特性になる。この欠点を 避して降伏点を低下させ、かつ、加工硬化 高めるためには、初期可動転位密度を高め 必要がある。そのような鋼板の典型的な例 、フェライトとマルテンサイトからなる複 組織鋼板である。複合組織鋼板においては フェライト相とマルテンサイト相の格子定 が異なるために、格子のミスフィットが生 、それを緩和するために、異相の界面付近 比較的高密度の転位が存在する。これらの 位は、材料に応力を付与した時に容易に動 ため、材料の降伏にはそれほど大きな応力 必要としない。

 本発明の鋼板は、複合組織の考え方をベ スにしているものの、母相は一定の範囲で 微細粒を含有しているもので、この点にお て本発明は従来のものとまったく異なるも である。本発明の高強度鋼板においては、 述のように母相の初期可動転位密度は通常 粗大粒の鋼板に比べて低いと想定される。 たがって、超微細粒組織を母相として複合 織とする場合には、第2相の含有率を、通常 の粗大粒の鋼板よりも高くしておかなければ 十分な初期可動転位密度を確保することがで きない。そのため、適正な第2相の含有率が 常の粗大粒を母相とした複合組織鋼よりも 高い方向へシフトしていると考えられる。

 次に、上記本発明の高強度鋼板どうしを 気抵抗溶接、レーザー溶接もしくはアーク 接のいずれかの溶接手段によって接合した のが、本発明に係る車両用強度部材である

 溶接性に影響する因子としては、前述のC 量だけでなく、他の元素の影響も加味したC 量を用いるべきである。本発明では、Si、Mn P、Sを加味したC当量Ceq(C+Mn/20+Si/40+4P+2S)を用 る。この式によるCeqは、「新日鉄技報385号( 2006年10月) 38ページ」に記載されているよう 、スポット溶接ナゲットの破断形態に影響 る因子であるとされているが、本質的には 溶融ナゲットの切欠感受性に影響して、ナ ット内の破断であるのか、母材の破断であ のかを決定する因子である。したがって、 ポット溶接以外の、例えばレーザー溶接や ーク溶接継手等の溶融接合方法の破断形態 判定にも利用できる。

 ところで、本発明の高強度鋼板は、C当量 が比較的高い場合、スポット溶接で生じた溶 融ナゲットの靭性が劣化し、溶接継手を変形 させると溶融ナゲット内での破断が起こって 溶接強度が劣化するといった問題が起こる可 能性がある。この問題を解決するために、本 発明者は、高C当量の鋼板において、ナゲッ 内破断を抑制し溶接強度に優れる抵抗スポ ト溶接継手に関する研究を行った。その結 、高C当量の鋼板においては、溶融ナゲット 心の硬度が、ビッカース硬度で600以下であ か、もしくは、熱影響部の直径が、溶融ナ ットの直径の1.6倍以上であれば良いことを 出した。

 本発明の車両用強度部材はこの知見に基づ ものであって、本発明の高強度鋼板の合金 分が下記(2)式を満たし、
 Ceq=C+Mn/20+Si/40+4P+2S≧0.4…(2)
高強度鋼板どうしが抵抗スポット溶接によっ て接合されてなり、接合部における溶接で生 じた溶融ナゲットの中心部の硬度がビッカー ス硬度:600以下であることを特徴としている

 また、もう1つの本発明の車両用強度部材は 、本発明の高強度鋼板の合金成分が下記(2)式 を満たし、
 Ceq=C+Mn/20+Si/40+4P+2S≧0.4…(2)
高強度鋼板どうしが抵抗スポット溶接によっ て接合されてなり、接合部周辺の溶接による 熱影響部の直径が、溶接で生じた溶融ナゲッ トの直径の1.6倍以上であることを特徴として いる。

 以下に、溶融ナゲットの硬度、および熱 響部の直径に関する規定の理由について詳 する。まず、溶融ナゲットの硬度であるが 本発明のようなC当量の高い鋼板では、溶融 ナゲットが溶接後の冷却時にマルテンサイト 変態することは避けがたい。マルテンサイト は周知のように延性に乏しく、また、靭性も 乏しい傾向にあるため、溶接継手の強度を劣 化させる可能性がある。しかしながら本発明 者は、炭素鋼の溶融ナゲットの硬度がビッカ ース硬度で600以下であれば、ナゲットの靭性 はそれほど低下せず、衝撃変形に耐えうると の知見を得た。

 これに基づき、本発明においては接合継 の強度を劣化させないための溶融ナゲット 硬度を上記のように規定した。本発明の鋼 のC当量の範囲では、通常のスポット溶接条 件ではビッカース硬度600以下を実現するのは 困難であるが、溶融通電の後に通電条件を適 正化したテンパー通電を行うことによって、 ビッカース硬度600以下を実現することが可能 である。

 次に、溶融ナゲットの硬度をビッカース 度で600以下にするための溶接条件について べる。炭素鋼を焼き入れした時の硬度は炭 含有量にほぼ比例し、本発明に係るC:0.4wt% 鋼板はビッカース硬度が600を超えている。 たがって、所定の硬度まで低下させるため は、スポット溶接における接合通電の後に 度電流を流して、ナゲット部を焼き戻す必 がある。ただし、焼戻し条件が不適切な場 には、靭性が低下することが知られている 例えば、「社団法人金属学会編 講座・現代 の金属学材料編4 鉄鋼材料、102ページ」には 、Ni、Si、Cr、Mnなどの合金元素を含有した合 鋼を500度付近で焼き戻すと脆化すると記載 れている。本発明の鋼板はそれらの合金元 を所定の範囲で含有するため、焼戻し脆化 懸念される。

 そのため、焼戻し温度すなわちテンパー通 時のナゲット部の到達温度は、450~550℃の範 囲を避けなければならない。ここで、焼戻し 脆化温度を避けて高温にする場合は、ナゲッ ト部の温度が鋼板のA 1 変態点を超えやすいという問題がある。本発 明の鋼板は、A 1 変態点を意識的に低下させた成分系であるた め、従来の鋼板よりも、高温焼戻し時の問題 は顕著である。したがって、安定的に溶融ナ ゲットを焼き戻すためには、脆化温度より低 い温度域で行うことが求められる。ただし、 温度が低すぎても焼戻しの効果は小さいため 、適正な範囲に入熱量をコントロールする必 要がある。

 実際の接合においては、テンパー時のナ ット温度を直接測定することは困難である め、本発明では通電条件によって規定する 段を採用する。本発明者は、テンパー通電 電流値および通電時間を系統的に変化させ 実験を行った結果、ナゲット部の到達温度 通電電流の二乗と通電時間の0.5乗との積で まり、したがって、溶接強度もこのパラメ タによって決定されることを見出し、溶接 度が最大となる当該パラメータの適正範囲 明らかにした。

 具体的には、通電電流I(kA)、通電時間t(秒) 、「20≦I 2 ×
t 0.5 ≦40」を満たすような通電条件であれば良い このパラメータの値が20未満の場合は十分 焼戻し効果が得られず、また、40を超える場 合は、焼戻し脆化が生じるか、もしくはテン パー通電時にA 1 変態点を越えるため再度焼入組織となり、と もに溶接強度は向上しない。したがって本発 明の車両用強度部材を製造する方法は、抵抗 スポット溶接を行うにあたり、接合通電の後 に、電流:I(kA)、通電時間:t(秒)が「20≦I 2 ×t 0.5 ≦40」を満たす条件でテンパー通電を施すこ を特徴とする。

 次に、接合部周辺のスポット溶接による 影響部の直径が、溶接で生じた溶融ナゲッ の直径の1.6倍以上と規定する理由について 述する。本発明で言う熱影響部は、スポッ 溶接の継手部分を、ナゲットの中心を通る 面が観察できるよう切断して試料を得、こ 試料を樹脂に埋めて断面を研磨し、さらに クリン酸でのエッチングを施して、断面を 体顕微鏡もしくは光学顕微鏡で観察した際 顕微鏡による撮像から、腐食の度合いの違 により確認することができる。

 接合部周辺のスポット溶接による熱影響 (HAZ:Heat Affected Zone 以下、主にHAZと称する) の直径が溶融ナゲットの直径の1.6倍以上と比 較的大きい場合に溶接強度が向上する理由と しては、次のような原理による。図7(A)に示 ように、ナゲットの周囲のHAZの領域が比較 小さい場合には、接合された鋼板に剪断力 かかると、応力が集中する鋼板の界面から 性の低いナゲット内に亀裂が容易に進展し すい。

 一方、図7(B)に示すように、HAZが大きい場 合は、本発明の鋼板においてはHAZは母材より も硬度が高いため、応力負荷時の鋼板の変形 形態も曲率が大きな緩やかな形状になる。こ のためナゲットへの応力集中は緩和され、ナ ゲットの破断されにくく、同時にHAZの内部、 もしくはHAZと母材の界面に亀裂が進展しやす くなる。これは、靭性の良好な母材の変形を 期待できるということであり、結果として継 手が破断する時の最大荷重も向上することに なる。本発明では、後述する実施例の結果か ら、応力を受けた時にナゲット内への亀裂が 進展しにくく、応力をHAZや母材で受けること により高い溶接強度を得るためには、HAZの直 径が溶融ナゲットの直径の1.6倍以上の規模で あることと規定する。

 次に、HAZの直径が溶融ナゲットの直径の1 .6倍以上という規定を実現するための溶接条 について述べる。本発明者は、溶接条件がH AZの大きさに与える影響について研究したと ろ、通電時間を、従来ではなされなかった 度の長時間とすることで、ナゲット径はほ んど拡大させずにHAZの直径を大幅に大きく ることができることを見出した。すなわち その通電時間が0.5秒以上であれば、HAZの直 が溶融ナゲットの直径の1.6倍以上を確保す ことができた。

 通電時間の長時間化により熱影響部のみ 拡大する理由は必ずしも明瞭ではないが、 のように考えられる。すなわち、通電開始 ともに鋼板の重畳部で発熱が生じ、鋼板の 度が融点以上に達して溶融接合が起こる。 かしながら、鋼板どうしが一旦接合すると 面での電気抵抗は大きく低下し、これに対 て電流は一定であるから発熱量も低下する そのため、溶融ナゲットの大きさは一定以 には大きくならず、入熱の母材への拡散の が継続して起こり、結果としてナゲットは 長せずにHAZのみが拡大していくと考えられ 。また、場合によっては、通電中に凝固が 了している可能性もある。この場合も、凝 したナゲットの電気抵抗は初期状態よりも いため、ナゲットが溶融するほどの発熱は じず、熱影響部が拡大していくことになる なお、通電時間が長すぎると生産効率の低 を招くとともに溶接強度の向上は飽和傾向 なることから、通電時間の上限は2.5秒程度 適切である。

 本発明では、溶接強度を向上させる要件 して、抵抗スポット溶接で生じた溶融ナゲ トの中心部の硬度がビッカース硬度:600以下 であることと、もしくはスポット溶接による 接合部周辺の溶接による熱影響部の直径が溶 融ナゲットの直径の1.6倍以上であることのい ずれかを挙げているが、これら要件をともに 兼ね備えていても良い。その場合には各要件 の相乗効果が発揮されて、溶接強度のさらな る向上が図られる。

 本発明によれば、引張り試験で求められた 歪み3~7%の間における応力歪み線図の傾きdσ /dεが5000MPa以上であるという特徴により、加 硬化能の大幅な向上に伴う安定した座屈形 での圧潰が可能であり、かつ、高次元での 強度と衝撃エネルギー吸収能を兼ね備える いった、優れた耐衝撃性能を有する高強度 板の提供が可能である。そして、このよう 特性を有することから、車両用強度部材と て構成した際には、薄肉化による大幅な軽 化、ならびにそれに伴う燃費の大幅な向上 達成可能であり、ひいてはCO 2 の排出削減に大きく寄与するといった効果が 奏される。また、C当量が比較的高い本発明 高強度鋼板はスポット溶接で接合して強度 材として構成されるのに好適であり、高い 接強度が確保されることにより車両用強度 材として大いに有望である。

実施例で求められた発明鋼板と比較鋼 の公称応力公称歪み線図である。 実施例で求められた発明鋼板と比較鋼 の公称応力公称歪み線図である。 実施例の発明鋼板の引張り変形後の内 組織を示す顕微鏡写真である。 図3の模式図である。 実施例の発明鋼板の引張り変形後の内 組織を示す顕微鏡写真である。 図5の模式図である。 スポット溶接した鋼板に引張り剪断を えた際のナゲットと熱影響部(HAZ)に生じる 断状況を示す断面図であって、(A)はHAZが小 い場合、(B)は本発明のようにHAZが大きい場 を示している。 実施例でスラブに施した焼鈍パターン 種類を示す図である。 実施例の引張り試験に使用した試験片 形状を示す図である。 実施例で使用した圧潰試験用の筒型部 材(TIG溶接モデル)を示す斜視図である。 実施例で使用した圧潰試験用の筒型部 材(スポット溶接モデル)を示す斜視図である 筒型部材を圧潰試験用に仕上げた試験 体の斜視図である。 実施例において自由落下式の落錘試験 機により試験体を圧潰試験に供している状態 を示す側面図である。 実施例1での引張り試験で求められた 歪み3%変形応力と圧潰試験で測定した初期反 力との関係を示す図である。 実施例1での引張り試験で求められた 歪み7%変形応力と圧潰試験で測定した吸収エ ネルギーとの関係を示す図である。 実施例1での圧潰試験で測定した初期 力と吸収エネルギーとの関係を、TIG溶接モ ルの発明部材と比較部材について示した図 ある。 実施例1での圧潰試験で測定した初期 力と吸収エネルギーとの関係を、スポット 接モデルの発明部材と比較部材について示 た図である。 実施例1で行った圧潰試験で測定した 潰ストロークと圧潰荷重との関係を示す線 である。 実施例1で行った圧潰試験で測定した 潰ストロークと吸収エネルギーとの関係を す線図である。 実施例2で行った圧潰試験で測定した 潰ストロークと圧潰荷重との関係を示す線 である。 実施例2で行った圧潰試験で測定した 潰ストロークと吸収エネルギーとの関係を す線図である。 実施例2での引張り試験で求められた 歪み3%変形応力と圧潰試験で測定された初期 反力との関係を示す図である。 実施例2での引張り試験で求められた 歪み7%変形応力と圧潰試験で測定された吸収 エネルギーとの関係を示す図である。 実施例2での圧潰試験で測定された初 反力と吸収エネルギーとの関係を、スポッ 溶接モデルの発明部材と比較部材について した図である。 実施例2での圧潰試験で測定された初 反力と吸収エネルギーとの関係を、TIG溶接 デルの比較例について示した図である。 実施例2でのテンパー通電試験で求められたI 2 ×t 0.5 と引張り剪断強度との関係を示す図である。 実施例2でのテンパー通電試験で求められたI 2 ×t 0.5 とナゲット中心部のビッカース硬度との関係 を示す図である。 実施例2でのテンパー通電試験で求め れたナゲット中心部のビッカース硬度と引 り剪断強度との関係を示す図である。 表11の発明部材8の引張り後におけるナ ゲット部の外観写真である。 表11の比較部材27の引張り後における ゲット部の外観写真である。 実施例2での接合通電試験で求められ 接合通電時間とHAZ直径/ナゲット直径との関 を示す図である。 実施例2での接合通電試験で求められ HAZ直径/ナゲット直径と引張り剪断強度との 係を示す図である。 表12の発明部材18の引張り後における ゲット部の外観写真である。 表12の比較部材38の引張り後における ゲット部の外観写真である。

 本発明の高強度鋼板は、フェライトの母 と硬質第2相とからなる複合組織を有する鋼 板であり、一般的なフェライト系低合金鋼の 成分で実現が可能である。ただし、上記のよ うに成分の含有量に関しては規定される式に よって制約を受ける。

 所定の成分の鋼は、工業的には転炉もし は電気炉で溶製することができ、また、実 室的には、真空溶解もしくは大気溶解炉で 製することができる。鋼を鋳造する場合は バッチのインゴット鋳造も可能であるが、 り生産性の高い連続鋳造を適用することも 論可能である。作製したスラブまたはイン ットは、薄板用の連続熱間圧延ミルで圧延 れ、熱延コイルとなる。その際に、圧延後 冷却パターンや巻取り温度を合金成分に応 て適切に制御することで、フェライトと硬 第2相の複合組織とすることができる。この ようにして得られた熱延コイルは、酸洗によ って表面の酸化スケールが取り除かれた後、 冷間圧延される。この際の冷間圧延率は、熱 延板における硬質第2相の間隔に応じて適切 範囲に制御される。その後、連続焼鈍、箱 鈍等種々の方法で、焼鈍された後、必要に じて形状矯正のためのスキンパス圧延が施 れ、製品化される。

 上記のように、本発明の超微細粒複合組 を特徴とする高強度鋼板は、従来の薄鋼板 製造プロセスを変更することなく、中間素 の組織とプロセス条件の適正化のみによっ 製造可能であることが大きな特徴である。

 次に、本発明の高強度鋼板の具体的な実 例を示す。当該実施例は実験室レベルで鋼 を製造したものであり、製造にあたっての 空溶解、圧延、焼鈍等の設備は、量産設備 比べて勿論小型のものであるが、この実施 の結果は、量産設備での製造に何ら制約を えるものではない。

<実施例1>
 ここでは、C等量が0.4未満と比較的低い鋼板 の例を述べる。スラブ1~8を真空溶解して溶製 し、作製した。これらスラブ1~8の化学組成を 表1に示す。表1で表示する元素以外の残部はF eである。

 次に、スラブ1~8に対して、表2に示す諸条 件で圧延および焼鈍の処理を施し、処理条件 の違いによって本発明品である発明鋼板1~7と 、本発明から逸脱する比較鋼板1を作製した なお、焼鈍処理における加熱温度、加熱温 変更のタイミング、温度保持時間等の焼鈍 ターンは、図8に示すパターン1、2の2種類と 、これら焼鈍パターンを各スラブに適宜に り分けた。また、表1に示す化学組成を有す る市販材1~8の鋼板を、表2に示すように本発 から逸脱する比較鋼板2~9とする。これら比 鋼板2~9は市販材であるが故に製造条件に関 ては確認できず、したがって表2において比 鋼板2~9の製造条件は記載していない。また 表3に、発明鋼板1~7と比較鋼板1~9の焼鈍組織 などを示す。

 表3に示した金属組織(フェライト、残留 ーステナイト、マルテンサイト、ベイナイ 、セメンタイトおよびパーライト)は、次の うに判定した。すなわち、圧延後の鋼板か 圧延方向に平行な断面を切り出し、この断 をナイタール等でエッチングした後に、走 型電子顕微鏡で倍率5000倍で撮影した2次電 像(以下、SEM写真と称する)を観察して判定し た。

 また、このSEM写真から、硬質第2相の平均面 積率と、硬質第2相を除外したフェライト部 うちの、ナノ結晶粒(ナノフェライト)の面積 率を測定した。さらに、ナノフェライトの平 均粒径dsと、ミクロンオーダーの結晶粒であ ミクロフェライトの平均粒径dLの比率「dL/ds 」を求めた。ナノフェライトは粒径が1.2μm以 下の結晶粒であり、ミクロフェライトは粒径 が1.2μmを超える結晶粒である。なお、ここで の平均粒径とは、SEM写真において、画像解析 により全てのフェライト粒の面積を測定し、 それぞれの面積から求めた円相当径を意味す る。具体的には、画像解析により求めたフェ ライト粒の面積をSi(i=1,2,3…)とすると、円相 径Di(i=1,2,3…)は、「Di=2(Si/3.14) 1/2  」から求められる。これらの算出値を表3に す。

 次に、発明鋼板1~7および比較鋼板1~9から 圧延方向と平行な方向が引張り軸となるよ に、図9に示すダンベル形状の引張り試験片 を切り出して作製した。そして、引張り試験 片を用いて引張り試験を行い、得られた応力 歪み線図から、降伏点(YP)、引張り強度(TS)を め、さらに、真歪み3%での真応力、真歪み7% での真応力、真歪み3~7%の間における応力歪 線図の傾きdσ/dε、真歪み3~7%の間におけるn 、真歪み5~15%の間におけるn値、および全伸 (t-El)を求めた。それらの値を表4に示す。

 図1は、発明鋼板と比較鋼板の応力歪み曲 線の代表例として、発明鋼板4と比較鋼板7の 称応力公称歪み線図を示している。図1によ ると、発明鋼板においては、特に歪み10%以下 の領域で大きな加工硬化能を有していること が判る。

 図3は、前述したように、発明鋼板4を引 り変形させた後に、試験片の平行部から、 察面が引張り方向すなわち圧延方向と平行 断面となるように薄膜を採取し、その薄膜 透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察した明視野像 であり、図4は、その視野像の模式図である これら図によれば、全体的に暗い部分の硬 第2相と、比較的明るい部分である母相のフ ライトが混在している様子が判る。そして 母相のフェライトには非常に高い密度で転 が存在し、さらにその転位は、一般的に金 の変形組織に見られる転位セル組織を形成 ていない。

 次に、表2に示した発明鋼板1~7および比較 鋼板1~9の各鋼板から、図10および図11に示す 面矩形状の筒型部材1(発明部材と比較部材) 試験片としてそれぞれ作製した。筒型部材1 、断面ハット状に折り曲げ加工して幅方向 端部にフランジ2aを有するハット部2のフラ ジ2aに、平板状の背板3を溶接して筒状とし もので、自動車のフレーム(車両用強度部材 )の一部に見立てたものである。ハット部2の4 箇所の直角の屈曲部は、半径5mmのポンチを用 いて折り曲げ加工して形成した。図10に示す 型部材1はフランジ2aと背板3との溶接をTIG溶 接で行い、図11に示す筒型部材1はフランジ2a 背板3との溶接をスポット溶接(各3箇所)で行 った。なお、図10および図11には、合わせて 法も表示したが、TIG溶接モデル(形状A)とス ット溶接モデル(形状B)とでは、寸法に若干 相違がある。

 上記のように、発明鋼板1~7および比較鋼 1~9を用いてTIG溶接モデルとスポット溶接モ ルの筒型部材1をそれぞれ作製したら、次い で、これら筒型部材1の両端に、図12に示すよ うに(図12の筒型部材1はスポット溶接モデル ある)天板4と地板5とをTIG溶接によって接合 て、圧潰試験体を作製した。天板4と地板5は 正方形状の鋼板であり、地板4の方が天板3よ も面積が大きい。筒型部材1は、天板4およ 地板5の各中央部に配されている。

 作製した各圧潰試験体につき、圧潰試験 行った。圧潰試験は、図13に示すような自 落下式の落錘試験機を用い、ロードセル11で 支持されたベースプレート12に地板5の四隅を ボルト13で固定して筒型部材1を立てて支持し 、上方から落錘14を落下させて筒型部材1を上 から押し潰す方法を採用した。圧潰試験の条 件は、落錘14の重さ約100kg、落下高さ11m、衝 時の落錘速度は約50km毎時とし、筒型部材1に 生じた圧潰ストローク(筒型部材1の圧潰前の 長から圧潰後の全長を引いた値)と、圧潰時 に発生した荷重を測定した。また、各試験体 につき、吸収エネルギーと初期反力を求める とともに、筒型部材1の圧潰後の座屈変形状 を確認した。

 表5は、圧潰ストロークが60mmにおける吸 エネルギー、初期反力および座屈変形状態 結果につき、試験体のいくつか(発明部材1~3 よび比較部材1~9)を抜粋して示したものであ る。表5での部材形状とは、前述したようにA TIG溶接モデル、Bがスポット溶接モデルのこ とである。

 図14は、引張り試験で求められた真歪み3% での変形応力と圧潰試験で測定された初期反 力との関係を、発明部材3と、比較部材4~9に いて示したものである。また、図15は、引張 り試験で求められた真歪み7%での変形応力と 潰試験で測定された圧潰ストローク60mmまで の吸収エネルギーとの関係を、発明部材3と 比較部材4~9について示したものである。こ ら2つの図には相関関係が見られ、したがっ 、初期反力は3%変形応力で決まり、吸収エ ルギーは7%変形応力で決まるということが言 える。このことは、両者の差、つまり応力勾 配を大きくすれば、低い初期反力と高い吸収 エネルギーを両立できるということであり、 本発明の技術思想を実証している。

 図16は、圧潰試験で測定された初期反力 圧潰ストローク60mmまでの吸収エネルギーと 関係を、TIG溶接モデル(形状A)の発明部材1、 2と、比較部材1~3について示したものである また、図17は、圧潰試験で測定された初期反 力と圧潰ストローク60mmまでの吸収エネルギ との関係を、スポット溶接モデル(形状B)の 明部材3と、比較部材4~9について示したもの ある。これらの図から判るように、発明部 は、吸収エネルギーが比較部材よりも高い 同等であるにもかかわらず、初期反力が比 部材と同等もしくは低いものがあり、初期 力と吸収エネルギーのバランスが良好であ ことが判る。

 図18は、発明部材3と比較部材6、7につき 圧潰試験で求めた圧潰ストロークと圧潰荷 との関係を示しており、図19は、これら部材 の圧潰ストロークと吸収エネルギーとの関係 を示している。図18では、圧潰ストロークが5 mmまでの間に荷重が突出して増す初期反力が れ、その後の比較的低い荷重の増減が蛇腹 に座屈している様子が表れている。

 図18で明らかなように、初期反力に関し は比較部材6が低いものの、この比較部材6は 図19に示されるように吸収エネルギーも低い また、比較部材7は吸収エネルギーおよび初 期反力のいずれも高い。したがって比較部材 6、7は、低い初期反力と高い吸収エネルギー 良好とされる耐衝撃性能に関しては、いず か一方の特性に偏っている。

 この点、発明部材3は、初期反力が低く、 かつ、吸収エネルギーは高いといった相反す る特性を兼ね備えている。例えば、1.5kJのエ ルギーを吸収するために、比較部材6では40m mに近い圧潰ストロークが必要であるが、発 部材3では30mm強の圧潰ストロークで十分であ り、初期反力は両者同等であるため、発明部 材の方が衝撃吸収性に優れている。また、比 較部材7では30mmの圧潰ストロークで発明部材3 と同等の吸収エネルギーを得ることはできる ものの初期反力が高いため、部材としての総 合特性は発明部材よりも比較部材の方が劣る 。

 このように本発明鋼板からなる強度部材 、従来の高強度鋼板では得られなかった優 た耐衝撃性能、すなわち初期反力を抑制し がら吸収エネルギーを増加させるという相 する特性をバランスよく有している。この め、発明鋼板を車体のフロントフレーム等 車両用強度部材に適用すれば、部材長さの 縮による車体の軽量化やフロントオーバー ングの短縮による運動性能の向上など、車 構成上の長所を実現することができる。

<実施例2>
 次に、C等量が0.4以上と比較的高い鋼板の例 について述べる。スラブ9~16を真空溶解して 製し、作製した。これらスラブの化学組成 表6に示す。表6で表示する元素以外の残部は Feである。

 次に、スラブ9~16に対して、表7に示す諸 件で圧延および焼鈍の処理を施し、処理条 の違いによって本発明品である発明鋼板8~12 、比較鋼板10~12を作製した。なお、焼鈍処 における加熱温度、加熱温度変更のタイミ グ、温度保持時間等の焼鈍パターンは、図8 示すパターン1とした。また、表6に示す化 組成を有する市販材9~16の鋼板を、表7に示す ように本発明から逸脱する比較鋼板13~20とす 。これら比較鋼板13~20は市販材であるが故 製造条件に関しては確認できず、したがっ 表7において比較鋼板13~20の製造条件は記載 ていない。また、表8に、発明鋼板8~12と比較 鋼板10~20の焼鈍組織などを示す。

 表8に示した金属組織(フェライト、残留 ーステナイト、マルテンサイト、ベイナイ 、セメンタイトおよびパーライト)は、実施 1と同様な方法で判定した。

 また、実施例1と同様に、SEM写真から、硬 質第2相の平均面積率と、硬質第2相を除外し フェライト部のうちの、ナノ結晶粒(ナノフ ェライト)の面積率を測定した。さらに、ナ フェライトの平均粒径dsと、ミクロンオーダ ーの結晶粒であるミクロフェライトの平均粒 径dLの比率「dL/ds」を求めた。これらの算出 を表8に示す。

 次に、表7および表8に示す発明鋼板8~12お び比較鋼板10~20から、圧延方向と平行な方 が引張り軸となるように、図9に示すダンベ 形状の引張り試験片を切り出して作製した そして、引張り試験片を用いて引張り試験 行い、得られた応力歪み線図から、降伏点( YP)、引張り強度(TS)を求め、さらに、真歪み3% での真応力、真歪み7%での真応力、真歪み3~7% の間における応力歪み線図の傾きdσ/dε、真 み3~7%の間におけるn値、真歪み5~15%の間にお るn値、および全伸び(t-El)を求めた。それら の値を表9に示す。

 図2は、発明鋼板と比較鋼板の応力歪み曲 線の代表例として、発明鋼板12と比較鋼板10 公称応力公称歪み線図を示している。図2に ると、発明鋼板おいては、特に歪み10%以下 領域で大きな加工硬化能を有していること 判る。

 図5は、前述したように、発明鋼板12を引 り変形させた後に、試験片の平行部から、 察面が引張り方向すなわち圧延方向と平行 断面となるように薄膜を採取し、その薄膜 透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察した明視野 であり、図6は、その視野像の模式図である これら図によれば、全体的に暗い部分の硬 第2相と、比較的明るい部分である母相のフ ェライトが混在している様子が判る。そして 、母相のフェライトには非常に高い密度で転 位が存在し、さらにその転位は、一般的に金 属の変形組織に見られる転位セル組織を形成 していない。

 次に、表7および表8に示す発明鋼板8~12お び比較鋼板10~20の各鋼板から、実施例1と同 に、図10および図11に示す断面矩形状の筒型 部材1(発明部材と比較部材)を試験片としてそ れぞれ作製した。TIG溶接については、JIS Z 3 316 のTIG用溶加棒YGT-50を使用し、溶接電流約2 0Aで実施した。

 上記のように、発明鋼板8~12および比較鋼 板10~20を用いてTIG溶接モデルとスポット溶接 デルの筒型部材1をそれぞれ作製したら、次 いで、これら筒型部材1を用いて、実施例1と 様に図12に示す圧潰試験体を作製した。

 作製した各圧潰試験体につき、図13に示 ような自由落下式の落錘試験機を用いて、 施例1と同様な方法で圧潰試験を行った。圧 試験の条件は実施例1と同様とし、筒型部材 に生じた圧潰ストローク(筒型部材の圧潰前 全長から圧潰後の全長を引いた値)と、圧潰 に発生した荷重を測定した。また、各試験 につき、吸収エネルギーと初期反力を求め とともに、筒型部材の圧潰後の座屈変形状 を確認した。

 表10に、圧潰ストロークが60mmにおける吸 エネルギー、初期反力および座屈変形状態 結果を、筒型部材が発明鋼板11からなる発 部材4の試験体と、筒型部材が発明鋼板11、 較鋼板10および比較鋼板13~20からなる比較部 10~20の試験体について示す。表10での部材形 状とは、前述したようにAがTIG溶接モデル、B スポット溶接モデルのことである。なお、 10に示した発明部材4はスポット溶接であっ 、後述する溶接条件が表11の発明部材12にし たがったものである。また、スポット溶接で 作製された比較部材11(発明鋼板11からなるが スポット溶接条件が本発明以外であり、こ では比較部材としている)の溶接条件は、表 12の比較部材39にしたがったものである。ま 、比較部材15~20の溶接条件は表10に示した通 であり、テンパー通電は行っていない。

 図20は、発明部材4と比較部材18、19の試験 体につき、圧潰試験で求めた圧潰ストローク と圧潰荷重との関係を示しており、図21は、 れら試験体の圧潰ストロークと吸収エネル ーとの関係を示している。図20では、圧潰 トロークが5mmまでの間に荷重が突出して増 初期反力が現れ、その後の比較的低い荷重 増減が蛇腹状に座屈している様子が表れて る。

 図20で明らかなように、発明部材4の初期 力は比較部材18と同等であるが、圧潰スト ークが10mmを超えてからの発生荷重に関して 、発明部材4が平均して高い。これは、発明 部材4の加工硬化が非常に大きいため、圧潰 ることによって鋼板の応力が大きく上昇し いることによる。また、初期反力に関して 比較部材18が発明部材4と同等で低いものの この比較部材18は図21に示されるように吸収 ネルギーも低い。また、比較部材19は吸収 ネルギーおよび初期反力のいずれも高い。 たがって比較部材18、19は、低い初期反力と い吸収エネルギーが良好とされる耐衝撃性 に関しては、いずれか一方の特性に偏って る。

 この点、発明部材4は、初期反力が低く、 かつ、吸収エネルギーは高いといった相反す る特性を兼ね備えている。例えば、1.5kJのエ ルギーを吸収するために、比較部材18では40 mm以上の圧潰ストロークが必要であるが、発 部材4では30mm強の圧潰ストロークで十分で り、初期反力は両者同等であるため、発明 材の方が衝撃吸収性に優れている。また、 較部材19では30mmの圧潰ストロークで発明部 4と同等の吸収エネルギーを得ることはでき ものの初期反力が高いため、部材としての 合特性は発明部材よりも比較部材の方が劣 。

 表10に示したように、比較部材19では、蛇 腹状の座屈が起こらず曲がりが生じた。比較 部材19は比較鋼板19を用いているが、このよ に加工硬化が極端に小さい高強度鋼板では 座屈が不安定となる。したがって、車両用 度部材として用いた場合、衝突性能にも変 が生じやすく、またコンパクトな座屈形態 はないため、座屈させるためのスペースを 材周辺に設ける必要もあり、スペース効率 悪い。

 なお、表10の結果に関して説明を加える 、比較部材11は、発明鋼板11を用いていなが 本発明のスポット溶接の条件以外でスポッ 溶接して作製した部材である。この比較部 11は、初期反力に関しては、同一鋼板を用 て本発明のスポット溶接の条件でスポット 接された発明部材4と同等であるが、圧潰に る変形が始まると、ほぼ同時に溶接部が剥 したため、吸収エネルギーは低くなった。 果として、初期反力と吸収エネルギーのバ ンスは、従来鋼板と同等のレベルであった また、比較部材20は、素材の比較鋼板20であ る市販材16がオーステナイトステンレス(SUS304 L)である。比較鋼板20は、表9に示すように5~15 %のn値が0.338と高いが、平均応力勾配は2084MPa 低く、圧潰試験の結果からみると、初期反 と吸収エネルギーのバランスは従来鋼板と 等である。

 以上から、本発明鋼板は、従来の高強度 板では得られなかった優れた耐衝撃性能、 なわち初期反力を抑制しながら吸収エネル ーを増加させるという相反する特性をバラ スよく有している。このため、発明鋼板を 体のフロントフレーム等の車両用強度部材 適用すれば、部材長さの短縮による車体の 量化やフロントオーバーハングの短縮によ 運動性能の向上など、車両構成上の長所を 現することができる。

 図22は、引張り試験で求められた真歪み3% での変形応力と圧潰試験で測定された初期反 力との関係を、表10に示す発明部材4と、比較 部材16~20について示したものである。また、 23は、引張り試験で求められた真歪み7%での 変形応力と圧潰試験で測定された圧潰ストロ ーク60mmまでの吸収エネルギーとの関係を、 明部材4と、比較部材16~20について示したも である。これら2つの図には相関関係が見ら 、したがって、初期反力は3%変形応力で決 り、吸収エネルギーは7%変形応力で決まると いうことが言える。このことは、両者の差、 つまり応力勾配を大きくすれば、低い初期反 力と高い吸収エネルギーを両立できるという ことであり、本発明の技術思想を実証してい る。

 図24は、圧潰試験で測定された圧潰スト ーク60mmまでの初期反力と吸収エネルギーと 関係を、スポット溶接モデル(形状B)の発明 材4と比較部材11、16~20について示したもの ある。また、図25は、圧潰試験で測定された 初期反力と圧潰ストローク60mmまでの吸収エ ルギーとの関係を、TIG溶接モデル(形状A)の 較部材10、12~14について示したものである。 24によれば、発明部材は、吸収エネルギー 比較部材よりも高いか同等であるにもかか らず、初期反力が比較部材と同等もしくは く、初期反力と吸収エネルギーのバランス 良好であることが判る。また、図25によれば 、TIG溶接の4例のうち、C当量が0.4以上である 較部材10の初期反力と吸収エネルギーのバ ンスが特に悪いことが判る。その他の比較 材12、13、14は、市販材である比較鋼板14、15 17にそれぞれ対応するが、いずれもC当量が0 .4未満である。すなわち、C当量が0.4以上の鋼 板においては、通常の溶接による接合方法を 用いることが困難であることを示している。

 次に、表8に示した発明鋼板11を、表11に すスポット溶接条件によって接合し、スポ ト溶接の際の主にテンパー通電条件を変更 せたテンパー通電試験の試料として、発明 材5~13および比較部材21~36を作製した。テン ー通電とは、スポット溶接のために通電し 後に、所定の焼戻し温度で加熱され得る電 で所定時間通電することであり、接合のた の通電である接合通電とは異なっている。

 作製したテンパー通電試料の発明部材5~13お よび比較部材21~36について引張り剪断強度を 定し、また、いくつかの試料を抽出してス ット溶接で生じたナゲットの中心部分のビ カース硬度を測定した。これらの結果を表1 1に併記するとともに、図26に「(テンパー通 電流I) 2 ×(テンパー通電時間t) 0.5 」すなわちI 2 ×t 0.5 と引張り剪断強度との関係を示す。本発明は 、20≦I 2 ×t 0.5 ≦40をテンパー通電の条件としている。また 図27は、表11に掲げた結果を基にして、テン パー通電の際のI 2 ×t 0.5 とスポット溶接で生じたナゲット中心部のビ ッカース硬度との関係を示している。本発明 は、ナゲット中心部の硬度がビッカース硬度 :600以下であることを特徴としている。さら 図28は、ナゲット中心部のビッカース硬度と 引張り剪断強度との関係を示している。

 図26によれば、テンパー通電の際のI 2 ×t 0.5 が20~40の範囲にある発明部材においては引張 剪断強度が比較部材よりも高く、12kN以上の 引張り剪断強度が得られており、本発明が強 度の面で大幅に優位であることが判る。また 、図27によれば、テンパー通電の際のI 2 ×t 0.5 が20~40の範囲にある発明部材においてはビッ ース硬度が600以下であることが確保されて り、これ以外の範囲の比較部材は、全てビ カース硬度が600以上を示している。したが て、本発明のようにテンパー通電を20≦I 2 ×t 0.5 ≦40の条件で行うことにより、ビッカース硬 が600より低くなり、これに伴って12kNを超え る高い引張り剪断強度を安定して得ることが できる(図28参照)。

 図29は、表11の発明部材8の引張り後にお るナゲット部の外観写真である。これによ と、ナゲットはボタン状に破断しており、 つ、亀裂がナゲットの周囲の母材に達して ることが確認され、ナゲットの靭性が向上 て溶接強度が高いことが判る。

 一方、図30は、表11の比較部材27の引張り におけるナゲット部の外観写真である。こ 場合には、ボタン状のナゲット部が残らな シャー破断になっており、これはテンパー 電時間が長いために焼戻し脆化域に達して ゲットの靭性が低下したためと推測される

 次に、表7に示した発明鋼板11を、表12に すスポット溶接条件(接合通電電流および接 通電時間)によって接合し、接合時の通電条 件を変更させた接合通電試験の試料として、 発明部材14~20および比較部材37~43を作製した そして、作製した接合通電試料についてナ ットの直径、HAZの直径、HAZ直径/ナゲット直 および引張り剪断強度を測定した。その結 を表12に併記するとともに、図31に接合通電 時間とHAZ直径/ナゲット直径との関係、図32に HAZ直径/ナゲット直径と引張り剪断強度との 係を示す。

 図31によれば、接合通電時間が0.6秒以上 発明部材において、HAZ直径/ナゲット直径の が1.6以上、すなわちHAZ直径がナゲット直径 1.6倍以上に確保されることが判る。そして 図32によれば、HAZ直径/ナゲット直径の値が1 .6以上の発明部材が、HAZ直径/ナゲット直径の 値が1.6以下の比較部材よりも引張り剪断強度 が高いことが判る。接合通電時間が2.5秒を上 回ってもHAZ直径/ナゲット直径の値がさらに 昇することは望めず、したがって引張り剪 強度も飽和傾向になると予測され、したが て接合通電時間は0.5~2.5秒が適切であること 確認された

 図33は、表12の発明部材17の引張り後にお るナゲット部の外観写真である。これによ と、溶接時の加熱によって変色しているHAZ 広く形成されており、また、亀裂がナゲッ 部からHAZへ到達して母材へ向かう方向に伸 ており、溶接強度が高いことが判る。

 一方、図34は、表12の比較部材38の引張り におけるナゲット部の外観写真である。こ 場合には、破断がナゲット内部のみにおい 脆性的に生じていることが観察され、した って引張り剪断強度に比例する溶接強度は 図32で明らかなように発明部材よりも劣る とが判る。




 
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